「三度の飯より江戸が好き」というお江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーこと堀口茉純さんが、江戸後期の地誌『江戸名所図会』を江戸の暮らしという視点から読み解くコーナー。江戸っ子のリアルな生活、ぜひ体感してみてください。
江戸時代は平均気温が現在より5℃以上低くかったといいます。雪がふれば30センチ以上積もる事がザラ。1メートル以上積もることもありました!
江戸人にとっては四季の移ろいも楽しみの一つ。特に二軒茶屋には多くの雪見客が訪れました。初雪の頃は江戸の喧騒に疲れた人々が集い、酒を酌み交わしながら閑雅な風情を楽しんだといいます。
絵をよく見ると、雪化粧の庭園が見渡せる上座に座っているのは関取風の男性。富岡八幡宮は勧進相撲発祥の地ということもあり、力士を接待するには最適の場所だったようですね。手にしているのは武蔵野と呼ばれる大盃。名前の由来は、武蔵野の野は、見つくされぬ(程広い)→のみつくされぬ→飲み尽くされぬという洒落だそうです。今でも優勝力士は朱塗りの武蔵野で日本酒をぐいっとやりますね。
奥の男性二人は太鼓持ちの男芸者でしょう、当時の座敷遊びにはなくてはならない盛り上げ役でした。「イッキ! イッキ!」とコールをかけているのでしょうか? 下座に座りながら一番風格があるのが、おそらくこの宴席のパトロンである豪商でしょう。その横にはコンパニオン役の辰巳芸者の面々が。関取のイッキに興味深々です。
高級料亭の料理は大皿で出るので小皿に取り分けて食べました。テーブルがないので、基本的にお盆に乗せて畳の上に直に置きます。
しかし、冷静に考えたら、これだけ雪が積もったら、絶対寒いですよね。雪見の席なので四方開け放っていますから、体感的には冷蔵庫の中で宴会しているような感じではないでしょうか。大きな火鉢が一つありますが、有無を言わさず、パトロンのおじさんが独占していますし。しかし、みんなそれほど厚着をしている様子がありません(パトロンのおじさん以外)。よく見ると、御膳を運んでいる女中さんは裸足です! 寒い時は寒さまでも楽しむというのが江戸人流というところでしょうか。
江戸勧進相撲発祥の地として知られる富岡八幡宮。貞享元年(1684)から、春と秋の2場所の勧進相撲が行なわれました。八幡さまの大鳥居を越えて少し歩くと右手に大関力士碑、そして御本殿の裏手には明治33年(1900)に建てられた横綱力士碑があります。横綱力士碑は高さ3.5メートル、幅3メートル、重さ20トンと、巨大。碑には初代明石志賀之助から横綱の名前がずらり。もちろん2017年1月に横綱に昇進したキセノンこと稀勢の里関の名もきちんと刻まれていました。
ジャパンナレッジは約1900冊以上(総額850万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。
(2024年5月時点)
江戸時代を代表する地誌で、江戸名所の集大成と評される、江戸後期の"ガイドブック"。斎藤幸雄・幸孝・幸成(月岑)の親子三代が手がけた大事業で、天保5(1834)年と天保7(1836)年の二度に分け、7巻20冊が刊行。1000を数える項目には、江戸はもちろん、現在の神奈川、千葉、埼玉の名所も含まれる。絵師長谷川雪旦の742点の挿画では、神社仏閣や景勝地などの実地調査に基づいた俯瞰図や、生活風俗に関係する事柄の詳細で写実的な描写が楽しめる。歴史や風俗資料としても活用されている。
江戸にくわしすぎるタレント=お江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーとして注目を集め、執筆、イベント、講演活動にも精力的に取り組む。初めての著書の『TOKUGAWA15』(草思社)は歴史書籍としては異例のロングセラーに。近刊は『江戸名所図会』など近世の版本史料を駆使して江戸人の生活実態に迫る『江戸はスゴイ~世界一幸せな人びとの浮世ぐらし~』(PHP新書)。NHKラジオ第1『DJ日本史』、TOKYO MX『週末ハッ ピーライフ!お江戸に恋して』にレギュラー出演中。