親子で学ぼう!漢字の成り立ち 親子で学ぼう!漢字の成り立ち

第2回 自然の形(2)

火・山・木・林・森・鳥

これから学ぶ漢字は、自然の中から生まれたものです。
その多くは、自然の姿・形を写し取っています。このような文字を象形文字といいます。文字が生まれたころの自然は、今よりもっと荒々しく、もっと神秘的でした。古代の人は、その大きな自然をどのようにとらえ、どのように表現したのでしょうか。
『火』
4画(カ・ひ・び・ほ)小学1年
  • 甲骨文字
  • 篆文
(象形)燃えあがっている火の形。
説明甲骨文字の形は、炎の全体の形をあらわしていますが、今の火の字の形は、上に火の粉を散らした形になっています。火はひへんとして使われ、火や熱に関係する焼(火でやく)・灯(ともしび、あかり)・燃(もえる、もやす)などの字が作られています。またほかの字の下について照(てる、てらす)・熱(あつい)・烈(はげしい、やく)などの字が作られています。このは「れっか(烈火)」、また「よつてん」と言います。
用例「火災・火事」(建物・山林などがやけること)・「発火」(火が燃えだすこと)。
解説甲骨文字は、薪などを燃やした時の煙と一緒に火の燃え上がるようすをよく観察して火の形を象形化しました。火は一般的な語ですが、中には、炭などのように煙もなく陽炎のような火しかあがらないものもあるので、燃えるほのおそのものを表すために炎の字がつくられたのです。山の形との違いに注意して見てください。
火を意味する(はげしい火)は、漢字を構成するときに下の部分に使う時の形です。但し、「無」「魚」等の場合は、(れっか)ではなく、火の意味はありません。
『山』
3画(サン・セン・やま)小学1年
  • 甲骨文字
  • 金文
  • 篆文
(象形)高い山々が連なっている形。
説明中国の山は、火山活動によってでなく、地殻の変動や水の侵食などによってできた山が多いので山が連なっています。それで三つの山が連なっている形で山の字が作られています。火山の爆発によってできた富士山のような一つの高い山の姿ではありません。
用例「山河・山川」(山と川)・「山脈」(多くの山が列を作ったように長く連なったもの)・「登山」(山に登ること)。
解説日本の山は火山活動によってできた山が多いので、富士山のように孤立した高い峰(ひとつの山)の山が多い。中国では、連山・連峰が一般的なものであるということで、古代人たちは頂きを三つにして表現しています。山の美しい姿は、主峰があって、その左右に山容が連なるという形であり、それが山という字となりました。
 「やま」という意味の岳(旧字は嶽)は、山の上に羊の頭の形を加えた象形文字()で、中国の嵩山(すうざん)という山の古い名前です。山のいただき、頂上を峰(みね)といいますが、(ほう)は、高い木に神が降る形です。峰とはそのような神が降る木がある山、山の頂上をいいます。
『木』
4画(ボク・モク・き・こ)小学1年
  • 甲骨文字
  • 金文
  • 篆文
(象形)枝のある木の形。
説明上の枝は上に向かい、下の枝はたれ下がっています。木はきへんとして使われ、柱(はしら)・梅(うめ)・植(うえる)などの字が作られました。
用例「木石」(木と石)・「材木」(建築などの材料にする木)・「木陰」(日や雨の当たらない木の下)。
解説立ち木の形。木には、冬に葉を落とすものと落とさないものがあります。すべての木に共通していることは幹・枝・根があるので「」の形として表現されています。漢字を構成するとき、左に位置づいて「きへん」となり、「」の形に縮小したり削ったり変形しています。ちなみに竹には葉がつけてあることに注目しましょう。
 木とにた形の本は、木の下部に肥点(横線)を加えて、木の根もとを示す字です。末は木の上部に肥点(横線)を加えて、木の末端(こずえ)を示す字です。漢字では本と末は、木の根もととすえ(さき)の位置でその意味を表現しています。
『林』
8画(リン・はやし)小学1年
  • 甲骨文字
  • 金文
  • 篆文
(会意)木と木を左右に組み合わせた形。
説明木を二本並べて、「はやし」の意味となります。多くの木が生えて茂っているところを林といいます。日本語の「はやし」は「生やし(成長させること)」という意味です。木にはものを生みだし育てる力があると考えられていたのです。古い時代の人々は林の近くで生活していました。
用例「林立」(林の木のようにたくさん立ち並ぶこと)・「山林」(山とはやし)。
解説木の多く集まっているところ、「林」は平地の林であると一般的に言うこともありますが、必ずしも平地とは限りません。木や竹の多く生えているところを林といい、もと叢林(木の茂み)を意味しています。
『森』
12画(シン・もり)小学1年
  • 甲骨文字
  • 篆文
(象形)木を三本組み合わせた形。
説明木を三本組み合わせて、「もり、しげる」の意味となります。たくさんの木がこんもりと茂っているところ。わが国では、森は神の住むところとされました。
用例「森林」(高い木が茂った奥深い林)・「森厳」(神のけはいを感じるようなおごそかなようす)。
解説森は元来密林・原始林・樹海をいい、木が高く茂りあうところでもあります。古代には大樹林が各所にあって、人跡未踏のところが多く、そのような神秘的なところが神の住むところでした。それで万物のことを森羅万象といいます。また、蟲(虫、むし)・轟(とどろく)と同じ字の作り方で、木を三つ重ねて書くことで木が多いことを示しています。
『鳥』
11画(チョウ・とり)小学2年
  • 甲骨文字
  • 金文 篆文
(象形)鳥の全体の姿を写した形。
説明鳥の全体の姿を書いた字です。鳥の一部を簡略に書いた字は隹(とり)です。
用例「鳥類」(とりの仲間)・「野鳥」(人が飼っていない野生のとり)。
解説『説文解字』に「長尾の禽(きん)の總名(そうめい)なり。象形」とあり、短い尾の隹に対して長い尾の鳥であるとしています。甲骨文字や金文で鳥を象形に記すときは多く神聖な鳥を意味して、風神とみなされる「鳳」の初めの形は大きな羽に多くの目飾りを加えています。この鳳は尾の長い孔雀がその原形に近いものと考えられます。
隹は『説文解字』では鳥に対して「鳥の短尾なるものの總名なり」と説いています。しかし、鳥は甲骨文字では、神として祀られる「鳥星」のように特定の神話化されたものを図象的に記すもので、他はすべて隹の形に書いています。『説文解字』のいうように、尾の長短によるものではなく、隹もまた鳥の形を表わす象形文字なのです。
鶏(鷄。にわとり)は、にわとりの鳴き声を写した字ですが、神聖な鳥と考えられていたようです。
● 日本文字文化機構文字文化研究所 認定教本より

ここで紹介している日本文字文化機構文字文化研究所編集の教本は、最高峰の漢字辞典『字通』に結実した白川静文字研究の成果をもとに、漢字の成り立ちをわかりやすく解説した学習コラムです。白川静『字通』のオンライン検索サービスは、基本検索ならびに詳細(個別)検索でご利用いただけます。
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