堀口茉純のやっぱり江戸が好き!堀口茉純のやっぱり江戸が好き!

「三度の飯より江戸が好き」というお江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーこと堀口茉純さんが、江戸後期の地誌『江戸名所図会』を江戸の暮らしという視点から読み解くコーナー。江戸っ子のリアルな生活、ぜひ体感してみてください。

五百羅漢第七巻 十八冊 三十四丁

坊さんだらけのアミューズメントパーク

ギャー!お坊さんが大量に?! ブッタの弟子たちを表したという五百羅漢像。『江戸名所図会』では等身大の羅漢像群の展示が見開き5ページにわたって紹介されています。

天恩山五百大阿羅漢禅寺は元禄8(1695)年に創建された黄檗宗(おうばくしゅう)の寺で、等身大の五百三十あまりの羅漢が安置されていました。『江戸名所図会』全編を通して、最も筆を尽くして解説・紹介されているのがこの五百羅漢寺です。

堂内には所狭しと羅漢像が並んでおり、今にも動き出しそうな迫力があります。順路は高低差をつけていろんな角度から眺めることができるように組まれていて、ゆっくり参拝する人用の通路と、旅人が土足で参拝できるような通路が二本あって、それぞれが交差しないような構造になっています。

参詣人の顔ぶれを見ると、女性グループや地方から出てきた商人風の男性、親子連れ、同業者であろうお坊さんの姿、老若男女を問わず様々な人々の姿が見えます。よく見るといたるところにお賽銭箱が見えますし、この次のページには指し棒をもったガイド役と見られる人の姿もありますから、観光地としてかなり整備されていたようですね。

通路はじっくり見る派用とサッと見る派用の二本に分かれています。よく見るとどれ一つ同じ格好の像がなく、まるで生きているよう! 自分にそっくりな像が見つかるかも?!

境内には三匝堂(さざいどう)という建物内部がらせん構造になった三層の堂があり、その頂上からの見晴らしのよさも有名でした。

『江戸名所図会』での破格の扱いを見ても、まさに江戸を代表するようなアミューズメントパークのような場所だったんです。

※この文章は「お江戸いいね!~I Like EDO」の「ほーりー 江戸を斬る!」を加筆修正したものです。

深川のいま⑥

都営新宿線西大島駅から地上にあがると、江東区総合区民センターがあり、その前にちょこんと五百羅漢跡の石標柱があります。これは昭和33(1958)年につくられたもので、この地に五百大阿羅漢禅寺があったことを示しています。寺は明治維新とともに没落。明治20(1887)年、本所緑町(現墨田区)に移り、さらに同41(1908)年、荏原(えばら)郡目黒町大字下目黒(現目黒区)に移りました。

(写真・文/ジャパンナレッジ編集部)

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『江戸名所図会』とは

江戸時代を代表する地誌で、江戸名所の集大成と評される、江戸後期の"ガイドブック"。斎藤幸雄・幸孝・幸成(月岑)の親子三代が手がけた大事業で、天保5(1834)年と天保7(1836)年の二度に分け、7巻20冊が刊行。1000を数える項目には、江戸はもちろん、現在の神奈川、千葉、埼玉の名所も含まれる。絵師長谷川雪旦の742点の挿画では、神社仏閣や景勝地などの実地調査に基づいた俯瞰図や、生活風俗に関係する事柄の詳細で写実的な描写が楽しめる。歴史や風俗資料としても活用されている。

プロフィール

堀口茉純(ほりぐち・ますみ)

堀口茉純(ほりぐちますみ)

江戸にくわしすぎるタレント=お江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーとして注目を集め、執筆、イベント、講演活動にも精力的に取り組む。初めての著書の『TOKUGAWA15』(草思社)は歴史書籍としては異例のロングセラーに。近刊は『江戸名所図会』など近世の版本史料を駆使して江戸人の生活実態に迫る『江戸はスゴイ~世界一幸せな人びとの浮世ぐらし~』(PHP新書)。NHKラジオ第1『DJ日本史』、TOKYO MX『週末ハッ ピーライフ!お江戸に恋して』にレギュラー出演中。

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目次

日本橋編

深川編

向島編

上野編

浅草編