「2年ぶりに出場」──前回の出場はいつ?
2013年06月17日
読者から「ぶり」という語の使い方について質問を受けた。「何年ぶり」などと言うときの「ぶり」の数え方がよくわからないというのである。
念のために「ぶり」の意味を確認しておく。辞書的な説明をすると、「時間を表す語について、前回と今回との間にそれだけの時間が経過したという意味を表す語」ということになるであろう。
よくスポーツ大会などで「○年ぶりの出場」などという言い方をするが、たとえば2年ぶりと言った場合、前回はいつになるであろうか。「ぶり」は満で数えるのが基本である。従って、今年(2013年)に「2年ぶりの出場」と言った場合は、〔2013年-2年〕でその前の出場は2011年だったことになる。
だが、たとえば2012年に出場して2013年にも出場した場合は、1年たってはいるが、「1年ぶりの出場」とは言わない。これは「ぶり」にはその前の状態が再び起こるという意味ではあるが、年1回しかない催しの場合はその1年の間には出場の機会はないわけだからそう言わないのである。このような場合、ふつうは連続出場といった言い方をする。
ここまでは、読者への基本的な「ぶり」の使い方に関する回答である。
だが、この「ぶり」の使い方が最近どうも揺れているようなのである。蛇足ではあるがそのことに触れておく。
ひとつは、「ぶり」にはそのことが起きることへの期待感が言外に含まれているので、「5年ぶりの大事故」といったような、よくないことには使わないとされてきた。ところが一部の辞典では、「好ましくないことにも使う。」(『明鏡国語辞典 第2版』)という注記が加わったのである。
また、「ぶり」はある程度の時間を経て元の状態が再現されるという意味であるため、「着工以来10年ぶりに完成した」というような元の状態の再現ではない言い方も誤用だとされてきた。だが、NHKの『ことばのハンドブック 第2版』では、期待されている事柄であればこのような言い方も認めているのである。
今後はこの揺れの扱いにも悩まなければならないようだ。
念のために「ぶり」の意味を確認しておく。辞書的な説明をすると、「時間を表す語について、前回と今回との間にそれだけの時間が経過したという意味を表す語」ということになるであろう。
よくスポーツ大会などで「○年ぶりの出場」などという言い方をするが、たとえば2年ぶりと言った場合、前回はいつになるであろうか。「ぶり」は満で数えるのが基本である。従って、今年(2013年)に「2年ぶりの出場」と言った場合は、〔2013年-2年〕でその前の出場は2011年だったことになる。
だが、たとえば2012年に出場して2013年にも出場した場合は、1年たってはいるが、「1年ぶりの出場」とは言わない。これは「ぶり」にはその前の状態が再び起こるという意味ではあるが、年1回しかない催しの場合はその1年の間には出場の機会はないわけだからそう言わないのである。このような場合、ふつうは連続出場といった言い方をする。
ここまでは、読者への基本的な「ぶり」の使い方に関する回答である。
だが、この「ぶり」の使い方が最近どうも揺れているようなのである。蛇足ではあるがそのことに触れておく。
ひとつは、「ぶり」にはそのことが起きることへの期待感が言外に含まれているので、「5年ぶりの大事故」といったような、よくないことには使わないとされてきた。ところが一部の辞典では、「好ましくないことにも使う。」(『明鏡国語辞典 第2版』)という注記が加わったのである。
また、「ぶり」はある程度の時間を経て元の状態が再現されるという意味であるため、「着工以来10年ぶりに完成した」というような元の状態の再現ではない言い方も誤用だとされてきた。だが、NHKの『ことばのハンドブック 第2版』では、期待されている事柄であればこのような言い方も認めているのである。
今後はこの揺れの扱いにも悩まなければならないようだ。
キーワード:



出版社に入りさえすれば、いつかは文芸編集者になれるはず……そんな想いで飛び込んだ会社は、日本屈指の辞書の専門家集団だった──興味深い辞書と日本語話が満載。希少な辞書専門の編集者によるエッセイ。




辞書編集37年の立場から、言葉が生きていることを実証的に解説した『悩ましい国語辞典』の文庫版。五十音順の辞典のつくりで蘊蓄満載のエッセイが楽しめます。
「満面の笑顔」「汚名挽回」「的を得る」……従来誤用とされてきたが、必ずしもそうとは言い切れないものもある。『日本国語大辞典』の元編集長で、辞書一筋37年のことばの達人がことばの結びつきの基本と意外な落とし穴を紹介。
