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episode.3
総索引語約50万を誇る、日本最大級の百科事典『ニッポニカ』。とはいえ、百科事典はほかにもあり、現にジャパンナレッジには『世界大百科事典』も収録されている。いったい『ニッポニカ』の特長とは何なのだろうか? 編集長の吉田兼一さんに伺う第3回目。

世界大百科事典との違い



 ジャパンナレッジに収録されている『改訂新版 世界大百科事典』と『日本大百科全書(ニッポニカ)』を比較してみよう。

● ニッポニカ
総索引語/約50万、見出し語項目/約14万、文字数/約7600万、書籍版刊行日/1994年1月(改訂版)
● 世界大百科事典
総索引語/約42万、見出し語項目/約9万、文字数/約6500万、書籍版刊行日/2014年12月(改訂新版第6刷)

『改訂新版 世界大百科事典』は、2007年9月に20年ぶりに全面改訂されたが、収録版は最新の第6刷。一方の『ニッポニカ』は、ベースは94年版だが、毎月、改訂を行なっている。どちらも一流執筆陣を擁し、お互いに引けをとらない内容だ。

「いちばんの大きな違いは、『ニッポニカ』は従来の百科事典になかった動詞項目を立てていることです。たとえば【歩く】。【歩くことの意義】に始まり、【歩くメカニズム】、さらには【土ふまずの効用】や【歩くことと健康】まで、6つの画像とともに、1万字ほどで詳細に説明しています」(吉田さん、以下同)

 実際、【歩く】を引くと、こうある。

〈歩くことは動物にとって日常生活上もっとも身近な行動様式であるといえよう。「這(は)えば立て、立てば歩めの親心」というが、私たちは「歩く」ということの意義をもっと深く知らねばなるまい〉

 百科事典を引いて知識を得るだけでなく、『ニッポニカ』は一歩踏み込んで、利用者が、〈意義をもっと深く知〉るきっかけとなることをねらっているのである。

 ほかにも、「走る」、「飛ぶ」、「泳ぐ」、「争う」など、動詞項目を数多く掲載する。人間行動学、生態学といった新しい学問の知見を生かすための立項だった。



トランプ大統領と本田圭佑選手



『ニッポニカ』はいわば、“読む”百科事典なのである。“知る”だけならば、国語辞書で事足りるかもしれない。だがその先の知的欲求を満足させ、かつ思考を広げ、深める役割を担うのが『ニッポニカ』なのだ。

 たとえば、【新聞】という項目。国語辞書『デジタル大辞泉』(ジャパンナレッジ)で引くと、一番目にこうある。

〈社会の出来事の報道や論評を、広い読者を対象に伝達するための定期刊行物。日刊が多いが、週刊・旬刊・月刊などもある。〉

 60文字足らずである。ところが、これを『世界大百科事典』で引くと、一気に増えて約1万7000文字。『ニッポニカ』だとさらに増えて5万字以上となる。また『ニッポニカ』でいちばん文字数の多い【日本】はなんと20万字。これは新書2冊分のボリュームに匹敵する。

 では、新書ではなく、事典を読むメリットは?

「事典の最大の特長は、“色が薄い”ということです。1冊の書物には、著者の主義主張がありますが、さまざまな執筆者が寄稿する事典にはそれがない。淡々と事実を積み重ねているところに、事典の強みがあります」

 現在の『ニッポニカ』には、WEBならではの強みもある。

「書籍版と異なり、ネット上で展開する現在の『ニッポニカ』は、改訂の自由度が増しました。たとえば、これまで人名に関しては、故人や引退した人など、評価の定まった人物しか掲載していませんでしたが、今の『ニッポニカ』には、メジャー・リーグで活躍するイチロー選手やプロサッカーの本田圭佑選手、作家の村上春樹氏やドナルド・トランプ米国大統領も立項されています。より即時性が高くなり、利用者の興味・関心に応えられるようになりました」

『ニッポニカ』は進化を続けている。




ジャパンナレッジ『ニッポニカ』(上)と『世界大百科事典』(下)の「新聞」の項。「見出し」の右側には互いに対応する項目がある場合、相互リンクを表示。2つの百科事典を簡単に見比べることができる。

ジャパンナレッジ『ニッポニカ』コンテンツ案内ページには毎月の更新情報が掲載(画像は2017年10月10日のもの)。

2017年10月に新規立項された「幼保一体化」。このように新規や改訂項目、追加画像などの更新項目から一部抜粋して1年間ジャパンナレッジのコンテンツ案内に公開されている。

総索引語約50万を誇る、日本最大級の百科事典『ニッポニカ』。とはいえ、百科事典はほかにもあり、現にジャパンナレッジには『世界大百科事典』も収録されている。いったい『ニッポニカ』の特長とは何なのだろうか? 編集長の吉田兼一さんに伺う第3回目。

世界大百科事典との違い



 ジャパンナレッジに収録されている『改訂新版 世界大百科事典』と『日本大百科全書(ニッポニカ)』を比較してみよう。

● ニッポニカ
総索引語/約50万、見出し語項目/約14万、文字数/約7600万、書籍版刊行日/1994年1月(改訂版)
● 世界大百科事典
総索引語/約42万、見出し語項目/約9万、文字数/約6500万、書籍版刊行日/2014年12月(改訂新版第6刷)

『改訂新版 世界大百科事典』は、2007年9月に20年ぶりに全面改訂されたが、収録版は最新の第6刷。一方の『ニッポニカ』は、ベースは94年版だが、毎月、改訂を行なっている。どちらも一流執筆陣を擁し、お互いに引けをとらない内容だ。

「いちばんの大きな違いは、『ニッポニカ』は従来の百科事典になかった動詞項目を立てていることです。たとえば【歩く】。【歩くことの意義】に始まり、【歩くメカニズム】、さらには【土ふまずの効用】や【歩くことと健康】まで、6つの画像とともに、1万字ほどで詳細に説明しています」(吉田さん、以下同)

 実際、【歩く】を引くと、こうある。

〈歩くことは動物にとって日常生活上もっとも身近な行動様式であるといえよう。「這(は)えば立て、立てば歩めの親心」というが、私たちは「歩く」ということの意義をもっと深く知らねばなるまい〉

 百科事典を引いて知識を得るだけでなく、『ニッポニカ』は一歩踏み込んで、利用者が、〈意義をもっと深く知〉るきっかけとなることをねらっているのである。

 ほかにも、「走る」、「飛ぶ」、「泳ぐ」、「争う」など、動詞項目を数多く掲載する。人間行動学、生態学といった新しい学問の知見を生かすための立項だった。



トランプ大統領と本田圭佑選手



『ニッポニカ』はいわば、“読む”百科事典なのである。“知る”だけならば、国語辞書で事足りるかもしれない。だがその先の知的欲求を満足させ、かつ思考を広げ、深める役割を担うのが『ニッポニカ』なのだ。

 たとえば、【新聞】という項目。国語辞書『デジタル大辞泉』(ジャパンナレッジ)で引くと、一番目にこうある。

〈社会の出来事の報道や論評を、広い読者を対象に伝達するための定期刊行物。日刊が多いが、週刊・旬刊・月刊などもある。〉

 60文字足らずである。ところが、これを『世界大百科事典』で引くと、一気に増えて約1万7000文字。『ニッポニカ』だとさらに増えて5万字以上となる。また『ニッポニカ』でいちばん文字数の多い【日本】はなんと20万字。これは新書2冊分のボリュームに匹敵する。

 では、新書ではなく、事典を読むメリットは?

「事典の最大の特長は、“色が薄い”ということです。1冊の書物には、著者の主義主張がありますが、さまざまな執筆者が寄稿する事典にはそれがない。淡々と事実を積み重ねているところに、事典の強みがあります」

 現在の『ニッポニカ』には、WEBならではの強みもある。

「書籍版と異なり、ネット上で展開する現在の『ニッポニカ』は、改訂の自由度が増しました。たとえば、これまで人名に関しては、故人や引退した人など、評価の定まった人物しか掲載していませんでしたが、今の『ニッポニカ』には、メジャー・リーグで活躍するイチロー選手やプロサッカーの本田圭佑選手、作家の村上春樹氏やドナルド・トランプ米国大統領も立項されています。より即時性が高くなり、利用者の興味・関心に応えられるようになりました」

『ニッポニカ』は進化を続けている。




吉田兼一(よしだ・けんいち) 吉田兼一(よしだ・けんいち)

1963年石川県生まれ。小学館出版局デジタルリファレンス編集長。86年小学館入社後、『女性セブン』に配属。その後、『CanCam』『週刊ポスト』の雑誌編集を担当。文庫編集部、国語辞典編集部を経て、現職。担当した辞事典は『例解学習国語辞典』『小学館百科大事典きっずジャポニカ新版』など。

桑島修一(くわじま・しゅういち) 桑島修一(くわじま・しゅういち)

1956年福島県生まれ。小学館クリエイティブ・データ編集室専任プロデューサー。『ニッポニカ』編集の進行・校正担当。81年校正・校閲会社の三友社(現、小学館クリエイティブ)に入社。『ニッポニカ』は94年刊行の補巻の作成作業より携わっている。




中村英俊(なかむら・ひでとし) 中村英俊(なかむら・ひでとし)

1960年福島県生まれ。『ニッポニカ』メディア(写真・図版)担当。83年の書籍版『日本大百科全書(ニッポニカ)』の始動と同時に、当時所属していた編集プロダクションで「科学技術・工学関係」の写真・図版担当として百科事典編集に携わる。一時、小学館の仕事を離れるが、98年のCD-ROM化にあたり、フリーランスとして編集チームに復帰、現在に至る。