第177回
「ずくめ」と「づくし」
2013年09月17日
先日、東京都千代田区立日比谷図書文化館で「辞書編集者を悩ませる日本語」というタイトルで講演をする機会があった。講演のあと、おいでくださった方から筆者が答えに窮するようなこんな質問を受けた。
「マツタケずくめの料理」「マツタケづくしの料理」:この場合「ずくめ」「づくし」どちらが正しいのか。
すかさず「『マツタケづくし』ではないですか」と答えたのだが、その質問をなさった方はさらに、共同通信社の『記者ハンドブック』を見ると「マツタケずくめの料理」の方が正しいように読めるとおっしゃるのだ。そして講演会のあとでその方が見せてくださった『記者ハンドブック』を見て、驚いた。
『記者ハンドブック』には以下のように書かれているのである。
「ずくめ」は、
〔その物・事ばかり〕規則ずくめ、(略)マツタケずくめの料理 〔注〕同種類の物をある限り列挙する「…尽くし(づくし)」との混同に注意。
「づくし」は、
〔同種類の物のある限りの列挙〕国尽くし、(略)無い無い尽くし 〔注〕「マツタケずくめの料理」など「その物・事ばかり」を示す「…ずくめ」との混同に注意。
つまり同じ列挙を表しても、「ずくめ」は「同じ物」、「づくし」は「同じ種類」という違いがあるので、食材としてマツタケだけを使った料理の場合は「マツタケずくめの料理」が正解だというのである。一方で、マツタケ、マイタケ、シメジなど、様々なキノコを調理した料理が並ぶ場合は、「キノコづくしの料理」ということになるというのだ。
この『記者ハンドブック』を見る限り、筆者もまた「ずくめ」「づくし」を混同しているひとりということになるわけである。
だが実態はどうであろうか。インターネットで検索してみると、「マツタケづくし」の方が「マツタケずくめ」よりもヒット数は圧倒的に多い。両者の混同はかなり広まっていることがわかる。
この「ずくめ」「づくし」の違いについて指摘をしている国語辞典は、筆者が確認した限りまだひとつも無い。この指摘をしているのは『記者ハンドブック』だけなのである。
自分が曖昧に覚えていたことは確かなのだが、この違いを今後辞書に載せるべきかどうか、判断に迷っている。
「マツタケずくめの料理」「マツタケづくしの料理」:この場合「ずくめ」「づくし」どちらが正しいのか。
すかさず「『マツタケづくし』ではないですか」と答えたのだが、その質問をなさった方はさらに、共同通信社の『記者ハンドブック』を見ると「マツタケずくめの料理」の方が正しいように読めるとおっしゃるのだ。そして講演会のあとでその方が見せてくださった『記者ハンドブック』を見て、驚いた。
『記者ハンドブック』には以下のように書かれているのである。
「ずくめ」は、
〔その物・事ばかり〕規則ずくめ、(略)マツタケずくめの料理 〔注〕同種類の物をある限り列挙する「…尽くし(づくし)」との混同に注意。
「づくし」は、
〔同種類の物のある限りの列挙〕国尽くし、(略)無い無い尽くし 〔注〕「マツタケずくめの料理」など「その物・事ばかり」を示す「…ずくめ」との混同に注意。
つまり同じ列挙を表しても、「ずくめ」は「同じ物」、「づくし」は「同じ種類」という違いがあるので、食材としてマツタケだけを使った料理の場合は「マツタケずくめの料理」が正解だというのである。一方で、マツタケ、マイタケ、シメジなど、様々なキノコを調理した料理が並ぶ場合は、「キノコづくしの料理」ということになるというのだ。
この『記者ハンドブック』を見る限り、筆者もまた「ずくめ」「づくし」を混同しているひとりということになるわけである。
だが実態はどうであろうか。インターネットで検索してみると、「マツタケづくし」の方が「マツタケずくめ」よりもヒット数は圧倒的に多い。両者の混同はかなり広まっていることがわかる。
この「ずくめ」「づくし」の違いについて指摘をしている国語辞典は、筆者が確認した限りまだひとつも無い。この指摘をしているのは『記者ハンドブック』だけなのである。
自分が曖昧に覚えていたことは確かなのだが、この違いを今後辞書に載せるべきかどうか、判断に迷っている。
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