少子化が止まらない。総務省が先日(7月5日)発表した人口調査で、生まれた子どもの数は100万人を切り、昨年1年で約30万人、人口が減った。

 『週刊現代』(7/22・29号、以下『現代』)が縮小を続ける日本の「未来の年表」という特集を組んでいる。これまでも言われ続けていることだが、一つひとつ見てみよう。

 「92年に205万人だった18歳人口は、09年から数年は120万人前後が続く『踊り場』の状態にありましたが、2018年頃(121万人)から大きく減り始める見込みです。(中略)こうなると、私立大学は当然のこととして、国立大学にも潰れるところが出てくる」

 こう語るのは『未来の年表』 (講談社現代新書)を書いた河合雅司・産経新聞論説委員。2020年には女性の過半数が50歳以上になるのだから、子どもを産める女性が少なくなっていくので、少子高齢化・人口減少に歯止めはかからない。

 2021年には「団塊ジュニア世代」が50歳に差し掛かるが、この頃から介護離職が増え始めるという。

 さらに今後は、介護スタッフがさらに厳しい人手不足に陥ることが見込まれる。25年には約253万人の需要が見込まれるのに対して、215万人程度しか確保できないから、約38万人もの介護スタッフが不足する。

 2025年には、ついに団塊の世代全員が75歳以上となり、後期高齢者の人口全体に占める割合は18%にも達する。

 25年の東京圏(東京、千葉、神奈川、埼玉)の後期高齢者は572万人になり、今と同じ割合で通院すれば、約420万人にもなる。現在の病院にこれだけの人数が押し掛ければ、完全にパンクしてしまう。

 さらに長期的問題になるのは医療費である。08年の厚労省のデータによれば45歳から64歳の一人当たりの医療費が年間約25万4100円であるのに対して、75歳以上の医療費は約83万円と3倍以上になる。

 全国紙社会部記者がこう言う。

 「75歳以上人口の激増によって、25年には、政府の医療費負担は56兆円にのぼると見られています。こうした予測を受け、すでに高齢者の自己負担の引き上げが予定されています」

 そうなると保険適用されている高額な治療が少しずつ保険適用から外され、自由診療になっていくことは避けられない。医療の二極化が進んでいく。


 当然ながら認知症患者も増える。新聞でよく報じられるように、万引きなどの軽犯罪で逮捕される高齢者が続出する。

 これが「認知症社会」の現実である。

 「すでに認知症の高齢者が、同じく認知症のパートナーを介護する『認認介護』の問題が顕在化しつつある。当然リスクは高く、今後は介護中の事故がじわじわと増えていくと考えられます。さらに、ひとり暮らし世帯が激増することが見込まれています。多くの認知症高齢者が、一人で暮らさざるを得ず、孤独死を強いられる。そういう状況がもうすぐそこまで迫っているのです」(河合雅司氏)

 行方不明者も増える。16年、認知症の行方不明者は1万2000人を超えたが、認知症の患者数、介護施設の不足などを考えれば、25年には行方不明者が2万人を超えるのは確実だという。

 それに、家族が認知症になったからといって、引き取ってくれる介護施設は見つからない。「東京圏(東京・千葉・神奈川・埼玉)の15年段階での要介護認定は91万人です。人口に対する要介護の比率が同じだとすると、25年には、これが132万人となる。
 現状でさえ、要介護認定91万人に対して、介護老人保健施設や特養など介護保険施設は19万6000人定員で、どう考えても足りていない状態。今後はこれがもっと不足する可能性がある。危機的な状況です」(政策研究大学院大学・松谷明彦名誉教授)

 厚労省は、認知症高齢者増加に対する総合戦略である新オレンジプランをまとめているが、早期診断のための医療機関の整備が遅れるなど、政府の思惑通りには進んでいない。

 若い働き手が少なくなるとどうなるのか。

 「今後、若年層の人口が減る中で働き手が減少し、コンビニやスーパーといった若年層を雇用する傾向のある業種は、次々に深刻な人手不足になってきます」(流通コンサルタントで株式会社イー・ロジットの角井亮一代表取締役)

 こうした人手不足が、国民の生活基盤に深い打撃を与え始めるのは30年頃だそうである。

 95年に8716万人でピークを迎えた生産年齢人口は、2027年には7000万人を下回る。さらに経産省の調査によれば30年、IT業界の人材は78万9000人不足するという。

 角井氏によれば、「小売り、物流、ITは、人手不足について相関関係がある」という。

 2030年には38道府県で働き手が足りなくなると予想されている。

 さらに地方からは銀行すらも消えていく。フレイムワーク・マネジメントの津田倫男代表がこう解説する。

 「銀行は地方で貸出先を見つけられないことから多くの地銀は統合・合併を繰り返し、現在の105行が、5年以内に20~30グループに、10年後には全国で8~12行といった寡占体制になると考えられます。
 問題となるのは、『県内合併』です。たとえば、現在2行2店しかないような地域で、仮に店舗が統合され、競争原理が働かなくなると、借り手が高い金利を吹っかけられるなど、不利になる場合もある」

 内閣府の『地域の経済2016』では、40年には有料老人ホームは、23.0%の自治体で維持困難になる。在宅ベースの介護サービスを受けることが難しい地域も出てくるとしている。

 2033年には団地やマンションがスラム化していく。

 「これから空き家が大問題になるのは首都圏です。郊外に暮らしてきた団塊の世代が2023年には後期高齢者となり、施設に移るなどしますが、その家の引き取り手がいない。売りに出そうにも需要はない。結果、大量の空き家が発生します。世田谷や杉並、練馬といった土地でも、駅から少し離れた場所では、そういった状況になっていく」(オラガ総研代表・牧野知弘氏)

 野村総研の推計によれば、2033年には日本全国の3戸に1戸が空き家になっているという。

 空き家率が30%を超えた地域は、治安が著しく悪くなるといわれている。そうした地域はスラム化したり、犯罪の温床になったりする可能性が高いと牧野氏は言う。

 こうした地域ではインフラの問題も深刻である。

 老朽化するインフラ整備にかける予算は年々増加しており、国土交通省によれば、2033~2034年にかけて、最大の5兆5100億円が投じられるとみられているそうだ。

 2036年には東京でバスの本数が激減する。2037年には新聞を取る人がいなくなるという。

 現状のままいけば、今から20年ほどで、年金をはじめとした社会保障制度が破綻するという指摘は多い。

 「年金の支給額は目減りしていきますし、これから給付開始年齢も引き上げられるでしょう。しかし、延命策をとっても、少子化という根本問題が解決されない限り、この仕組みは崩壊してしまう。仕組みの前提が崩れてしまうのです。あと20年もすれば、支給額がほぼゼロになるといった『制度の終わり』が見えてきます」(北村庄吾・社会保険労務士)

 さらに追い打ちをかけるように、所得税率も上がる。現在も年収が4000万円を超えると税率は45%となるが、この税率が一つの基準となり、一般的な収入の国民にも適用されることになる。現在、年収695万~900万円の場合、税率は23%だが、これが45%となり、最高税率は50%を超えるところまで引き上げられるだろうと『現代』は言う。

 2040年には119番をしても救急車は来ない。現在は電話をしてから到着までの平均時間(全国)は10分を切っており、「電話をすれば救急車が来てくれる」状況にある。だが、それも過去のものとなる。

 2053年には人口が9924万人となり、1億人を割り込むことになる(国立社会保障・人口問題研究所〈社人研〉の推計)。ピーク時の95年に約8726万人だった生産年齢人口は、約5119万人にまで落ち込むのだ。

 働き手が減り、イノベーションが起きないと日本の経済力が低下していく。イギリスのコンサルティング会社・PWCが15年に行なった推計によれば、50年の日本のGDPは世界7位になる。中国、インド、アメリカは当然のことながら、インドネシア、ブラジル、メキシコにも抜かれ、小国になっていくことはもはや必然だそうだ。

 『現代』はこう結ぶ。

 「縮小するニッポンをどうすればいいのか。対策は多くはないが、その時を漫然と迎えるのではなく、今すぐ覚悟を決め、国を挙げて備える必要に迫られている」

 週刊誌の悪いところは、問題を指摘するが、その解決策を提示することがないことである。

 頭の悪い官僚たちは、この危機的状況を「打開」するためにやることといえば、歳出を抑えるか、増税して国民の負担を増やすか、二通りの考えしか浮かばないだろう。

 12年には経団連が、25年までに消費税を19%に引き上げろと提言している。世界的に見れば、南カルフォルニア大学のセラハッティン・イムロホログル教授は、2019年から2087年の間、約60%の消費税率にすることを提案しているという。

 どちらにしても。このままいくと段階的に消費税率引き上げが行なわれ、40%程度になる日がくるといわれているそうである。

 ふざけるなである。哲学者の内田樹は、私との対談でこう言っている。

元木 ところで、日本が抱えている最大の問題は少子高齢化だと思います。現在の前期高齢者が後期高齢者になるのが2025年ですが、全人口の4人に1人が後期高齢者という超高齢化社会になります。膨らみ続ける医療費や介護費用などの社会保障費問題をどうしたらいいのでしょう。
内田 こうなるということは、もう五十年前、六十年前からわかっていたわけです。その間何もしないで、そろそろ危ないぞと考え始めると言うんですから、日本の役人というのがいかにバカかということです。
 これを国民的問題だとか言われたら、それを考えるのがお前たちの仕事だろ、制度設計するのが官僚の仕事なのに、五十年間放置しておいて、尻に火がついてから考え出すなんて、ばかやろうですよ。この問題に関しては、全部役人が悪いと言っていいと思うんです。
 そりゃそうでしょう。国民が年金制度とか医療保険の制度なんか考えられるわけないじゃないですか。どういう仕組みになっているかもわからない。全部、専管事項で役人がやっていたわけです。挙句の果てに、潰れそうだから税金上げますって言われたって、それはいくらなんでも職務怠慢なんじゃないですか。
 自分たちの失敗に誰も責任を取らないで先送りしていたら、いい加減なことしか考えないですよ。僕は怒りますよ。これを国民的な問題だなんて投げ返すんじゃないよ、ばかやろうと言う。おまえらの責任だよ。制度が崩壊したら尻拭いするのは僕らなわけですから。

 今こそ、役人の無策、政治家の無責任に対して怒る時であること間違いない。そうしないと手遅れになる。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 安倍政権が追い詰められてきた。時事通信の調査(7月7日~10日)で、ついに支持率が30%を切ったのである。それもこれも、身から出た錆。だらしのない野党も、女性議員たちの力を結集して、安倍一強政権を打倒してもらいたいものである。

第1位 「逃げ隠れする『加計孝太郎理事長』の疑惑のスイカ」(『週刊新潮』7/20号)/「加計学園問題 証人喚問で真相を暴け!」(『サンデー毎日』7/30号)
第2位 「どこまでやるの『松居一代』と『船越英一郎』」(『週刊新潮』7/20号)/「松居一代『虚飾の女王』」(『週刊文春』7/20号)/「松居一代がひた隠す『7つの嘘』」(『女性セブン』7/27号)
第3位 「リアル店舗『アマゾンブックス』はサイトとリンク」(『AERA』7/24号)

 第3位。このところアマゾンのことをあちこちで取り上げている。
 これはアメリカのアマゾンだが、137億ドル(約1兆5300億円)で自然食品スーパーマーケットチェーンのホールフーズ・マーケットを買収する計画を発表した。
 もはやアマゾンは本や家電、薬品、雑貨だけではなく、スーパーの分野でも世界一を目指そうというのである。
 だが、アメリカでは、リアルな大型書店をつくったことでも話題を呼んでいる。
 『AERA』によると、それはニューヨークのマンハッタンに近いアマゾンブックス。書店にしてはすごい混みようで、店内では皆がスマホを手にしている。
 アマゾンのカメラアプリを開いて本のカバーを撮影すると、本の正札と「アマゾンプライム会員」である場合の値引き価格がすぐに表示される。
 アジア系の父子は、アマゾンの人工知能スピーカー「エコー」のところへ行くと、店員を質問攻めにしたという。
 「エコー」か。私も買いたいな。日本でも話題の本、『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』(光文社)は、正札は27.99ドルだが、プライム会員は12.59ドル。
 アプリに登録しておけば、クレジットカードですぐに買える。買ったものが重い本なら、配達もしてくれる。
 アマゾンが得意な、本を買おうとすると、こんな本もありますと表示してくれる。スマホさえあれば、何もいらずに買い物ができる。実物の本を見て、プライム会員になれば大幅な値引きがある。
 日本ではまだ「再販制度」があるから、このような値引きはできないが、書店の新しい形として、こうした大型書店が東京などにできれば、話題にはなるだろう。
 書店の閉店が続く日本では、こんなものができれば紀伊国屋なども危ないかもしれない。早急に、新世代の書店づくりをみんなで真剣に考えるときである。

 第2位。さて、夫・船越英一郎(56)を詰(なじ)り続ける松居一代(60)だが、『新潮』が潜伏先でコンビニへ行き、カップ味噌汁を手に持って歩いている松居のさえない姿をカメラに捉えた
 さすが『新潮』である。松居は動画で、89歳のおばあちゃんの家に匿(かくま)ってもらっていると話しているが、『新潮』によれば、元々は松居の息子と親しい20代の大学生の家で、彼はベンチャー企業で映像クリエーターを務めているから、松居に頼まれて動画づくりを手伝っているそうだ。
 当のおばあちゃんはこう話している。

 「松居さんは自分の車に身の回りの物だけ載せて、私の家まで来ました。匿ってもらっているのがバレることをそこまで警戒していなかった時には、近所の銭湯にも行っていました」

 松居は、船越の浮気の証拠を掴むためにハワイまで行ったとも話していたそうだ。
 松居は、船越が糖尿病でSEXができないため、バイアグラ100ml(mgの誤り)という強いものを飲んでいると言っている。船越がもし「ヘモグロビンA1c」9・3だとしたら、相当深刻な糖尿病である。
 その上船越は心臓疾患があるというのだから、性行為で心拍数が上がると、狭心痛が発生し、心筋が壊死して腹上死に至ることもある。
 『文春』は、船越の大学ノートを手に入れた。そこには手書きで、

 「<・病院の証明書
 ・DV関連の大学ノート(手書き)
 ①一代と自ら話し合い。弁護士を立ててくれ。私の代理人に●●先生。宣言。もう直接は話せない。
 ②離婚条件は通常の財産分与、半分。
 ③調停(短く!)→裁判。
 ④マスコミ対応>」

 などと書かれているという。
 離婚調停から裁判に至るまでの手順と、病院の診断書など松居によるDVの証拠を用意した上で、弁護士と話し合うようだ。ノートのあちこちにN来日、などNというイニシャルが多く出てくる
 松居は、このNが船越の不倫相手だと確信しているようだ。
 当然船越側の言い分は違う。2人の仲が決定的になったのは、15年10月の松居の出版会見で、彼女が、船越が川島なお美(2週間前に亡くなっている)と交際していたことを暴露したことからだそうである。
 船越は激怒し、その後も口論になった。すると翌日、松居は船越のマンションの玄関前に、船越家の仏壇や両親の位牌を乱雑に放置したそうだ。やっと船越は腹を決めた。
 可愛さ余って憎さ百倍。一度こじれると男女、特に夫婦というのは難しいものだ。
 『女性セブン』は、2人の問題を以前から取材していた。だが、松居の言い分には嘘が多いと報じている。
 『セブン』によれば、松居は『文春』の編集長に手紙を送り、この件を取材してくれるよう頼んだ。船越と不倫相手との「証拠」を探しに、『文春』の女性記者とハワイに行ったが、それらしい証拠は見つけられなかったという。
 さらに、16年11月14日に、船越のバッグにあったバイアグラを見つけ、問いただしたと松居が言っているが、その日船越は京都でロケ中、東京の自宅にはいなかったと松居の嘘を指摘している。
 不倫はない、バイアグラの件も創作だとしたら、船越側は、名誉棄損や偽計業務妨害罪で松居を訴えることができるというが、船越は、一刻も早く別れたいのだから、そんなことはしないだろう。
 修羅のような夫婦の姿を描いた作品では島尾敏雄の『死の棘』がよく知られる。その小説の真実を知ろうと、生前の島尾の妻・ミホのインタビューや残された2人の資料を読み込んで、「愛の神話を壊し、創り直した」梯(かけはし)久美子の『狂うひと』(新潮社)はノンフィクションの傑作である。
 ミホは梯に「そのとき私は、けものになりました」と言った。夫の日記を読み、夫に愛人がいたことを知った時の衝撃、そこから始まる夫婦の「地獄絵」を島尾は書き続けた。こんな描写がある。

 「妻が私を責める気配が見えさえすればすぐそうしないではいられないし、妻はまたきまってそれを止めにかかる。(中略)そうはさせまいとするから私と妻はどうしても組み打ちになる。くりかえしにあきてくると、もっと危険な革バンドやコードを用いることをえらび、首のしまりがいっそう強く、だんだん限界がぼやけてくる。ここで、もう少し力を入れたら向こうがわに渡ってしまうかもしれないと思えるところまでしめると、妻も力が加わり、組み打ちもひどくなった」(『死の棘』より)

 こうしたことを繰り返し、ミホの狂気が増幅していって精神病棟に入院してしまう。以来、島尾はミホの要求をすべて受け入れ、徹底的に従うことになる。
 梯は、この小説には、ある種の虚構があるというが、私もそう思う。だが、事実と、それを小説としてまとめるのとでは、何かが違っていて当然であろう。
 事実だがどうしても書けないこと、事実より誇張して書きたくなることはある。私もここまでではないが、似たような修羅はあった。だが、それを書こうとすると、きっと出来上がったものは事実と違うものになってしまうのだろう。
 船越と松居の修羅は、どこまで続き、どういうエピローグを迎えるのだろうか。一段落したら、松居にこの間の顛末を書かせると面白いものができるかもしれないが、あまりにも一方的な内容になるからボツか。

 さて今回の第1位は『新潮』の、安倍を窮地に陥れている「お友だち」である加計(かけ)学園の加計孝太郎理事長(66)を追いかけた記事にあげたい。腹心の友が友人の大変な時に、助けるのではなく、雲隠れしたままなのである。
 だが、7月8日の夕方、『新潮』は、岡山市内で加計夫妻が白い小型ジープで、スーパーへ買い物に行く姿を捉えた。ハンドルを握るのは20歳近く年下の妻。加計は8年前に長年連れ添った妻と離婚し、この女性と再婚している。
 スーパーでは、カレールーの品定めをし、デザート用のスイカを買ったという。『新潮』が直撃すると、最後まで無言のまま、逃げるように走り去ったそうだ。
 こども園から大学までを擁する一大教育コンツェルンのトップが、疑惑に答えず逃げ回っている姿は見苦しい。『新潮』によれば、加計学園の内情は実は火の車だという。
 『今治(いまばり)加計獣医学部問題を考える会』の武田宙大共同代表は、こう言う。

 「加計学園グループは20以上の学校を有していますが、採算が取れているのは岡山理科大くらいしかありません。他の千葉科学大や倉敷芸術科学大は定員割れが続き、赤字が慢性化している。その結果、岡山理科大の黒字で補填せざるを得ない有り様です」

 加計学園は、15年の3月から岡山理科大と倉敷芸術科学大のキャンパスを担保にして、日本私立学校振興・共済事業団から50億円を超える借り入れをしているという。
 この利息の返済を来年3月から始めなければいけないそうだ。そのために、安倍を動かし、萩生田光一たち側近が文科省へ押しかけ「獣医学部開校は来年4月」と尻を切って強引に認めさせたのではないか。そう『新潮』は見ているようだ。
 どちらにしても、安倍首相だけではなく、加計孝太郎理事長をも国会へ招致して説明させなくては、この問題はいつまでも燻ぶり、安倍政権を骨の髄まで蝕むことは間違いない。
 さて、安倍首相が自らの嘘がバレるかもしれないリスクを冒して1日だけだが、国会審議に応じるという。
 それを迎え撃つ野党側は、どこをどう攻めればいいのだろう。『サンデー毎日』で、元経産官僚の古賀茂明は「規制緩和を錦の御旗(みはた)にしたお友だち優遇でしかない」と断じ、「安倍首相や萩生田氏ら加計と特別の関係にある人が直接『加計を認めてあげてよ』とは言えない。一方、原(英史、特区ワーキンググループ委員)氏や竹中平蔵氏ら特区の民間議員は規制さえ撤廃できれば、事業者は加計であろうと知ったことではない。原氏らが『議論に一点の曇りもない』と言うのはその通りで、彼らは100%撤廃したい。でも、安倍さん側は『反対意見への配慮も必要だから』と10%くらいの穴を開け、そこに加計を入れたということです」
 真相究明のためには、首相はもちろんのこと、加計孝太郎理事長、和泉洋人(いずみ・ひろと)首相補佐官らを国会に呼び、証言させなければいけないこと、言うまでもない。
 野党に求めたいのは、くれぐれも作戦を練り、安倍首相が隠したい「恥部」を徹底的に攻めて攻め切ることをやってほしい。
 場合によっては、小沢一郎議員にも質問に立ってもらえ。安倍政権がこのまま生き残るのか、審議後、政権をおっぽり出すと会見するのか、天下分け目の関ケ原である。くれぐれも油断するでないぞ。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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