堀口茉純のやっぱり江戸が好き!堀口茉純のやっぱり江戸が好き!

「三度の飯より江戸が好き」というお江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーこと堀口茉純さんが、江戸後期の地誌『江戸名所図会』を江戸の暮らしという視点から読み解くコーナー。江戸っ子のリアルな生活、ぜひ体感してみてください。

駿河町三井呉服店第一巻 一冊 十六丁

富士山をのぞむ、「現金掛け値なし」の大店のある通り

正面の富士山の下に三井越後屋の暖簾が末広がりに描かれていて、まるで二つ富士山があるみたい! とっても縁起がいい構図ですね~。

駿河町からはその名の通り、駿河国(静岡県)の富士山が正面に見えたそうです。よく見ると、左右の店の暖簾には同じ紋が染め抜かれていますね。これは天下の豪商・三井越後屋呉服店の暖簾です。

伊勢松坂の商人・三井高利が日本橋に呉服店を開いたのは1673年(延宝元)のこと。彼は様々なアイデアで江戸の消費者の心をつかみました。

道を歩くのは、武士や旅人、町人に女性グループなど様々。ウィンドウショッピングならぬ暖簾ショッピングを楽しんでいるのかな?

例えば「現金掛け値なし」の商法。当時は節季払いと言って年に2~3回、まとめて支払いをする方法が一般的だったので、価格に利息が含まれており、ただでさえ高い呉服がより高額になっていました。これを現金による即日払いにすることによって、利息の分だけ安く呉服を売ることが可能になったのです。また、より多くの人に告知するために「引札」、つまりチラシを作って配布しました。これが日本の宣伝広告の始まりと言われています。

また、他の呉服店が、顧客への訪問販売を基本としているのに対し、「店先(たなさき)売り」つまり店頭販売をするようになりました。これで一見(いちげん)さんでも気軽に立ち寄って呉服を買うことができるようになったわけです。さらに急ぎの客には二刻(およそ4時間)で着物をあつらえたり、反物を切り売りしたり、端切れを安く売ったりと、それぞれの客の都合に合わせたサービスを提供するなど、企業努力を重ねました。結果、この絵に見られるように、武士や町人、女性たち等、身分を問わず、様々な人々に愛される大店に成長したわけですね。

ちなみに、三井越後屋は、三越と名を変えて、現在もこの場所で営業しています。スゴイ!

※この文章は「お江戸いいね!~I Like EDO」の「ほーりー 江戸を斬る!」を加筆修正したものです。

日本橋のいま③

正面に富士山は見えなくなったけれど、日本を代表する近代建築が建ち並ぶ旧駿河町(現在、室町1、2丁目)。通りの北側にはアメリカの有名な銀行をモデルに建てられた三井本館、その隣はベルギーの中央銀行をモデルに辰野金吾がデザインした日本銀行本店、南側はルネサンス様式の日本初の百貨店、日本橋三越百貨店本店、といまでは厳かな雰囲気が味わえる通りになっています。ほか日本橋地区には日本橋高島屋、三菱倉庫ビルなどの名建築があります。その一方で、コレド室町、コレド日本橋、日本橋三井タワー、東京日本橋タワーなど21世紀の超高層ビルがずらり。日本の新旧建物探訪が楽しめますよ!

(写真・文/ジャパンナレッジ編集部)

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『江戸名所図会』とは

江戸時代を代表する地誌で、江戸名所の集大成と評される、江戸後期の"ガイドブック"。斎藤幸雄・幸孝・幸成(月岑)の親子三代が手がけた大事業で、天保5(1834)年と天保7(1836)年の二度に分け、7巻20冊が刊行。1000を数える項目には、江戸はもちろん、現在の神奈川、千葉、埼玉の名所も含まれる。絵師長谷川雪旦の742点の挿画では、神社仏閣や景勝地などの実地調査に基づいた俯瞰図や、生活風俗に関係する事柄の詳細で写実的な描写が楽しめる。歴史や風俗資料としても活用されている。

プロフィール

堀口茉純(ほりぐち・ますみ)

堀口茉純(ほりぐちますみ)

江戸にくわしすぎるタレント=お江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーとして注目を集め、執筆、イベント、講演活動にも精力的に取り組む。初めての著書の『TOKUGAWA15』(草思社)は歴史書籍としては異例のロングセラーに。近刊は『江戸名所図会』など近世の版本史料を駆使して江戸人の生活実態に迫る『江戸はスゴイ~世界一幸せな人びとの浮世ぐらし~』(PHP新書)。NHKラジオ第1『DJ日本史』、TOKYO MX『週末ハッ ピーライフ!お江戸に恋して』にレギュラー出演中。

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目次

日本橋編

深川編

向島編

上野編

浅草編