第104回
「他人事」を何と読むか?
2012年04月16日
前回(第103回)「他山の石とせず」という間違った言い方が広まっていて、「他人事」の意味で使われているようだと書いた。実はこの「他人事」にあえて読み仮名を付けなかったのだが、皆さんはこの語を何と読んでいるであろうか。
そのまま素直に読めば「たにんごと」。だが、伝統的な読み方は「ひとごと」なのである。
「ひとごと」は『日国』によれば、平安時代から用例が見られる(『紫式部日記』)。それ以降の例も、軍記物の『曾我物語』(南北朝頃)、井原西鶴の浮世草子『懐硯(ふところすずり)』(1687)、谷崎潤一郎の『蓼喰ふ虫』(1928~29)などが引用されている。そして、「ひとごと」の表記も「人こと」「人事」「他人事」と様々である。
『蓼喰ふ虫』は「他人事」で「ひとごと」と読ませているが、「他人」を「ひと」と読ませる例は、江戸時代後期から見られる。たとえば、為永春水(ためながしゅんすい)の人情本の代表作『春色梅児誉美(しゅんしょくうめごよみ)』(1832~33)に使用例がある。
また、単に「他」と書いて「ひと」と読ませている式亭三馬の滑稽本『浮世床』(1813~23)のような例もある。
推測の域を出ないのだが、「ひとごと」は古くは「人ごと」「人事」などと書かれていたが、江戸後期に「他人」と書いて「ひと」と読ませるようになったために「他人事」という表記が生まれ、さらにこの「他人事」を「たにんごと」と読むようになったのではないか。つまり、「たにんごと」の読みは比較的新しい言い方だと考えられる。
このようなこともあってテレビ・ラジオでは「たにんごと」とは言わないようにしているようだ。また、「常用漢字表」による限り「他人」を「ひと」とは読めないので、新聞は「他人事」とは書かず、「人ごと」「ひとごと」、テレビは「ひとごと」と書くようにしている。新聞やテレビ・ラジオで「人事」を使わないのは「じんじ」と紛らわしいからだと思われる。
そのまま素直に読めば「たにんごと」。だが、伝統的な読み方は「ひとごと」なのである。
「ひとごと」は『日国』によれば、平安時代から用例が見られる(『紫式部日記』)。それ以降の例も、軍記物の『曾我物語』(南北朝頃)、井原西鶴の浮世草子『懐硯(ふところすずり)』(1687)、谷崎潤一郎の『蓼喰ふ虫』(1928~29)などが引用されている。そして、「ひとごと」の表記も「人こと」「人事」「他人事」と様々である。
『蓼喰ふ虫』は「他人事」で「ひとごと」と読ませているが、「他人」を「ひと」と読ませる例は、江戸時代後期から見られる。たとえば、為永春水(ためながしゅんすい)の人情本の代表作『春色梅児誉美(しゅんしょくうめごよみ)』(1832~33)に使用例がある。
また、単に「他」と書いて「ひと」と読ませている式亭三馬の滑稽本『浮世床』(1813~23)のような例もある。
推測の域を出ないのだが、「ひとごと」は古くは「人ごと」「人事」などと書かれていたが、江戸後期に「他人」と書いて「ひと」と読ませるようになったために「他人事」という表記が生まれ、さらにこの「他人事」を「たにんごと」と読むようになったのではないか。つまり、「たにんごと」の読みは比較的新しい言い方だと考えられる。
このようなこともあってテレビ・ラジオでは「たにんごと」とは言わないようにしているようだ。また、「常用漢字表」による限り「他人」を「ひと」とは読めないので、新聞は「他人事」とは書かず、「人ごと」「ひとごと」、テレビは「ひとごと」と書くようにしている。新聞やテレビ・ラジオで「人事」を使わないのは「じんじ」と紛らわしいからだと思われる。
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