「存」の読みは辞書編集者泣かせ
2012年09月18日
「脱原発依存」などというときの「依存」だが、皆さんは何と読んでいるだろうか。「いそん」?「いぞん」?NHKのアナウンサーはほぼ間違いなく「いそん」と言っていると思われる。というのはNHKでは「いそん」を第1の読みとしているからだ。だが、一般には「いぞん」の方が浸透しているのではないだろうか。
実は、「いそん」「いぞん」、どちらを使っても間違いではないのである。ナーンだ、それならわざわざこのコラムで取り上げる必要はないではないか、とお思いになった方も大勢いらっしゃるであろう。だが、「存」という漢字には「そん」と「ぞん」のふたつの音があるため、その熟語は辞典では扱いがちょっとやっかいな語なのである。
厳密に言えば「そん」は漢音、「ぞん」は呉音なのだが、字音による意味の違いはないと言ってよい。そのため「そん」と読むか「ぞん」と読むかは熟語によっても違うのである。いちおうの目安としてそれぞれの字音で読まれる熟語を下記に示した。
「そん」と読むもの:存続、存廃、存亡、既存
「ぞん」と読むもの:存念、存命、生存、実存
「そん」「ぞん」どちらでもあるもの:共存、現存、残存
いかがであろうか。この語は自分は違うと思った方も多いのではないだろうか。たとえば、「そん」と読むとされる「既存」などは、「きぞん」派も多いと思う。「そん」「ぞん」どちらでもあるとした熟語も、「きょうぞん」「げんぞん」「ざんぞん」と「ぞん」の方が優勢かもしれない。
辞書の見出しの読みを決める場合、伝統的な読み方を優先すべきか、読者が引きやすい優勢な読みを第1にすべきかいつも悩むのだが、「存」のつく熟語は語によって読みがかなり揺れているので辞典編集者泣かせの語なのである。
実は、「いそん」「いぞん」、どちらを使っても間違いではないのである。ナーンだ、それならわざわざこのコラムで取り上げる必要はないではないか、とお思いになった方も大勢いらっしゃるであろう。だが、「存」という漢字には「そん」と「ぞん」のふたつの音があるため、その熟語は辞典では扱いがちょっとやっかいな語なのである。
厳密に言えば「そん」は漢音、「ぞん」は呉音なのだが、字音による意味の違いはないと言ってよい。そのため「そん」と読むか「ぞん」と読むかは熟語によっても違うのである。いちおうの目安としてそれぞれの字音で読まれる熟語を下記に示した。
「そん」と読むもの:存続、存廃、存亡、既存
「ぞん」と読むもの:存念、存命、生存、実存
「そん」「ぞん」どちらでもあるもの:共存、現存、残存
いかがであろうか。この語は自分は違うと思った方も多いのではないだろうか。たとえば、「そん」と読むとされる「既存」などは、「きぞん」派も多いと思う。「そん」「ぞん」どちらでもあるとした熟語も、「きょうぞん」「げんぞん」「ざんぞん」と「ぞん」の方が優勢かもしれない。
辞書の見出しの読みを決める場合、伝統的な読み方を優先すべきか、読者が引きやすい優勢な読みを第1にすべきかいつも悩むのだが、「存」のつく熟語は語によって読みがかなり揺れているので辞典編集者泣かせの語なのである。
キーワード:



出版社に入りさえすれば、いつかは文芸編集者になれるはず……そんな想いで飛び込んだ会社は、日本屈指の辞書の専門家集団だった──興味深い辞書と日本語話が満載。希少な辞書専門の編集者によるエッセイ。




辞書編集37年の立場から、言葉が生きていることを実証的に解説した『悩ましい国語辞典』の文庫版。五十音順の辞典のつくりで蘊蓄満載のエッセイが楽しめます。
「満面の笑顔」「汚名挽回」「的を得る」……従来誤用とされてきたが、必ずしもそうとは言い切れないものもある。『日本国語大辞典』の元編集長で、辞書一筋37年のことばの達人がことばの結びつきの基本と意外な落とし穴を紹介。
