堀口茉純のやっぱり江戸が好き!堀口茉純のやっぱり江戸が好き!

「三度の飯より江戸が好き」というお江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーこと堀口茉純さんが、江戸後期の地誌『江戸名所図会』を江戸の暮らしという視点から読み解くコーナー。江戸っ子のリアルな生活、ぜひ体感してみてください。

日本橋第一巻 一冊 十三丁

全国の物流の中心地ともいえる一大商業エリア

この人込みさえも大都会お江戸の象徴・日本橋の名物でした。現在の渋谷のスクランブル交差点みたいなノリ?!

日本橋は1604年(慶長8)、幕府開府の年に最初の木橋がかけられ、翌年には五街道の起点となりました。橋からのびる大通り沿いには全国から大店がこぞって出店。河岸沿いには蔵屋敷が立ち並び、江戸の、ひいては日本全国の物流の中心地ともいえる一大商業エリアに成長していきました。

様々な物資が水上を行き交っていますが、屋根つきの船は観光船です。当時はクルージングもポピュラーなお江戸観光手段でした。

日本橋の活況は橋や路上ばかりにとどまりません。絵をよく見てみると、川の上にも沢山の船が行き交っています。全国から大型船で江戸湾に運ばれた積み荷が、このような小型船に積み替えられて、水路を使ってここ日本橋まで運び込まれてきました。また、橋のたもとには魚河岸や青物市場もあったので、江戸っ子たちの生活に欠かすことのできない台所のような役割も果たしていたようです。あらゆる職業・身分の人々で毎日ごった返していたわけですね。

その中には地方から初めて江戸に出てきた観光客の姿もありました。なんといっても日本橋、という国の名前を冠した大層な橋なので、江戸見物でまず行ってみたいと思う憧れの場所だったようです。しかし、橋自体は長さ28間(およそ51メートル)、幅4間2尺(およそ8メートル)とそれほど立派なものではなかったので、実際見るとがっかりする人が続出したとか(笑)

ただ、橋の上からの眺めはたいへんよかったようで、例えば早朝に東の空を見れば、朝日が江戸湾に昇る様子がよく見えたそうです。当時は高い建物が少ないので、橋のアーチの上からは海の方まで見渡せたのでしょう。現在の高速道路が覆いかぶさり、ビル街が乱立する景観からは想像もできませんが……。また、西を見れば江戸城と富士山が見えたと言います。がっかりしたおのぼりさんもこの景色には大満足だったのではないでしょうか。

※この文章は「お江戸いいね!~I Like EDO」の「ほーりー 江戸を斬る!」を加筆修正したものです。

日本橋のいま①

江戸のころは木造の太鼓橋だった日本橋。現在の橋は明治44(1911)年に架けられた20代目で、長さ約49m、幅約27mのルネサンス風の石橋。東京オリンピックを翌年に控えた昭和38(1963)年、首都高速道路が橋の上に建設されたことで景観はがらりと変わってしまいましたが、江戸のころと同じように多くの人や車が行き交いにぎわっています。ちなみにこの日本橋の柱文字、首都高壁にある文字は、15代将軍慶喜の手によるもの。橋の中心には現在も日本の道路の原点の印として道路元標が埋め込まれています。

(写真・文/ジャパンナレッジ編集部)

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『江戸名所図会』とは

江戸時代を代表する地誌で、江戸名所の集大成と評される、江戸後期の"ガイドブック"。斎藤幸雄・幸孝・幸成(月岑)の親子三代が手がけた大事業で、天保5(1834)年と天保7(1836)年の二度に分け、7巻20冊が刊行。1000を数える項目には、江戸はもちろん、現在の神奈川、千葉、埼玉の名所も含まれる。絵師長谷川雪旦の742点の挿画では、神社仏閣や景勝地などの実地調査に基づいた俯瞰図や、生活風俗に関係する事柄の詳細で写実的な描写が楽しめる。歴史や風俗資料としても活用されている。

プロフィール

堀口茉純(ほりぐち・ますみ)

堀口茉純(ほりぐちますみ)

江戸にくわしすぎるタレント=お江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーとして注目を集め、執筆、イベント、講演活動にも精力的に取り組む。初めての著書の『TOKUGAWA15』(草思社)は歴史書籍としては異例のロングセラーに。近刊は『江戸名所図会』など近世の版本史料を駆使して江戸人の生活実態に迫る『江戸はスゴイ~世界一幸せな人びとの浮世ぐらし~』(PHP新書)。NHKラジオ第1『DJ日本史』、TOKYO MX『週末ハッ ピーライフ!お江戸に恋して』にレギュラー出演中。

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目次

日本橋編

深川編

向島編

上野編

浅草編