堀口茉純のやっぱり江戸が好き!堀口茉純のやっぱり江戸が好き!

「三度の飯より江戸が好き」というお江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーこと堀口茉純さんが、江戸後期の地誌『江戸名所図会』を江戸の暮らしという視点から読み解くコーナー。江戸っ子のリアルな生活、ぜひ体感してみてください。

本町 薬種店第一巻 一冊 十七丁

本町三丁目、薬屋の軒先に集うひと

健康オタクだった徳川家康の影響か?!お江戸には沢山の薬種店が立ち並んでいました。江戸時代を通じて、医学、薬学は奨励されています。

本町(ほんちょう)は、徳川家康が城下の町人地作りの際にまず開発に着手した場所。町人地開発の「根本となった町」で、日本橋の中でも屈指の老舗が軒を連ねました。特に本町三丁目は薬種店、つまり漢方を扱う店が多かったようです。

描かれているのはこの界隈に4軒の系列店をだしていた当時の有名薬種店・鰯屋の店先。路上に面して屋根つきの立派な立看板がでていますね。これは簡単な作りの立看板とは区別され、官許が必要な格式ある看板の形でした。夜間や雨の日は看板に覆いをかけたそうです。“家伝秘法 調痢丸”(ちょうりがん)とありますが、これが鰯屋の文字通り看板商品。腹下し等、胃腸周りの疾患に効く妙薬として人気がありました。

健康保険のなかった当時、医者にかかれたのは一部のお金持ちのみ。庶民は日頃から漢方などで体調を整えることを心掛けたと言います。セルフメデュケーションの時代だったんですね!

店の中では僧侶らしき客と接客中のようです。草履を脱いで片足で胡坐をかいたような、なんだかお行儀の悪い格好になっていますが、実はこれ、江戸っ子男子に典型的な腰の掛け方。当時はどの店に行っても、テーブルがなかったので、ちょっと腰かけるという時は、片足を挙げて、座敷をテーブル代わりに用事を済ませました。

        

店先で目を引くのが三味線を抱えた女性二人組。彼女たちは女太夫という女性芸能者で、こうして門口に立って弾き語りをして物乞いをして歩いていました。美意識の高さがウリで胴にさらしを巻いて補正をしてから着付けをして、粋な姿を保っていたそうです。有線放送や、CDなどのBGMがない当時、彼女達は商店街の華やかさを演出するために欠かすことのできない存在だったでしょうね。

※この文章は「お江戸いいね!~I Like EDO」の「ほーりー 江戸を斬る!」を加筆修正したものです。

日本橋のいま④

日本橋本町は呉服屋や薬屋が建ち並ぶ、江戸を代表する町でした。現在の本町は伊勢町、岩附(いわつき)町、大伝馬町などの全部または一部を合併し、大きな町になっています。さて写真は本町3丁目(旧大伝馬町)にある、宝田恵比寿神社。10月19日、20日に行なわれる「べったら市」が有名です。20日の恵比寿講にお供えするため、前日の19日に門前に市が立ち、神棚や三方(さんぽう、供物台のこと)、魚河岸で残った干魚などが売られるようになったのが起源。明治以後、べったら漬けのみを売る市になりました。神社の隣にできたクラフトビールが飲めるコミュニティスペースには「ベッタラスタンド」という名前がついています。

(写真・文/ジャパンナレッジ編集部)

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『江戸名所図会』とは

江戸時代を代表する地誌で、江戸名所の集大成と評される、江戸後期の"ガイドブック"。斎藤幸雄・幸孝・幸成(月岑)の親子三代が手がけた大事業で、天保5(1834)年と天保7(1836)年の二度に分け、7巻20冊が刊行。1000を数える項目には、江戸はもちろん、現在の神奈川、千葉、埼玉の名所も含まれる。絵師長谷川雪旦の742点の挿画では、神社仏閣や景勝地などの実地調査に基づいた俯瞰図や、生活風俗に関係する事柄の詳細で写実的な描写が楽しめる。歴史や風俗資料としても活用されている。

プロフィール

堀口茉純(ほりぐち・ますみ)

堀口茉純(ほりぐちますみ)

江戸にくわしすぎるタレント=お江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーとして注目を集め、執筆、イベント、講演活動にも精力的に取り組む。初めての著書の『TOKUGAWA15』(草思社)は歴史書籍としては異例のロングセラーに。近刊は『江戸名所図会』など近世の版本史料を駆使して江戸人の生活実態に迫る『江戸はスゴイ~世界一幸せな人びとの浮世ぐらし~』(PHP新書)。NHKラジオ第1『DJ日本史』、TOKYO MX『週末ハッ ピーライフ!お江戸に恋して』にレギュラー出演中。

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目次

日本橋編

深川編

向島編

上野編

浅草編