日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。

第26回
「手締め」のやり方も色々ある

 前回の「北信流」で長野では「手締め」の代わりに「万歳三唱」を行うと書いたが、今回は「手締め」の話である。「手締め」とは、物事の決着や成就などを祝って、掛け声とともに大勢が拍子を合わせて手を打つことで、「手打ち」ともいう。一般的なのは「一本締め」でこれは、
  『よーっ(掛け声) シャシャシャン、シャシャシャン、シャシャシャン、シャン』
と手を打つやり方である。これを3回繰り返すと「三本締め」になる。この「三本締め」を本式とするところも多い。
 「一本締め」とよく間違えられるのだが、「一丁締め」というものもある。これは、
  『よーっ・ポン』
と、1回だけ手を打つものである。「ポン」のところがそろわないと何とも間抜けな感じになるので注意が必要である。
 他にも、筆者は直接聞いたことはないのだが、「大阪締め」というのもあるらしい。歌舞伎の『伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)』を「日本戯曲全集」(1928年刊)で見ていたら、「ヤァ、しゃんしゃん、も一つせい、しゃんしゃん、祝うて三度、おしゃんしゃんのしゃん」というのが出てきた。これが「大阪締め」であるらしい。ただこの部分は現在では、親指と人差し指を打ち合わせて、「よよよい、よよよい、よよよいよい」と演ることの方が多いようだ。この「よよよい~」は中村梅之助主演の時代劇「伝七捕物帳」で有名になったので、ご存じの方も大勢いらっしゃるであろう。

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