第395回
「外来語」と「カタカナ語」の違いは?

 今年の9月25日に平成29年度の「国語に関する世論調査」の結果が発表された。そのとき、TBSテレビの朝の情報番組から取材を受け、今回の調査項目にあった「なし崩し」「檄を飛ばす」「ほぼほぼ」などに関して、なぜ従来なかった意味や言い方が生まれたのか、かなりくわしく解説した。ところが発表と同じ日の夕方に、大相撲の貴乃花親方の引退記者会見があったものだから、放送時間の枠が予定の3分の1ほどになってしまい、収録した分もかなりカットされてしまった。
 中には、収録中に時間枠が減らされることがわかり、収録すらできなかったテーマもあった。それが今回取り上げた「外来語」と「カタカナ語」の違いについてである。
 文化庁の調査項目の中に「外来語や外国語などのカタカナ語の意味がわからずに困ることがあるか」というものがあったために、そもそも「外来語」と「カタカナ語」は同じものなのかどうか解説してほしいと、ディレクターさんから頼まれたのである。
 「外来語」と「カタカナ語」の違いに関しては諸説あるのだが、辞書にかかわっている人間としては、一応使い分けをしている。ただそれはあくまでも各辞書独自の考えなので、一般のかたには確かにわかりにくいかもしれない。
 この2語の違いは、2語とも項目のある『デジタル大辞泉』の解説がわかりやすい。

外来語:他の言語から借用し、自国語と同様に使用するようになった語。借用語。日本語では、広義には漢語も含まれるが、狭義には、主として欧米諸国から入ってきた語をいう。現在では一般に片仮名で表記される。[補説]外来語と外国語との区別は主観的なもので、個人によって異なることがある。

カタカナ語:片仮名で表記される語。主に外来語を指すが、和製英語についてもいう。

 つまり、「外来語」と「カタカナ語」を比較して考えた場合、「外来語」は、主として欧米諸国から入ってきた語で、自国語と同様に使用するようになった語ということがポイントである。これに対して、「カタカナ語」は現在の日本で、カタカナで表記される語を指す。「外来語」は「自国語と同様」、すなわち日本語の中に取り込まれて使われることばであるのに対して、「カタカナ語」は普通カタカナで表記される語で、それは必ずしも日本語の中に同化して使われている語ではないということになる。
 この違いはけっこう大きく、それによって「外来語」「カタカナ語」の意味の違いもかなり鮮明になるのではないだろうか。この考え方からすれば、例えば、「ゴールイン」「スキンシップ」「バックミラー」などの「和製英語(日本で英語の単語をもとに、英語らしく作った語)」はカタカナ語ではあっても厳密な意味で外来語とは言えないことになる。また、今回の文化庁の調査にもあった「ガイドライン」「コンソーシアム」「インバウンド」といった語は、確かに日本語に同化しているかと聞かれると疑問である。私もそうであるが、それぞれ「指針」「共同事業体」「訪日外国人旅行者」と日本語で言われた方が理解しやすいのではないだろうか。あくまでも辞書編集者としての私の個人的な意見だが、これらの語は外来語ではなく、カタカナ語と考えられるのである。

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