朴槿恵(パク・クネ)は、大韓民国の政治家、大韓民国第18代大統領である。 保守のハンナラ党代表、セヌリ党非常対策委員会委員長を経て、2012年韓国大統領選挙で民主統合党の文在寅(ムン・ジェイン)に勝利し、2013年2月25日に韓国史上初の女性大統領に就任した。64歳。

 父・朴正煕(チョンヒ)、母・陸英修(ユク・ヨンス)。朴正煕は大韓民国の軍人で第5代~第9代までの大韓民国大統領である。

 母の陸氏は、1974年8月15日、光復節(日本統治から解放されたことを記念する日)の祝賀行儀に参加した際に在日韓国人・文世光(ムン・セグァン)に銃撃され死亡している。

 また父・朴氏も、1979年10月26日、側近の大韓民国中央情報部(KCIA)部長・金載圭(キム・ジェギュ)によって射殺された。

 朴槿恵は母の亡き後、若くしてファーストレディとして父親に付き添い、その役目を果たした。この頃朴槿恵はまだ20代である。

 父親の朴氏は韓国の高度成長の礎を築いたとして、今でも「国父」と言われ、多くの国民に慕われている。

 だが、日本ではこの政権を蛇蝎の如く嫌った。坪内祐三の『一九七二』(文春文庫)に、72年12月号の『世界』は、安江良介編集部員(後に編集長・社長)の手による「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮=筆者注)の主張」という大特集を組み、そこで金日成首相会見記を掲載しているとある。

 安江氏は、日本の植民地支配から解放された朝鮮民族は、その北半分においてようやく社会主義国家の建設に踏み出したが、朝鮮戦争によってすべてが灰燼と帰した。「その荒廃の中から『自力更生』を目標として掲げ、今日の経済発展と国民生活の安定とをみずから獲得するにいたった朝鮮民主主義人民共和国の歴史は、おのずから個性にあふれた思想と制度とを形成している」と書き、金日成の「チュチェ思想をうちたてるためには、人びとの思想を改造することがもっとも重要です」という言葉を紹介している。

 私が北朝鮮を訪れたとき、安江氏が北に行くと準国賓として遇され、金日成らに多くの贈り物をしていることを知った。

 話が横道に逸れたので元に戻そう。両親が殺されるという波乱の娘時代を送った彼女が、多くのトラウマを抱えて生きてきたことは想像に難くない。

 しかし父親の名声、七光りが、彼女を政治に向かわせ、ハンナラ党代表などを経て大統領選挙に出馬し、初の女性大統領となったのである。

 私は色眼鏡で見ていたせいか、彼女にはリーダーとしての強靱さも、一国の宰相となった輝きも、最初から感じられなかった。どことなく自信なさげで、寂しそうであった。

 推測するだけだが、彼女は両親の悲劇を見てきた。父の後を継いで大統領になるより、ささやかな幸せを手に入れたかったのではないか。それを周囲は認めなかった。

 韓国では一族で有名人が出たり金持ちが出ると、みんなが分け前にあずかろうと寄ってくる。またそれを抱え込むのが韓国流のしきたりである。

 だが朴槿恵は大統領になって、それをしなかった。青瓦台(せいがだい)に入ってから家族間の交流さえ断ち、寂しく過ごしてきたといわれる。周りに信頼でき頼れる身内がいなかったのだ。

 死者・行方不明者304人を出したセウォル号沈没事故などへの対応でも後手後手に回り、批判を浴びた。

 そしてこの秋、40年来の親友・崔順実(チェ・スンシル)(60)という民間人の女性に、衣装から演説内容、人事から外交政策までを相談し、アドバイスを受けていたという大スキャンダルが発覚した。辞任せよという世論が巻き起こり、支持率は5%まで落ちて大統領として最大の試練のときを迎えている。

 『週刊文春』(11/10号)で見てみよう。崔と朴とのつながりは、朴が母親を殺され、失意のうちにいる頃、崔の父親・崔太敏(チェ・テミン)が彼女に手紙を書き、「私の霊的能力を通じて陸女史に会うことができる」などと言いくるめて近づき、朴の「心の隙間に入り込んでいったのです」(韓国特派員)

 彼は朴を手なずけて巨万の冨を築き、韓国のラスプーチンなどといわれた。この頃、崔の娘とも知り合い、年も近いことから親交を深めていったようだ。

 その後、朴の父親が暗殺され、崔の父親も亡くなると、崔は朴を政界入りさせ、その力をバックに様々な利権を握っていったといわれる。

 親しい友人もいなかった朴大統領にとって、崔は心を許せる唯一の友だったのであろう。若い頃の2人の映像を見ると、朴が心からくつろいでいる表情が見て取れる。

 『週刊ポスト』(11/18号、以下『ポスト』)は、崔の父親の崔太敏と朴大統領の間に子どもがいるのではないかという疑惑を報じている。

 大統領選の前に、こうした噂が流れ、朴は「(崔太敏との間に)隠し子が実在するなら連れてきてはどうか。DNA検査を受けてもいい」と返答しているが、この疑惑は完全に消えたわけではないようである。

 また、崔の元夫と朴大統領との親密な関係も取り沙汰されているようだ。セウォル号沈没事件のとき、朴大統領は7時間もの間音信不通になった。その時一緒にいたのが崔の元夫の鄭允会(チョン・ユンフェ)(61)だったといわれる。

 事件後に、鄭は崔と離婚するが、『ポスト』によると、離婚に際して「夫婦時代に知り得た一切の個人情報を口外しない」という誓約を交わしたといわれる。

 「夫を友人に差し出してまで権力に執着する崔氏とはどんな女性か」(『ポスト』)

 権力者を操り巨富を築いていった崔と、彼女を取り巻く不可解な人脈の解明はこれから進むであろうが、朴大統領は4日の国民向けの謝罪談話でも、辞めるとは言わなかった。この中で、崔についてこう述べている。

 「一人で生きていて、しなければならない個人的なことを助けてくれる人もなく、長く縁のあった崔順実氏から助けてもらうようになり、行き来するようになった」「私がいちばん苦しかった頃に、横にいて守ってくれたので、私自身が警戒の壁を下げたのが事実」「振り返ると、個人的な関係を信じて、しっかりと検証できなかった」

   身内も遠ざけ、孤独に耐えることを自分に課した彼女が、崔だけは遠ざけられなかったのだ。

 大統領には不逮捕特権があるが、だが、一旦職を離れれば逮捕や投獄もあり得る。『ポスト』に載っている歴代大統領の末路を見ると悲惨である。

 全斗煥(チョン・ドンファン)には死刑判決、盧泰愚(ノ・テウ)は懲役17年の判決、盧武鉉(ノ・ムヒョン)は司直の手が伸びる前に飛び降り自殺、李明博(イ・ミョンバク)も逮捕され有罪判決が下っている。

 そのために朴大統領は辞めることさえできないのだ。

 朴槿恵、小池百合子、ヒラリー・クリントンと女性の活躍が目立ってはいるが、しょせんこの世は男社会。朴政権崩壊で女性の時代のドミノ倒しが始まるかもしれない。

 ところで、この一連のスクープを放ったのはJTBCというケーブルテレビで、そこのキャスター兼社長の孫石熙(ソン・ソクヒ)氏は「韓国の良識」と評されているそうだ。当局から「パソコンの内容を公開するなら会社に税務調査を入れる」と脅されても屈しなかったという。

 次期大統領候補とまでいわれているそうだが、それに比べて、言論の自由が保障されている日本のメディアのだらしないこと。

 呆れるというより、もはやメディアは見捨てられた存在になってしまったと言っていいだろう。

 韓国や中国の報道を云々する前に、自分たちのだらしなさをこそ恥じるべきである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 先週の三代目のレコ大受賞を1億円で買ったという『文春』の記事は大スクープである。だが、スポーツ紙やテレビはもちろんのこと、新聞でもほとんど報じられていない。これまでもレコ大にまつわるこうした噂は何度も出ていた。だが今回は、バーニングからの1億円の請求書の現物を『文春』が入手したのである。SMAPの解散騒ぎどころの話ではない。
 芸能界挙ってこの事実を解明し、真相を公表すべきなのに、とことん腐りきったこの業界は、黙したまま逃げ切ろうとしている。芸能だからやらない、政治だったら切り込むなどというメディア人のバカがいる。芸能ができないで政治などできるはずがない。メディアの真価が問われている。

第1位 「いよいよ上がり始めた『日経平均』2017年乱発する『10倍株』を掴め」(『週刊ポスト』11/18号)/「日銀の『極秘レポート』入手 株価1万3000円割れ、1ドル80円の衝撃」(『週刊現代』11/19号)
第2位 「『22時強制消灯』で働き方に大変化が! 今日の一番乗りは誰だ? 電通で急増する『始発勤務』」(『フライデー』11/18号)
第3位 「『日本一の嫌われ都市』名古屋の生きる道」(『週刊朝日』11/11号)

 第3位。嫌われる都市というのがある。井上章一氏が書いた『京都ぎらい』は大ベストセラーになったが、これは愛憎半ばするから売れたのである。
 誰かが『名古屋ぎらい』などという本を出したら見向きもされないのではないか。
 『朝日』によれば、名古屋市がインターネットで国内8主要都市の「都市ブランド・イメージ調査」を実施したら、トップの京都が37.6ポイントだったのに、名古屋はわずか1.4ポイントで、ぶっちぎりの最下位だったそうだ。

 「名古屋のネガティブイメージは、1980年代にタモリが『名古屋人はエビフライをエビフリャーと言う』などと嘲笑したネタをルーツとする。『名古屋弁はみゃーみゃー言ってうるさい』『田舎臭い』などと、さんざん揶揄(やゆ)され、土壇場で誘致に失敗した88年の『名古屋五輪』の悪夢も、外国人タレントのコンサートの“名古屋飛ばし”も、コンプレックスに苛(さいな)ませるに十分だっただろう」(『朝日』)

 豪華なモーニングセットで名高い喫茶店文化も、みそかつ、ひつまぶしも名古屋の名を高めるまでにはいっていない。
 さらに名古屋のイメージを堕としている(失礼!)河村たかし名古屋市長は、名古屋は戦時中軍需都市だったため、都心部はほとんど焦土と化した。戦後は消失した路地を以前のように復興することなく広い道路をつくることにしたため、名古屋は人工都市で風情も情緒もなくなってしまったという。
 地元で有名な学者が名古屋を「消毒都市」とネーミングしたそうだ。
 トヨタのおかげで産業都市になり金儲けでは圧倒的に日本一になったが、では名古屋の魅力とは? と考えると、たしかにあまり思い浮かばない。私は中村区にある「中村遊郭跡」が好きだが、今はソープランドばかりになってしまっているのが残念だ。

 第2位。電通で起きた過労死問題が大変なことになっている。11月8日のasahi.comはこう伝えている。

 「厚生労働省は7日、労働基準法違反の疑いで、広告大手の電通の本社と3支社に一斉に強制捜査に入った。複数の部署で、労使で決めた時間外労働の上限を超えて従業員を働かせていた疑いが強まり、先月の立ち入り調査に続いて強制捜査に着手した。法人としての電通と関係者の書類送検に向けて、複数の幹部社員の事情聴取にも乗り出す方針だ」

 全国で捜査員88人と大量動員し、異例のスピードである。
 これを見ていると、過労死問題以外にも電通に何か大きな問題があるのでは、と思わざるを得ないのだが。
 『フライデー』が、電通が発表した22時一斉消灯が守られているか、10月28日の21時半過ぎから、外で見ていたそうだ(同様のことを『報道ステーション』でもやっていた)。
 22時に何の社内放送もなく突然電気が消えた。避難訓練のように集団で一斉に外に出てくる。
 1階中央の受付テーブルの周りだけに非常灯がついているが、「この頼りない灯にすがりつくように数人が業務を遂行しようとする姿が見てとれる」(『フライデー』)。その連中も30分もしないうちに社外に消えたという。
 家に仕事を持ち帰ってやらざるを得ない者もいるが、「始発で会社にくる人が増えているんですよ」(電通クリエーター)。
 そこで『フライデー』が週明けの月曜日4時50分に電通前で待っていると、何人もの社員が『フライデー』の問いかけには応えず、無言で社内に入っていったという。
 私の知っていた電通マンには、深夜までクラブやバーで大酒を飲み、女にだらしなかったが、仕事はできるというタイプが多かったように思うが、それももはや昔語りなのであろう。

 第1位。週刊誌のおもしろさは、時として主張がまったく違う論調が同じ発売号に載ることである。
 今週は『ポスト』と『現代』が、株価の先行きで正反対の読みをしている。
 『ポスト』は、野村證券投資情報部の竜沢俊彦部長が「年末には株価1万9000円、来年は2万円超えもある」と依然として強気の姿勢を崩していないというのだ。
 彼が言うには、現在の状況は株が急騰した97年の状況に似ているそうだ。そのときはIT革命バブルで、株価が10倍になる企業株が続出したが、今回はAI革命、人工知能革命で10倍株が続出するというのである。
 何をバカなことをと、私は思う。日銀の黒田総裁でさえ、アベノミクスの失敗を公に認めたのに、失礼だが株屋の言うことなどそのまま聞いて、株価が上がると吹聴するのは悪い冗談としか思えない。
 株屋は株が上がってなんぼの世界だ。下がる、買うのはやめたほうがいいなどと、口が裂けても言わない。
 それに、発売前にはトランプリスクもあって、株価は下がり、為替は上がってしまった。
 今の日本に株が上がる材料などどこを探してもあるはずがない。私は『現代』の見方を支持する。
 『現代』によれば、日銀が出したレポートの正式名称は「金融システムレポート別冊シリーズ」、「金融システムレポートは日銀の金融機構局が年に2回作成し、日本の金融システムの健全性について日銀が分析するものである。(中略)
 レポートを作成した金融機構局は、総勢300名を超す日銀マンが働く大所帯。経済危機で資金繰りに行き詰まった金融機関への緊急融資を担うことから、金融システムの安定をつかさどる『最後の砦』とも言われる。つまりは日銀の中枢の一つであり、そこが『株式暴落レポート』を出したのだから余計に衝撃が大きくなっている」(『現代』)
 実際にレポートを引けば、米国の金利上昇が始まるとまず「米国経済が減速する。米国経済の下振れは、貿易・金融チャネルを通じて世界経済に波及する結果、わが国経済も減速する」というのである。

 「はなから『世界同時不況』のリスクを指摘している。
 さらに、こうした世界同時不況が顕在化してくると今度は、〈グローバルに企業財務を悪化させ、信用コストが増加する。この間、新興国から米国など先進国への資金流出が起こり、新興国の成長率がさらに下押しされたり、ドル建て債務を抱える新興国企業の財務悪化を招く可能性もある〉。(中略)
 もちろん、このような状況下では日本企業への影響も甚大なものとなり、まず〈ドル調達市場において資金供給が抑制され、(中略)わが国金融機関の海外ビジネスに収益や経営体力面から大きな影響が及ぶ可能性が高い〉──つまり、邦銀がドルを手に入れるのに莫大なコストがかかるようになるため、海外ビジネスが立ち行かなくなると警鐘を鳴らしている。
 続けて、〈流動性が低い海外貸出については、これをファイナンスする外貨が確保できなければ、損失覚悟での売却(投げ売り)を余儀なくされるため、金融機関への影響も相応に大きくなると考えられる〉と、金融危機リスクにまで言及しているのである」(同)

 この日銀レポートが恐ろしいのは、こうした金融パニックが起きた時、日本ではGDPや株価がどうなるのかまで具体的に試算しているところにあると『現代』は言う。

 「〈国内経済(実質GDP)の成長率も、2015年度0.8%から2017年度マイナス0.2%へと低下する。この間、わが国の株価は、ドルの長期金利上昇の影響を踏まえ、2割弱下落すると想定する〉
 日本経済はマイナス成長に転落し、1万7000円台の株価が一気に1万3000円台まで暴落するというのだから、ただ事ではない」(同)

 このほうが『ポスト』の記事より信憑性があると思うが、いかがだろうか。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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