堀口茉純のやっぱり江戸が好き!堀口茉純のやっぱり江戸が好き!

「三度の飯より江戸が好き」というお江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーこと堀口茉純さんが、江戸後期の地誌『江戸名所図会』を江戸の暮らしという視点から読み解くコーナー。江戸っ子のリアルな生活、ぜひ体感してみてください。毎月1日と15日の更新です。

十二月十八日年の市第六巻 十六冊 十五丁

大賑わいの年の市

お江戸の年末の風物詩、浅草寺年の市! 所狭しと正月用品の出店が立ち並び、人々が大行列をつくりました。

江戸の歳末の風物詩といえば、浅草寺の年の市。12月17、18日に正月用品を扱う出店が市をなし、その賑わいは境内だけではおさまらず、南は駒形堂のあたりから、西は上野にまで及んだといいます。その様子を『江戸名所図会』本文には、「浅草大通りおよび下谷(したや)通りともに群集す。ことさら境内は尺寸(せきすん)の地なく、ただ人をもって地を覆ふに異ならず。実(まこと)にこの日の繁盛(はんじょう)、江戸第一にして遠近に轟(とどろ)けり」と紹介しています。確かに地面が見えません!

境内に入るまでに何時間もかかるほど混雑しているので、寒いし、お腹もすくんです! というわけでこうした軽食屋台が重宝がられました。おいしそう~。

ちなみに正月屋は、お汁粉やお雑煮を売る店。中のお父さん、腹ごしらえをして、おかみさんに頼まれた正月用品を買いに行くってところでしょうか。買い忘れがないようにね!



江戸っ子は下り酒が好きだった

……これだけ多くの人や物が描かれていて、どうしてもここに目が行ってしまう私って、女子としてどうなのでしょうか。ここは小屋掛けの居酒屋さん。みな頬被りをしていますから、寒さが厳しい日なんでしょうね。こういうときの熱燗の旨さはまた格別。しかも昼間っから飲むってのが、いいじゃないですか。ほら、踊り出しているお兄さんもいます。

寺社の境内で堂々と飲酒……このおおらかさが江戸文化のいいところですね。

お江戸で人気のお酒は、上方からの下り酒。関東で造られた地廻り酒もあるにはあり、浅草寺雷門前の「山屋」という居酒屋では、隅田川の水で造ったその名も“隅田川”を売り出していたものの、質・量・人気ともに、下り酒にはかなわなかったようです。江戸後期には年間100万樽という量の下り酒が樽廻船(たるかいせん:大坂から江戸へ、主に酒樽を運んだ船)を使って江戸に運び込まれています。この絵には“男山(おとこやま)”と見えますから、伊丹からの下り酒を提供しているお店の様子です(「男山」は現在も、北海道は旭川で江戸の伝統を受け継いだ酒造りの製法で生産されています。辛めのスッキリした味わい)。こういった簡易な屋台では一合8~12文、現在でいうと160~240円程度のワンカップ感覚で、気軽にお酒を楽しめたんですね。

※この文章は「お江戸いいね!~I Like EDO」の「ほーりー 江戸を斬る!」を加筆修正したものです。

浅草のいま④

仲見世を横にそれ、伝法寺通りを通り抜け、少し歩けば「六区通り」に出ます。榎本健一、田谷力三(たや・りきぞう)、萩本欽一ら浅草が生んだスターの看板が並ぶ100メートルほどの小さな通り。突き当たりには浅草演芸ホールが見えます。

明治6年(1873)東京府に接収された浅草寺一帯は浅草公園と指定され、公園は一~七区に分けられました。なかでも六区は「見世物小屋が並び、芸人や観客なども集まり、のちに『ロック』は娯楽街浅草の代名詞」(「日本歴史地名大系」)となりました。太平洋戦争後、まもなく六区は再開。映画館、演芸場、ストリップ劇場などが林立し、大衆娯楽の街として栄えました。いったんほかの街に客足を奪われたものの、近年の再開発や観光客の急増で、このあたりも人が戻ってきたようで、平日の昼間というのにたくさんの人が歩いていました。

(写真・文/ジャパンナレッジ編集部)

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『江戸名所図会』とは

江戸時代を代表する地誌で、江戸名所の集大成と評される、江戸後期の"ガイドブック"。斎藤幸雄・幸孝・幸成(月岑)の親子三代が手がけた大事業で、天保5(1834)年と天保7(1836)年の二度に分け、7巻20冊が刊行。1000を数える項目には、江戸はもちろん、現在の神奈川、千葉、埼玉の名所も含まれる。絵師長谷川雪旦の742点の挿画では、神社仏閣や景勝地などの実地調査に基づいた俯瞰図や、生活風俗に関係する事柄の詳細で写実的な描写が楽しめる。歴史や風俗資料としても活用されている。

プロフィール

堀口茉純(ほりぐち・ますみ)

堀口茉純(ほりぐちますみ)

江戸にくわしすぎるタレント=お江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーとして注目を集め、執筆、イベント、講演活動にも精力的に取り組む。初めての著書の『TOKUGAWA15』(草思社)は歴史書籍としては異例のロングセラーに。近刊は『江戸名所図会』など近世の版本史料を駆使して江戸人の生活実態に迫る『江戸はスゴイ~世界一幸せな人びとの浮世ぐらし~』(PHP新書)。NHKラジオ第1『DJ日本史』、TOKYO MX『週末ハッ ピーライフ!お江戸に恋して』にレギュラー出演中。

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目次

日本橋編

深川編

向島編

上野編

浅草編