「大人の人たちは日本が他の国々に負けぬよう尖閣諸島、竹島、北方領土を守り、日本を悪者として扱っている中国、韓国が心改め、歴史教科書で嘘を教えないようお願いいたします。安倍首相頑張れ、安保法制国会通過良かったです」

 これは幼稚園の運動会での園児の宣誓である。ここは森友学園(大阪府・籠池泰典(かごいけ・やすのり)理事長)が運営するもので「愛国幼稚園」と呼ばれている。毎朝、日の丸の前で君が代を斉唱し、教育勅語や五箇条の御誓文の朗唱、皇室が関西に来られたら、園児とともに奉迎に出向くのだと『週刊新潮』(3/9号、以下『新潮』)が報じている。

 さらに『新潮』は、この幼稚園に子どもを通わせていた保護者が、先生たちが「中国人、韓国人はうそつきだ」とことあるごとに教えているため、家族で韓国旅行へ行くことになった時、子どもが「あんな汚いところへ行くのは嫌だ、行きたくない」と言い出し、「もし韓国に行ったのかと友だちに聞かれたらどうしようと」と泣き出してしまったと話している。

 保守系雑誌の『新潮』までが「特異な愛国教育を行う学校法人」とまでいう森友学園だが、そこが小学校用地として払い下げを受けた国有地について、土地の鑑定価格が9億5600万円なのに、値引き率86%という超格安で手に入れたことが朝日新聞で報じられ、それに安倍晋三首相と妻の昭恵(あきえ)が関わっているのではないかという疑惑が浮上し、国会で連日野党が追及している。

 簡単に経緯を紹介しよう。国有地を取得したいと言ったが資金不足のため、学園側は2013年9月に10年以内の買受けを約した定期借地契約を結んだ。

 その後、廃材や汚染土を撤去し小学校の建設工事に着手したが、基礎工事中に地下から新たなゴミが見つかった。

 すると学園側は突然『この土地を買いたい』と言い出したのだ。すると、ゴミ撤去費用の見積もりは第三者の専門事業者が行なうのが通常なのに、近畿財務局の依頼でなぜかそうしたことをしたことがない国土交通省大阪航空局が行ない、ゴミ撤去・処分費用を約8億1900万円と見積もり、それを差っ引いたのだ。

 さらに、土地の代金1億3400万円の支払いを、年1100万円の分割でいいというのは、ありえない「ウルトラCの技を合法の中で組み合わせた芸術品と言えるスキームです」(この問題を調査している民進党の今井雅人調査チーム座長=『新潮』)。

 ちなみにこの小学校は「瑞穂(みずほ)の國記念小學院」だが、当初は「安倍晋三記念小学校」という名称にするはずだったという。

 この小学校の名誉校長には安倍昭恵が就いていた(問題になってから辞退)。

 この籠池なる人物、生長の家の元信者で、現在は保守系団体として、安倍支持を鮮明にしている「日本会議」の大阪代表・運営委員を務めているそうだ。

 だが『新潮』によると、運営委員は50名前後いるし、籠池はここ数年活動はしていないと、大阪の日本会議は言っている。

 国会でこの問題を追及された安倍首相は、「私や妻は一切関わっていない。関わっていたら間違いなく、首相も国会議員も辞任する」と大見得を切ったが、次々に出てくる疑惑は、堅固に見えていた政権を揺るがしかねない事態になってきているのである。

 まず、小学校設立の寄付集めの際、「安倍晋三小学校」にすると言っているのだ。昭恵は学園のホームページやパンフレットに推薦の弁を寄せている。

 また『週刊文春』(3/9号、以下『文春』)で、鳩山邦夫元代議士(故人)の「事務所参与」だったという川田裕介氏(41)が、彼の息子が学園に通っていたため、籠池理事長の意向をくんで、近畿財務局へ出向いたことを明かしている。

 応対したのは、問題の土地の担当である「管財部 統括国有財産管理官」2名

 すでに2人はこの問題を知っていて、「前向きには検討させてもらっています」と語り、「先方も“政治家とのパイプ”は認識されているようでした」(川田氏)

 さらに籠池理事長は自民党国会議員の事務所を再三訪問して、「政治力で早く結論が得られるように」「評価額を低くしてもらいたい」などと財務省近畿財務局や国土交通省大阪航空局へ働きかけを依頼していたことが、共産党の調べで明らかになっている。

 3月1日の夜、鴻池祥肇(こうのいけ・よしただ)元防災担当相が記者会見を開き、籠池理事長が再三にわたって会いたいと言ってきて、夫婦で来て札束らしきものを出されたので、怒って断ったと明かしている。

 こうしたことから浮かび上がるのは、籠池理事長が安倍首相の名前を再三使い、ほかの政治家たちにも働きかけて、国有地を信じられないほど安い価格で手に入れたのではないかということである。

 新聞社なども国有地の払い下げを受けている。だが、払い下げを受けるのでもそう簡単ではないのに、異常とも思えるダンピングまでしてもらっているのだ。大物政治家が絡んでいると思うのは、致し方ない。

 安倍首相は国会で、籠池とは個人的に会ったことは1回もない、自分の名前を使われたのは知らなかったので、使っては困るという連絡をしたと答えている。

 また、自分は公人だから仕方ないが、妻は私人だから「罪人のように」言われることは許せないと語気を強めた。

 だが昭恵は私人ではあるまい。ファーストレディなのだから、限りなく公人に近いと、私は思う。

 『文春』は、以前の取材で、昭恵が幼稚園についてこう話していたと報じている。

 「お子さんたちが礼儀正しく、きちんとごあいさつができて、すごくしっかりしておられる。それで、幼稚園だけでなく小学校も作りたいのでというお話を伺って『名誉校長に』ということだったのでお受けしたのが二年前ぐらいだったと思います」

 確信犯である。このような国粋主義的教育がこの夫婦の「理想」なのであろう。

 昨年5月に開かれた伊勢志摩サミットで、各国首脳たちを、戦前・戦中の日本を支配していた「国家神道」の象徴で、皇祖神を祀る伊勢神宮に参拝させることに、安倍は躍起になったと言われている。

 官邸から各国首脳の伊勢神宮参拝を実現させろと命令を下し、官僚たちが必死になって首脳たちを説得したというのである。

 また『文藝春秋』3月号でノンフィクション作家の石井妙子氏は、安倍が大腸炎の持病で突然辞任した2007年ごろから、昭恵は「神社めぐり」にのめりこんでいったと書いている。

 そこで「水の波動研究者」「スピリチュアルマスター」と自称していた故・江本勝から大きな影響を得たという。

 この江本との付き合いは安倍家が早く、安倍の父親である晋太郎が、江本に自分の波動を見てもらっていたそうだ。

 晋三も毎晩寝る前に祝詞のようなものを唱えて祈りをささげていると、昭恵が対談などで明かしている。

 彼女がやっている居酒屋「UZU」もアメノウズメノミコトからとったそうだ。

 そこから石井氏は、昭恵が「大麻を擁護する」姿勢も出てきているとしている。神道関係者やスピリチュアル系の人々の間では、大麻は日本の神事に欠かせないのに、それを禁止したのはアメリカ占領軍だという考えがあるというのである。

 石井氏はそうした「昭恵の主張はともすると日本賛美に傾き、国粋主義的な面を見せる。日本は世界で称賛されている、日本人の精神性の高さが今後、世界をリードする、といった発言の数々」に、彼女の姿勢の危うさがにじむと書いている。

 昭恵のベースにあるものは、「日本を神聖視する、危うさを含んだ、少し幼い思考ではないだろうか」と危惧する。

 昭恵につく秘書は現在5人もいる。公費でこれだけの秘書がつくようになったのは第二次安倍政権からだというが「やはり夫人といえども、公人なのだと改めて思う」(石井氏)

 幼い思考はこの夫婦に共通するものであろう。

 安倍は常々、学校における「道徳教育」「愛国教育」を強制しようとしてきた。天皇を中心とした神の国を取り戻す、子どもたちはオレが考えているように教えるべきだというやり方が、最近とみに露骨である。

 だから籠池のような人間を近づけ、自らの名前を付けた学校を作ると言われれば脂下(やにさ)がってしまったのだろう。

 『週刊現代』(3/11号、以下『現代』)で官邸スタッフはこう語っている。

 「近いうちに、あの小学校にどんな人物がいくら寄付をしていたか、リストが出てくるでしょう。ここに名前が挙がる人脈を精査されれば、安倍総理は大ダメージを受ける。トランプ政権ともまずまずうまくやれているし、当分政権は安泰だと思っていたけど、これは本当にまずいかもしれない」

 千丈の堤も蟻の一穴から崩れる。安倍退場が現実になるかもしれない。

元木昌彦が選ぶ気になる記事ベスト3
 マレーシアで殺された金正男暗殺事件が、北朝鮮とマレーシアの国同士の確執に発展し、いまだに真相が解明されない
 殺されたのは影武者ではないのかという「説」まで出てきている。たしかに北朝鮮は何でもありの国だ。金正恩(キム・ジョンウン)まで影武者説が出てきた。
 これからも何が飛び出してくるのか、マレーシアと北朝鮮から目が離せない。

第1位 「嵐・櫻井翔と『恋人』テレ朝女子アナ 熱愛追跡11日間の全写真」(『週刊ポスト』3/10号)
第2位 「安倍官邸が掴んだ『金正恩はもう死んでいる』」(『週刊現代』3/11号)/「金正男の遺体から消えた『虎と竜の入れ墨』のナゾ」(『フライデー』3/10・17号)
第3位 「『稲田朋美防衛相』が気持ち悪い」(『週刊新潮』3/2号)

 第3位。トランプ大統領がまた問題発言をした。ロイターの取材(2月23日)に対して、核兵器増強を明言したというのである。
 オバマはロシアと新戦略兵器削減条約(新START)を締結し、両国が2018年2月までに配備済みの戦略核弾頭を1550発に削減することを定めたが、これをちゃぶ台返しするというのである。
 オバマのやったことはほとんど気に入らないようだが、平気でウソをつくトランプのことだから、明日になれば考えが変わるかもしれない。
 アメリカのメディアにならって朝日新聞も、政治家たちのその場限りの放言を「ファクトチェック(事実確認)」することを始めた。
 安倍首相や麻生副総理の発言の間違いをチェックしているが、一番チェックしなければいけないのは稲田防衛相の次の発言ではないか。
自衛隊が派遣されている南スーダンで去年起きた銃撃戦を「戦闘」ではないかと問われ、「法的意味の戦闘行為は発生していない」と答えたのだ。
池上彰は朝日新聞の連載で、これは「オルタナティブ・ファクト(もうひとつの事実)」だとしているが、私は「フェイク(嘘)」だと思う。
 『新潮』は2月9日号で、彼女のファッションセンスなどを取り上げ批判したが、今週も稲田防衛相を「ここ10年で一番ダメな防衛大臣だと思います」(軍事ジャーナリストの世良光弘氏)と難じている。
 さらに、護衛艦の中をハイヒールで歩き、網タイツを愛用することに対して、自衛隊関係者に「とても職責に相応(ふさわ)しい格好とは……率直に言って気持ち悪い」とまで言わせている。
 この程度の議員がポスト安倍だと言われるのだから、いかに自民党に人材がいないかわかろうというものである。

 第2位。金正男(キム・ジョンナム)がマレーシアの空港で暗殺されて20日近くが経つが、「マレーシア当局は身元確認を終えられていない」(2月24日のasahi.com)。
 同紙によれば、「殺害されたとされる正男氏の所持品から見つかった外交官用旅券の名前は、北朝鮮国籍の『キム・チョル』。記述通りなら、遺体は1970年6月10日に平壌で生まれた46歳の男性。実際の正男氏の年と言われる年齢より、1歳年上だ」
北朝鮮側が身元確認に必要な資料を出さないこともあるが、正男の家族からDNAサンプルが採取できていないようだ。
 マレーシア政府は金正男と発表しているが、捜査当局や医療当局は慎重で、認定を保留し、警察長官は「私は金正男という名前を一度も使っていない」と断定を避けている。
 この原稿がアップされるときには身元が確認されているかもしれないから、そうなったらお許しいただきたいが、生前の正男には胸から腹にかけて虎と竜の入れ墨が黒々と彫られていた。それなのに、今回の亡くなる直前の彼のはみ出した腹に入れ墨らしきものがないと、『フライデー』が報じている。
 半裸で入れ墨を見せているのは4年前の金正男だという。先のasahi.comにも本人確認のために「窮余の策として遺体にあった『入れ墨』の照合写真がないかも探し始めた」とあるから、たまたま地元の新聞社が写したときに消えた(?)のかもしれないが、不可解である。
 『フライデー』で、北朝鮮情勢に詳しい朴一(パク・イル)大阪市立大学大学院教授は、仮説としてだが、「殺されたのは正男氏の影武者の可能性があります」と推測している。
 いつもは必ず付けているというボディガードの姿もなく、空港の中を歩き回る正男はまったく無防備に見える。
 テレビ報道によると、行きつけの北朝鮮料理屋でも、壁を背にした席にしか座らなかったぐらい用心深かった正男にしては解せない行動である。
 もしかするとこの暗殺事件の闇は、われわれが考えているより深いのかもしれない。
 『ポスト』は、もし金正男が死んでいれば、彼の長男であるハンソルが、父の無念を晴らすためと、生き残るために「米韓中」のどこかに亡命して、金正恩を倒すこともあり得ると報じている。
 『現代』は驚いた見方をしている。すでに金正恩は死亡していて、いまのは影武者だというのだ。
 それも、この情報を安倍にもたらしたのは、首脳会談の時で、トランプだというのである。
 金正恩も金正男も影武者? ありえない話ではないが、今のところは? である。

 第1位。さて今週の第1位は久々の『ポスト』のスクープである。
 嵐の櫻井翔(35)とテレビ朝日『報道ステーション』の人気アナ・小川彩佳(32)だから、なかなかのものである。
 『ポスト』によれば、こうである。

 「2月14日のバレンタインデー。
 報ステの放送終了から約1時間後の深夜0時過ぎ、会社から出てきた小川アナは周囲を窺いながらテレ朝近くの路地裏に小走りで駆け、暗がりに停車していた高級車の助手席に飛び乗った。
 運転席にいたのは櫻井だった。櫻井はマスクを外すと一瞬顔を寄せ合った。そのまま車は急発進し、櫻井の自宅方面へと消えた。
 それから10数時間後の15日午後4時。前夜と同じテレ朝近くの路地裏に櫻井の車が停車。助手席から降りた小川アナは名残り惜しそうに何度か振り返りながら、テレ朝社屋へ入っていく。櫻井はルームミラーでしばらく小川アナを見つめると、マスクを付けて車を走らせた。
 さらにその翌日(16日)。報ステ終了後の午後11時半、小川アナは番組スタッフと思しき男性ら数人と、深夜営業の焼肉店へと向かった。
 報ステ関係者が言う。
 『この日は、1月にトランプ大統領の就任式を現地取材した小川をねぎらう会だったようです。約1週間の滞在で、彼女はかなり成長しました。上司らに“小川は報ステに欠かせない存在になった”などと言われて、ジョッキに入ったハイボールを何杯もおかわりしていたようです』
 お開きになったのは17日の午前4時半。小川アナは上司のタクシーに同乗し、自宅へと帰った」

 しかしその夜も、櫻井がお祝いを持って訪ねてきたそうだ。
 ジャニーズ事務所、テレビ朝日も、親しく付き合っていることを匂わせている
 いいカップルだと思う。『ポスト』が発売された夜の『報道ステーション』を興味津々で見た。
 心なし、小川アナはやつれたかな? いつもより緊張気味だった。両親公認だそうだから、ゴールインは近いのかもしれない。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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