堀口茉純のやっぱり江戸が好き!堀口茉純のやっぱり江戸が好き!

「三度の飯より江戸が好き」というお江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーこと堀口茉純さんが、江戸後期の地誌『江戸名所図会』を江戸の暮らしという視点から読み解くコーナー。江戸っ子のリアルな生活、ぜひ体感してみてください。

隅田川東岸 木母寺 梅若塚 水神宮 若宮八幡 其の一&其の二 第七巻 十九冊 百、百一丁

徳川将軍家と関わりの深いお寺

木母寺周辺は古代の街道が通り“隅田宿”という宿場があったとされる場所。謡曲や歌舞伎で有名な「梅若伝説」の舞台にもなった、徳川時代以前からの江戸名所でした!

木母寺(もくぼじ)は古くから隅田川沿いの名所であったため、この辺りを治める、時の権力者の帰依を集めてきました。なかでも徳川家康は江戸に入府するとまず木母寺に参拝し、その後も寄進を続けたことから、徳川将軍家と非常に関わりが深くなります。3代将軍・家光の時代には境内に“隅田川御殿”が建ちました。

“隅田川御殿”は将軍や高位の大名が鷹狩などの際に休息をとる別荘のような場所で、5代将軍・綱吉のときに「生類憐みの令」が出され鷹狩が禁止になると一旦廃れますが、その跡地にちょっと気の利いた料理を出す“茶屋”が三軒建ち、鷹狩を復活させた8代将軍・吉宗などは度々この地を訪れました。吉宗が庶民の娯楽の地をつくろうと植樹した桜並木も、この木母寺を拠点に寺島村(現在の白髭橋の辺り)まで植えられたそうです。隅田川の桜というと吾妻橋の辺りのイメージが強いのですが、当時はこの木母寺周辺が桜並木の名所だったんですね。

境内の料理茶屋からは隅田川から引き込んだ内川の流れが楽しめます。風光明媚~。

また、当時木母寺の北側を流れていた内川を隔てた対岸には“御前栽畑(おんせんざいばたけ)”という、季節の野菜を将軍家に献上するための畑がつくられ、手入れされた松の木立がとても美しかったといいます。



隅田川を守る水神様とは

この辺りは隅田川の度重なる水害でも一度も水没することがなかったため、別名“浮島宮(うきしまのみや)”とも呼ばれ、水神様が守っていると信じられていました。船頭さんや、水神が拡大解釈され、水商売の神として(←そんなばかな!(笑))玄人の女性たちからも絶大な信仰を集めたそうですよ。

水運の町だった江戸にとって水神様はとても身近な守り神。水神=水商売の神様という拡大解釈で(笑)花柳界の女性たちからも信仰を集めました。

しかし水害から逃れてきた浮島の宮の社殿も、安政2年10月2日(1855年11月11日)の安政の江戸地震(マグニチュード6.9の直下型地震。倒壊家屋およそ1万5千戸、死者1万人ともいわれる)で全壊。水神の森として親しまれた閑静な景色は一変してしまいました。社殿の再建は3年後の安政5年のこと。この辺りの復興がずいぶん遅れていたことがわかります。

ただ、その後の関東大震災や戦災は耐え抜き、現在も幕末に再建した時の姿のまま、隅田川神社の本殿としてひっそりと佇んでいます。

※この文章は「お江戸いいね!~I Like EDO」の「ほーりー 江戸を斬る!」を加筆修正したものです。

向島のいま④

現在も隅田川を守る“水神様”、隅田川神社。お参りしようと社殿に向かえば、両脇には狛犬ならぬ、狛亀が! 撮影に訪れたのは鏡開きの1月11日。青空のもと、境内の梅の花もどんどんほころび始めていました。
さて荒川と隅田川に挟まれたこの地域は「江東デルタ地区」と呼ばれる海抜ゼロメートル地帯。本文にもあるように、地震などが起これば大災害となるといわれています。周辺の東白鬚公園は昭和61(1986)年に都の防災拠点第一号としてオープン。非常時には10万人の命を守る避難場所となるそうです。公園の中ほどにあるシンボルタワーは江戸の火消しの纏をイメージしてつくられたそうです。

(写真・文/ジャパンナレッジ編集部)

ジャパンナレッジとは 辞書・事典を中心にした知識源から知りたいことにいち早く到達するためのデータベースです。 収録辞書・事典80以上 総項目数480万以上 総文字数16億

ジャパンナレッジは約1900冊以上(総額850万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。 (2024年5月時点)

ジャパンナレッジ Personal についてもっと詳しく見る

会員ID、パスワードをお忘れの方

『江戸名所図会』とは

江戸時代を代表する地誌で、江戸名所の集大成と評される、江戸後期の"ガイドブック"。斎藤幸雄・幸孝・幸成(月岑)の親子三代が手がけた大事業で、天保5(1834)年と天保7(1836)年の二度に分け、7巻20冊が刊行。1000を数える項目には、江戸はもちろん、現在の神奈川、千葉、埼玉の名所も含まれる。絵師長谷川雪旦の742点の挿画では、神社仏閣や景勝地などの実地調査に基づいた俯瞰図や、生活風俗に関係する事柄の詳細で写実的な描写が楽しめる。歴史や風俗資料としても活用されている。

プロフィール

堀口茉純(ほりぐち・ますみ)

堀口茉純(ほりぐちますみ)

江戸にくわしすぎるタレント=お江戸ル(お江戸のアイドル!?)ほーりーとして注目を集め、執筆、イベント、講演活動にも精力的に取り組む。初めての著書の『TOKUGAWA15』(草思社)は歴史書籍としては異例のロングセラーに。近刊は『江戸名所図会』など近世の版本史料を駆使して江戸人の生活実態に迫る『江戸はスゴイ~世界一幸せな人びとの浮世ぐらし~』(PHP新書)。NHKラジオ第1『DJ日本史』、TOKYO MX『週末ハッ ピーライフ!お江戸に恋して』にレギュラー出演中。

吉原はスゴイ~江戸文化を育んだ魅惑の遊郭~

堀口茉純最新刊!

吉原はスゴイ
~江戸文化を育んだ魅惑の遊郭~

PHP新書
940円(税別)

目次

日本橋編

深川編

向島編

上野編

浅草編