親子で学ぼう!漢字の成り立ち 親子で学ぼう!漢字の成り立ち

第20回 人の形から生まれた文字〔5〕

女の人の姿(1)

女・母・如・若・妾・婦・安・好

「女」という文字は、しとやかに跪(ひざまず)いた女の人の姿に作られています。「女」のつく文字は大変多く、それも形声文字が多くを占めます。「男」のつく文字よりはるかに多いのです。漢和辞典を見ても「女」の部首はありますが、「男」の部首はありません。これは、古代において、神のお告げを受ける人は女性であったり、女性がいなければ子孫が断絶してしまうというようなことで、漢字の成立過程で女性が大きな役割を占めているからでしょう。
今回は、象形や会意文字を中心に考えていきたいと思いますが、「女」を部首に持つ文字だけでなく、構成要素として「女」が含まれている文字もあります。
『女』
3画(ジョ・ニョ・ニョウ・おんな・め・むすめ)小学1年
  • 甲骨文字
  • 金文
  • 篆文
(象形)跪(ひざまず)いている女の人の形。
説明手を前に重ねて、跪いている女の人の姿です。
用例「女子」(おんな。女の子)・「少女」(年少の女の子)・「天女」(てんにょ:天に住んでいるといわれる美しい女)・「女房」(つま)。
解説女子が手を前に交え、裾(すそ)を押さえるように跪く女の形で、「おんな」の意味を表します。「女」は女の姿を表現する字で、女性に関する多くの字の系列を作ります。会意文字では偏(へん)となる場合が多いので、「おんなへん」といいます。
手を前に重ねて、うやうやしく神霊(しんれい)のいる所を拝(おが)んでいる女の姿です。甲骨文字の二字目に女のまわりに小さな点を加えた字がありますが、これは酒をふりかけて女を清め祓(はら)っているのです。それで女という字は、神霊に仕えるときの女の姿であることがわかります。
女が男の前で跪き、いわれるままに行動する女の姿で、女が男に隷属(れいぞく)させられていた「男尊女卑(だんそんじょひ)」の時代の思想が反映されていたというのは俗説です。
男の字は、田(農地)と力とを組み合わせた形。力は農具の「すき」の形ですから、男は「すきで田を耕(たがや)す」の意味です。古くは農夫たちの管理者を男(だん)といいましたが、のち耕作する「おとこ」の意味に使われるようになりました。
『母』
5画(ボ・はは)小学2年
  • 甲骨文字
  • 金文
  • 篆文
(象形)胸に乳房のある女の形。
説明女に二つの乳房を加えた形。女の字の胸のところに乳房を意味する点を加えて、母親、「はは」の意味になります。
用例「父母」(ちちと、はは)・「祖母」(父または母のはは)・「母体」(ははおやの体)。
解説女子が成長して乳房が膨(ふく)らんだ形です。「ちち」という意味の父は、斧(おの)の頭部を手にもつ形()です。儀式のときに使う斧をもつ人は、人びとを指揮する人です。そのような人は家族の中では「ちち」にあたりますから、父は「ちち」という意味に使います。
『如』
6画(ジョ・ニョ・ごとし)
  • 甲骨文字
  • 篆文
(会意)女と口(こう)とを組み合わせた形。
説明女は巫女(みこ:神に仕えて神のお告げを伝える女)です。口は(さい)で、祝詞(神への祈りの文)を入れる器の形です。巫女がを前にして祈る形で、神意(神のこころ)を問うという意味です。神意を受けて、それに従うので「したがう」という意味があります。
用例「突如」(とつじょ:急に)・「如実」(にょじつ:まちがいなくその通りであること)。
● 日本文字文化機構文字文化研究所 認定教本より

ここで紹介している日本文字文化機構文字文化研究所編集の教本は、最高峰の漢字辞典『字通』に結実した白川静文字研究の成果をもとに、漢字の成り立ちをわかりやすく解説した学習コラムです。白川静『字通』のオンライン検索サービスは、基本検索ならびに詳細(個別)検索でご利用いただけます。
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