(さい)(載書(さいしょ))について(1)
(さい)
」(さい)の発見でした。これまで単に「くち」として解釈していたものの多くは、実は「祝詞(のりと:人が神に願いごとをするために書いた文)を入れる器の形」であることを解明したのです。この発見により、疑問が持たれていた多くの漢字の成り立ちや新しい文字の系列が明らかになりました。それだけでなく、漢字を生む背景になった3千年以上も前の中国古代の人々の生活・習俗・文化までが、私たちの目の前に姿を現してきたのです。今からおよそ3千300年前の漢字が生まれたころ、人々は自然に対して今よりもっともっと畏(おそ)れと感謝の気持ちを抱いて生活をしていました。大自然の前では人は無力で、為(うなが)す術(すべ)もありませんでした。そのようなときに、自然界のあらゆるものには神が宿っていると信じたのは当然のことでしょう。
」が使われたことがわかったのです。これはまさに文字学における偉大な発見と言えます。口を含む漢字の古・可・史・召・右・各・吉・向・名・君・吾・告・呈・言・舎・命・和・害・啓・問・善などは、その口を口(くち)と解釈したのでは字の成り立ちや意味を解くことはできません。口を
(祝詞を入れる器の形)と解釈することによってはじめてそれぞれの文字の成り立ちと意味を、無理なく、また体系だって明らかにすることができるのです。そして『説文解字』の説明の誤りも正しく改めました。
」をどうして「サイ」と読むのでしょうか。それは誓いの文書を古い時代に載書(さいしょ)といったので、その文書を入れる器である
を「サイ」と読むのです。ここで紹介している日本文字文化機構文字文化研究所編集の教本は、最高峰の漢字辞典『字通』に結実した白川静文字研究の成果をもとに、漢字の成り立ちをわかりやすく解説した学習コラムです。白川静『字通』のオンライン検索サービスは、基本検索ならびに詳細(個別)検索でご利用いただけます。
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