日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。

第179回
「右開き」と「左開き」

 みなさんは「右開き(左開き)の扉」というと、どちら側に開く扉を考えているだろうか。実は、「右開き」と「左開き」についてはかなり混乱があるらしいのだ。
 実際、国民生活センターのホームページを見ると、インターネット通販で、扉の右側が開くタイプの冷蔵庫を買おうと思い、「右開き」と表示されているものを選んだところ、左側が開くタイプが届いてしまったという事例が紹介されている。そのホームページでも説明されているのだが、冷蔵庫を見て「右開き」と言われると、冷蔵庫に向かって「“右側が”開く」とイメージする人がいるらしい。つまり、中味が見えるようになった冷蔵庫本体が右側に来ると思ってしまうようだ。
 だが、メーカーや販売店では「右開き」とは「“右側へ(に)”扉が開く」と説明をしている。つまり「右開き」とは扉が右方向に開くことであり、中が見えるようになった冷蔵庫本体は左側に来るのである。もちろん「左開き」はその逆である。
 これは、書籍の場合も同じことが言える。書籍は、文章の文字組みが縦組みか横組みかで決まるのだが、文章が縦書きなら「右開き」、横書きなら「左開き」となる。縦書きでは文字を読むとき右から左へと視線を動かし、横書きの場合は左から右に動かすことになるので、縦組みは右側を、横組みは左側を綴じることになる。日本語の本は縦組みが多いので、「右開き」の本が多いことになるわけで、それを覚えておけば、「右開き」「左開き」の違いは理解しやすいかもしれない。

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