親子で学ぼう!漢字の成り立ち 親子で学ぼう!漢字の成り立ち

第14回 人の形から生まれた文字〔2〕

人を前から見た形

大・天・夫・立・並
『大』
3画(ダイ・タイ・おお・おおきい・おおいに)小学1年
  • 甲骨文字
  • 金文
  • 篆文
(象形)手足を広げて立つ人を正面から見た形。
説明「大」は大きな人の形で、「おおきい、ひろい、さかん、すぐれる」などの意味に使います。
用例大形」(おおきな形)・「拡大」(ひろげておおきくすること)・「盛大」(非常にさかんなこと)・「偉大」(たいへんすぐれていること)・「大衆」(多くの人びと)。
解説人が両手と両足を広げ、正面を向いて立っている形。「大」は、すべて大きく、盛んなものの意味に使われます。
『説文解字』に「天は大なり。地は大なり。人も亦(ま)た大なり。故に大は人の形に象(かたど)る」とあります。金文の大保(たいほ)関係の器に、大を特に図象にして、すぐれた体格の形にしるすものがあります。
『天』
4画(テン・あめ・あま・そら)小学1年
  • 甲骨文字
  • 金文
  • 篆文
(象形)人を正面から見た形の「大」の上に大きな頭をつけた形。
説明人の正面形の上に大きな頭をつけたもので、「天」とはもとは人の頭をいう字です。天空(てんくう)をいう字はもとはありませんでしたが、人の一番高いところにある頭をさす天という字を借りて、空を天というようになり、「あめ、そら」の意味に使います。天は神のいるところと考えられ、天は神聖な(神のように尊い)ところであるという考えは古くからありました。
用例「天地」(てんと地)・「天災」(地震などの自然災害)・「晴天」(晴れたそら)・「天の川」「天の河」(銀河)。
解説天を神聖であるとする考えは殷(いん)の時代にすでにあり、殷(自らは商と名のっていました)は、その都を「天邑商(てんゆうしょう)」とよんでいます。「商の神聖な都」という意味でしょう。天を祀(まつ)る宗教的な儀礼・儀式が行われたことが、周王朝初期の金文によって明らかになっています。
殷王朝から周王朝への交代は天の命(天命といいます)によるという、天命の思想は周王朝になってから生まれました。すべてのことは天命によって決まると考えられるようになり、人の力の及ばぬことを、すべて天というようになり、天は自然という意味にも使われるようになりました。
天に対して地の最初の字形は「墜」(。ツイ・チ)で、神の陟(のぼ)り降(お)りするときに使う神の梯(はしご)によって、神の降り立つところという意味を示す字です。神のいるところが天であり、その神が降りるところが墜(ち。地)なのです。
『夫』
4画(フ・フウ・おっと・おとこ)小学4年
  • 甲骨文字
  • 金文
  • 篆文
(象形)髷(まげ)に簪(かんざし)を通している男の形。
説明「大」は正面から見た人の形で、その頭に加えている一は髷(まげ)に髪飾りの簪(かんざし)を通している形。夫の字は結婚式のときに、男子が髷に簪をさして正装した晴れ姿ですから、「おっと」という意味に使います。また、古くは大人の男子を「一夫」「二十夫」のように数えましたから、「おとこ」という意味もあります。妻(さい)は三本の簪を立ててさし、それに手(又<ゆう>)をそえて髪飾りを整える女の姿ですから、夫と妻はともに結婚式のときの晴れ姿を写した字です。それで妻は、「つま」という意味に使います。
用例「夫妻」(ふさい:おっとと、つま)・「夫婦」(ふうふ:おっとと、つま)・「農夫」(農業の仕事をする男)。
解説男が成人したときの姿は (彦:げん)です。男の厂(ひたい)の上に文(文身で、朱色などで一時的に描いた入れ墨)をかき、下にはその美しいことを示す彡(さん)を加えた字が彦で、「ひこ」といいます。
『立』
5画(リツ・リュウ・たつ・たてる)小学1年
  • 甲骨文字
  • 金文
  • 篆文
(会意)大と一とを組み合わせた形。
説明「大」は手足を広げて立つ人を正面から見た形です。一はその人の立つ位置を示します。それで立(りつ)は古くは、「たつ」という意味と、位置という意味に使いました。
用例「起立」(たちあがること)・「立場」(たっているところ)・「立案」(案をつくること)・「建立」(こんりゅう:寺や塔などを建設すること)。
解説大(前向きの人)と一(立つ位置)との組み合わせで、儀礼の時の立つ位置を表し、その立つ位置で人の「位(くらい)」を表しました。金文では立(りつ)は立つという動詞と位置という名詞に用いられました。
『並』
8画〔竝〕10画(ヘイ・なみ・ならべる・ならぶ・ならびに)小学6年
  • 甲骨文字
  • 金文
  • 篆文
(会意)旧字は竝(へい)に作り、立(りつ)を左右に並べた形。
説明「立(りつ)」はその位置すべきところに人が一人で正面を向いて立つ形です。竝(へい)は二人がならんで立つ形ですから、「ならぶ、ならべる」という意味になります。もとは人がならぶの意味でしたが、のちに人以外の物や物事がならぶの意味にも使うようになりました。
国語では「なみ」とよみ、「人並(ひとなみ)」・「世間並(せけんなみ)」(一般の人と同様であること)のようにいいます。
用例「並列」(へいれつ:ならぶ物をならべること)・「並行」(へいこう:物事が同時におこなわれること)・「並立」(へいりつ:二つ以上のものがいっしょにならぶこと)。
解説「並」は、立を左右に並べた形で、前向に二人並んだ人の形。二人並んで祭儀に臨む形。『説文解字』に「竝は(なら)ぶなり」とあります。(へい)は二人相連なる形で、音と意味は同じですが、は横を向いて立つ二人を合わせて一組にする意味の字です。
● 日本文字文化機構文字文化研究所 認定教本より

ここで紹介している日本文字文化機構文字文化研究所編集の教本は、最高峰の漢字辞典『字通』に結実した白川静文字研究の成果をもとに、漢字の成り立ちをわかりやすく解説した学習コラムです。白川静『字通』のオンライン検索サービスは、基本検索ならびに詳細(個別)検索でご利用いただけます。
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