先日、新しい「常用漢字表」(「改定常用漢字表」)が告示され、社会で使う漢字の目安として実際に使えるようになった。だが辞書を編集している立場からすると、今回の「改定常用漢字表」にはいささか戸惑いを覚える部分が無いわけではない。そのへんのところは別に詳しく書いたので(雑誌「国文学 解釈と鑑賞」2011年1月号)、ここでは具体的にどのような疑問点があるのかをひとつだけ紹介するにとどめておく。
 今回の「常用漢字表」では新たに「小唄」「長唄」などの「唄」の字が追加された。ところが、そこで示された読みは訓の「うた」だけなのである。「唄」は動詞「うたう」とも読めると思うのだが採用されなかった。そのため「うたう」と読めるのは従来の「常用漢字表」同様、「歌」「謡」の2語のままということになる。
 「歌う」にくらべれば「唄う」は使用範囲が狭いという判断があったのかもしれない。だが、「謡う」があるのだから「唄う」も無視しないでほしかった。「改定常用漢字表」準拠の辞典では「唄」に「うた」の読みがあるからといって、「うたう」を勝手に表内訓の扱いにすることはできない。つまり「小唄を唄う」ではなく「小唄をうたう(歌う)」と書かなければならないわけである。
 「唄」の「うた」と「うたう」の差は何だったのか、いまだによくわからない。

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