

第9回
(さい)(載書(さいしょ))について(5)
可・哥・歌
『可』
5画(カ・よし・ゆるす)
- 甲骨文字
- 金文
- 篆文
(会意) 口(こう)と
(か)とを組み合わせた形。

説明
(か)は木の枝の形です。口のもとの形は
(さい)で、祝詞(のりと:神への祈りの文)を入れる器の形です。神に祝詞をささげて祈り、木の枝で
を殴(う)ちながら願いごとをぜひ実現してほしいと神に訴え、神を責めるのが可の意味です。これにたいして神が願いごとをききいれて、「よし」と許すので、可には「よし、ゆるす(神が許可する)」という意味があります。
神に強く訴えるときに出す声を、可を重ねて哥(か)といいます。哥は歌(か)のもとの形ですから、歌はもともとは神様に訴える声、祈る声をいうのです。



神に強く訴えるときに出す声を、可を重ねて哥(か)といいます。哥は歌(か)のもとの形ですから、歌はもともとは神様に訴える声、祈る声をいうのです。
用例「可否」(よしあし)・「許可」(許すこと)。
解説白川先生の文字学は、神と人々との密接な関わりをもとに漢字を解読していきます。「可」は祈りを収めた
を木の枝で殴ち、大きな声を出しながら祈ることの実現を要求する意味です。
(祝詞)で神様にものをお願いするけれど、なかなか簡単なことでは願い事を叶えてくださらないので、木の枝で
(祝詞)を殴って、私の言うこと、願い事を聞け!と叫ぶのです。その時、大体は祈るような節をつけて、自分の願いを許可せよ、実現せよというようにやっているわけで、そこから実現の可能性も生まれてくるわけです。その
(可)を重ねると哥となります。これが歌という字のもとの字で、歌というのは楽しんで歌っているのでなく、必死になって神へ向かって「こうせい、こうせい」といってお祈りしているときの声が歌なのです。のちに口を開けて歌っている人の形の欠(けん)(
)をつけ加えました。これがいまの歌(うた)という字です。





『哥』
10画(カ・うた)
- 篆文
(会意)可(か)を上下に組み合わせた形。
説明可(か)は神に祈るとき、その祈りの文を入れた器(
)を木の枝で殴(う)ち、願いごとが実現することを責め求める字で、そのとき出す声を哥(か)といいます。哥は神に訴(うっ)たえる声で、歌(か)のもとの形です。

解説「可」の解説をご参照ください。
『歌』
14画(カ・うたう・うた)小学2年
- 篆文
(形声)音符は哥(か)。
説明哥(か)が歌(か)のもとの形です。哥に、口を開いて立つ人を横から見た形の欠(けん)を加えた字が歌です。歌とは神への祈りの文を入れた器の
を木の枝で殴(う)って、祈りの実現を訴えるときに出す声です。

用例「歌曲」(かきょく:うた)・「歌舞」(かぶ:うたと舞)。
解説日本語の歌(うた)は、「拍(う)つ、訴(うった)う」と関係があるようです。詠歌(えいか)の詠は、声を長く引く歌いかた、歌は強くせまるような歌いかた、唱(しょう)はみんなで勢いよく合唱する歌いかたです。
● 日本文字文化機構文字文化研究所 認定教本より
ここで紹介している日本文字文化機構文字文化研究所編集の教本は、最高峰の漢字辞典『字通』に結実した白川静文字研究の成果をもとに、漢字の成り立ちをわかりやすく解説した学習コラムです。白川静『字通』のオンライン検索サービスは、基本検索ならびに詳細(個別)検索でご利用いただけます。
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