説明祝詞を入れた器の
(さい)を木の小枝に着(つ)けて神前に捧げ、神に祈る意味の字です。殷(いん)王朝では、外敵の侵入や戦争・豊作と不作などの国の大切なことについて、神や祖先の霊に祈り、助けを求める告(こく)の祀(まつ)りをさかんにしています。告はもとは神に祈るという意味でしたが、のちには上の人に告げ、訴えるときに使われ、「つげる」という意味の字になりました。
用例「報告」(知らせつげること)・「告白」(隠していたことを明らかにしてつげること)。
解説『説文解字(せつもんかいじ)』は、告の字の上半分を牛の角の形であるとみて、牛が人になにかを告げるとき、横木(よこぎ)をつけた角で人にふれるのですと説明していますが、牛はそのようなことをしませんから、この説明はまちがっています。甲骨(こうこつ)文字や金文(きんぶん)の字形では、上部は明らかに木の枝の形です。
告の一番古い形は「
」で、上部は牛の角でなく木の枝の形です。牛を書くときは「
」のように、上の大きな角の下に斜めの線で牛に特徴的な腰骨の盛り上がりを書くのです。このように形が違います。
(会意)辛(しん)と口(こう)とを組み合わせた形。
説明辛(しん)は刑罰としての入れ墨をするときに使う把手(とって)のついた大きな針の形です。口(こう)は口(くち)ではなく、もとの形は
で、誓いの文書を入れる器の形です。その文書を載書(さいしょ)というので、
はサイと読みます。誓いをするとき、
という器の上に針をおき、私は、もし誓いを守らないときにはこの針で入れ墨の刑罰を受けますというように、神に誓いをたてることばを言(げん)といいます。このような誓いの仕方をするのは、裁判や約束を結ぶときに、自分が正しいこと、約束を絶対に守ることを強く主張するためです。言(げん)とは神に対していう誓いのことばですから、「いう、ことば、ちかい」という意味になります。
用例「発言」(意見をいうこと)・「言行」(ことばと行動)・「言語」(ことば)・「伝言」(ことづて)・「寝言」(寝ているときに言うことば)。
解説言は、もしその約束に違反したときには入れ墨の刑罰を私は受けますという神への誓いの言葉です。言という字は、何となくものを言うのでなく、神様にお告げをする誓いをたてるという字で、宣誓するという意味です。
言という字の
の
の中に一が入ると
(音)となります。神に誓うことば、神に誓って祈ることばを言(げん)といいます。
そうすると神様はことばではおっしゃらないが、夜中にかすかな音を出して反応します。神のお告げが音で知らされるのが、音(おん)という字なのです。神がかすかな音をたてること(訪れといいます)を
の中の横線-で示したのが音です。神がたてるかすかな音、つまり神の声を聞くことのできる人を聖(せい)、聖者(せいじゃ)といいます。聖の甲骨文字は
で、つま先立っている人の上に大きな耳をかいて、聞くという耳のはたらきを強調している形です。
説明士は
の形でわかるように小形(こがた)の鉞(まさかり)の刃を下に向けた形です。鉞は邪悪(じゃあく)なものを追いはらうことができる力を持っていると考えられていました。口(こう)は口(こう)ではなく、もとの形は
(さい)で、祝詞(のりと:神への願いごとを書いた祈りの文)を入れる器の形です。祝詞には神への願いごとを実現させる祈りの効果があると考えられていたのです。そこで
の上に鉞をおいて祈りの効果を守り、鉞の力によって祈りの効果がよい状態で守られると、願いごとが実現して人々はしあわせになり、めでたくなります。そこで吉は「よい、めでたい、しあわせ」という意味に使われます。
用例「吉報」(よい知らせ)・「吉日」(物事をするのによい日)。
解説士(
)は、鉞の刃を下に向けた形。吉は祝詞をいれる器の
の祈りの効果を鉞で守ることを表します。祈りの効果が守られるので、吉(よい、めでたい)となります。
害(槙)(がい)と舎(鐙)(しゃ)は、大きな針で上から
を刺して祈りの働き、祈りの効果をきずつけて、害する(なくする)、捨てるという意味の字です。