日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。

第184回
「旅客機」の「客」を何と読むか

 バラエティ番組の中のクイズの答えに納得できないとひどくお怒りの方から、編集部にお電話があった。その番組は大阪の放送局のものなのでもちろん筆者は見ていなかったのだが、「旅客機」を何と読むかという質問の答えとして、「リョカクキ」は○で、「リョカッキ」は×としていたのだそうだ。その方は、自分は「リョカッキ」も正しいと思うので、放送局に「リョカッキ」を×にするのはおかしいという電話をしたらしい。ところがご意見として承っておきますという、いともあっさりした回答だったために納得できず、たまたまいつも使っている辞典が弊社のものだったことから、編集部に電話をしてきたということのようだ。小学館辞典編集部としての見解をお聞きしたいとおっしゃるのである。
 詳しくお話をうかがってみると、ちょっとした因縁に驚かされた。というのはその番組はダウンタウンの浜田さんが司会をしている番組だったからである。このコラムの第144回で、浜田さんが相方の松本さんに、「水族館」「洗濯機」を「スイゾッカン」「センタッキ」と言うのは大阪のおっちゃんみたいだと言っていたという話を取り上げたことがある。
 もちろん浜田さんが間違っているということではない。クイズの問題そのものがおかしいのである。
 第151回でも書いたように、「客(カク)」のように二拍の漢字であとが「ク」となるものは、さらにそのあとにkの音で始まる語が続くと促音化、すなわち、小文字の「ッ」で表記される発音になることがある。つまり、「リョカッキ」も決して間違いではないことになる。実際、同じ放送の世界でもNHKは「リョカクキ」とともに「リョカッキ」も認めている(『NHK日本語発音アクセント辞典』)。
 その方には以上のような説明をしたのだが、「リョカッキ」が間違いであるとしたその放送局の根拠がどこにあるのか、一度聞いてみたいところではある。

キーワード: