第13回 人の形から生まれた文字〔1〕
説明人の頭の上に火の光を書き、神聖な(神のように尊い)火を強調してみせている字です。古代の人びとにとって火は非常に神聖なものでしたから、火を守って神に仕える人がいました。光の字はそのような火を扱う聖職者を示しています。
のち火の「ひかり」そのものを光といい、光を出して美しく見えることから「かがやく」の意味となり、その意味を人に使って「ほまれ」(よい評判。名誉)という意味にも使います。
用例「光明」(こうみょう:ひかり。ひかりかがやくこと)・「栄光」(えいこう:かがやかしいほまれ)。
解説このような造字法は「見」「望」「聞」「聖」「先」などと同じです。「見」は人の上に大きな目をのせ、「望」「聞」「聖」の最初の形は人の上に大きな耳をのせ、「先」は人の上に之(足)をのせ、目や耳や足の機能(はたらき)や行為を強調する字の作り方です。火は古代においては極めて神聖なものでしたから、これを聖職者として扱う者がいました。
金文にはまた光の下部を女の人の形に作るものがあります。
『児』
7画〔兒〕8画(ジ・ニ・こ・こども)小学4年
説明髪の毛を頭の中央で左右に分け、耳のあたりで輪の形に結び、角のように突き出した幼い子どもの髪形ですから、児は「こども」の意味になります。この髪形はあげまきとよばれ、古代日本の男の子もそれに似た髪形をしていました。
用例「児童」(じどう:こども)・「幼児」(ようじ:おさないこども)。
解説人を横から見た字形である儿(じん)の上に幼児の髪形を加えた形で、幼児の意味を表します。
『礼記(らいき)、内則(ないそく)』に、生まれて三か月後に、日を択(えら)んで男角(だんかく:男のあげまき)・女羈(じょき:女のたてよこ結びの髪)することをしるしています。
- 甲骨文字
- 金文
(象形)前に向かって口を開いて立つ人を横から見た形。
説明口をあけているのは、息をはき、ことばを言い、歌を歌い、叫ぶときの形ですから、そのような動作・行為をする字に使います。ものを欧(は)く、
(せき)をする、わらい欣(よろこ)ぶ、歎く(なげ)、歌うのように、欠(けん)を他の字と組み合わせた字が生まれました。
同じ字の形の欠は、缺(けつ)の常用漢字として使い、「かける、かく」の意味ですから、欠(けん)とは字の成り立ちも意味もちがいます。
解説『説文解字』に「口を張りて气悟(きもと)るなり。气、儿(人)上より出づるの形に象(かたど)る」としていますが、口を開いて欠伸(けっしん:あくびと、せのび)する意味で、「あくび」をいいます。
● 日本文字文化機構文字文化研究所 認定教本より
ここで紹介している日本文字文化機構文字文化研究所編集の教本は、最高峰の漢字辞典『字通』に結実した白川静文字研究の成果をもとに、漢字の成り立ちをわかりやすく解説した学習コラムです。白川静『字通』のオンライン検索サービスは、基本検索ならびに詳細(個別)検索でご利用いただけます。
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