第18回 人の形から生まれた文字〔4〕
- 篆文
(会意)「又(ゆう)」と「一」とを組み合わせた形。
説明「又(ゆう)」は右手の形です。これに指一本という意味の「一」を加えて「寸(すん)」が作られました。寸は手の指一本の幅のことです。手の指をひろげたときの親指から中指までの長さが尺ですが、尺の十分の一の長さが寸です。指一本の幅の長さは短いですから、寸には、「わずか、すこし」の意味があります。
用例「寸暇」(すんか:わずかなひま)・「寸土」(すんど:すこしの土地)・「寸法」(すんぽう:長さ)。
解説指一本の幅を寸(すん)といいます。親指と中指とを広げた形は尺(しゃく、その十分の一が寸)。両手を広げた長さを尋(ひろ)といい、手指を四本並べた幅はわが国の「つか」にあたります。
説明「又(ゆう)」は右手の形です。右手と右手を組み合わせて、手を取り合って助け合う意味になります。また助け合う人間関係の「とも、ともだち、なかま、兄弟」の意味になり、また「したしむ、まじわる」という意味にも使います。
用例「友好」(ともだちとしての仲のよいつきあい)・「友情」(ともだちとして相手を思う心)・「親友」(特別にしたしいともだち)。
解説金文の字形は、「双(そう)」のように二又を並べ、下に盟誓(めいせい)の器である「曰(えつ)」を加えた形に作ることが多いのです。盟誓の器である曰の上に双方の手をおいて誓う形式は、外国などで聖書の上に手を置いて宣誓する(誓い合う)ような意味を示す字でしょう。
『上』
3画(ジョウ・ショウ・うえ・うわ・かみ・あげる・あがる・のぼる)小学1年
(指事)掌(てのひら)の上に上を示す点を加えて、上の意味を示します。
説明甲骨文字と金文の字の形は掌を上に向け、その上に点を加えて、「うえ、うえのほう」の意味になります。下は掌を下に向け、その下に点を加えて、「した、したのほう」の意味になります。
漢字では、上と下を掌の上と下で表して、上と下の字を作りました。そして上は掌の上という意味だけでなく、すべてのものの「うえ、うえのほう」の意味になり、上に「あがる、あげる、のぼる」の意味にも使われるようになりました。また人間関係では、「めうえ、うえの地位にいる人」をいうようになり、時間では、「はじめ、むかし」の意味に使われます。下も上と同じように、その意味が広がって使われるようになりました。
用例「地上」(土地のうえ)・「上昇」(うえに昇ること)・「上旬」(一か月のはじめの十日間)・「上着」(重ねた衣服のうち、うえに着たもの)。
『下』
3画(カ・ゲ・した・しも・もと・さげる・さがる・くだる・くだす・くださる・おろす・おりる)小学1年
(指事)掌(てのひら)を伏せ、その下に下を示す点を加えて、下の意味を示します。
説明甲骨文字と金文の字の形は、掌の下にものがあることを示す形です。漢字は掌の上と下によって、上と下の関係を示しているのです。上の字の説明も見てください。
用例「地下」(大地のした)・「落下」(したのほうに落ちること)・「下降」(程度の低いほうにさがること)・「下車」(車をおりること)
● 日本文字文化機構文字文化研究所 認定教本より
ここで紹介している日本文字文化機構文字文化研究所編集の教本は、最高峰の漢字辞典『字通』に結実した白川静文字研究の成果をもとに、漢字の成り立ちをわかりやすく解説した学習コラムです。白川静『字通』のオンライン検索サービスは、基本検索ならびに詳細(個別)検索でご利用いただけます。
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