「着替える」を何と読むか?
2014年11月24日
「パジャマに着替える」と言うとき、皆さんは「着替える」を何と読んでいるだろうか。「きかえる」だろうか、それとも「きがえる」だろうか。意外に思う方が多いかもしれないが、伝統的な読み方は「きかえる」なのである。
なぜそう言えるのか。いささか専門的な話で恐縮なのだが、2つの語が結合したとき、後にくる語の語頭の清音が濁音になる現象を連濁(れんだく)という。たとえば、「青(あお)」と「空(そら)」で「あおぞら」になったり、「桜(さくら)」と「花(はな)」で「さくらばな」になったりする現象である。だが例外もあって、結合する語がどちらも動詞のときは、連濁は起こりにくくなる。「着替える」も動詞「着る」と動詞「替える」の結合なので、「かえる」は「がえる」とはならないというわけである。
しかし最近はどうだろうか。「きがえる」のほうが広く使われるようになっているのではないか。かく言う私も「きがえる」と言うことのほうが多い気がする。
NHKもこのような傾向を無視できないと考えたのか、アナウンサーがよりどころにしている『ことばのハンドブック 初版』(1992年)では「きかえる」を第一の読み、「きがえる」を第二の読みとしていたのだが、2005年に刊行した第2版では「きがえる」を第一、「きかえる」を第二の読みと逆転させている。これによって「きがえる」が優勢になったのはごく最近の出来事だったことがわかる。
だが、お手元に国語辞典があったら「着替える」を引いてみていただきたい。いかがであろうか。見出し語の語形は「きかえる」としているものがほとんどなのではないだろうか。もしお手元の辞典の見出し語形が「きがえる」になっていたらそれはかなり新しい辞典だと思う。「着替える」に関しては、辞典はかなり保守的だと言えるかもしれない。
なぜそう言えるのか。いささか専門的な話で恐縮なのだが、2つの語が結合したとき、後にくる語の語頭の清音が濁音になる現象を連濁(れんだく)という。たとえば、「青(あお)」と「空(そら)」で「あおぞら」になったり、「桜(さくら)」と「花(はな)」で「さくらばな」になったりする現象である。だが例外もあって、結合する語がどちらも動詞のときは、連濁は起こりにくくなる。「着替える」も動詞「着る」と動詞「替える」の結合なので、「かえる」は「がえる」とはならないというわけである。
しかし最近はどうだろうか。「きがえる」のほうが広く使われるようになっているのではないか。かく言う私も「きがえる」と言うことのほうが多い気がする。
NHKもこのような傾向を無視できないと考えたのか、アナウンサーがよりどころにしている『ことばのハンドブック 初版』(1992年)では「きかえる」を第一の読み、「きがえる」を第二の読みとしていたのだが、2005年に刊行した第2版では「きがえる」を第一、「きかえる」を第二の読みと逆転させている。これによって「きがえる」が優勢になったのはごく最近の出来事だったことがわかる。
だが、お手元に国語辞典があったら「着替える」を引いてみていただきたい。いかがであろうか。見出し語の語形は「きかえる」としているものがほとんどなのではないだろうか。もしお手元の辞典の見出し語形が「きがえる」になっていたらそれはかなり新しい辞典だと思う。「着替える」に関しては、辞典はかなり保守的だと言えるかもしれない。
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