第464回
「かむり雪」――辞書にどこまで季語を載せるか?

 季語は、俳句などで、四季それぞれの季節感を表すために、句によみこむ語のことである。季題とも呼ばれるが、『日本国語大辞典(日国)』によれば、季語は「短歌雑誌『アカネ』で明治四一年に大須賀乙字が用いたのが最初」(「季語」の語誌)らしい。
 国語辞典の中には、見出し語が季語だった場合、語釈の最後に、その語が季語であるという表示と、新年・春・夏・秋・冬の別を示しているものがある。だがその逆はなく、季語だからといって、見出し語にしていないものも多い。そのため、季語を集めた歳時記には載っていても、国語辞典の見出し語にはなっていない語もけっこうある。
 そんな季語の一つといえそうな、「かむり雪」という季語を最近知った。「かむり」というのは「冠」と書くようで、すべて漢字で書くと「冠雪」になる。「初冠雪」などというときの「冠雪(かんせつ)」で、何かにかぶさるように積もった雪のことをいう。この「冠雪」は当然のことながら、通常の国語辞典に立項されている。ただしこの語は季語ではない。
 そこで「冠」を「かむり」と読ませて、「かむり雪」という季語が作られたのかもしれない。素人考えだが。
 「冠」という漢字は、「かんむり」「かむり」などと読める。「かむり」と読めば、「ゆき」と合わせて5音になっておさまりがいいので、「かむりゆき」と読ませるようになったのだろうか。しかも同じ「冠雪」と書いても、「かんせつ」と「かむりゆき」とでは、漢語、和語の違いからかもしれないが、受ける印象もかなり異なる。前者は気象用語のようで、積もる雪も山頂などの大規模なものをいいそうだし、後者は、樹木の枝や電柱、門柱、塀など、比較的少量で積もった雪をいいそうだ。
 ただ、この「かむり雪」だが、主要な歳時記でこの語を載せているのは、私が調べた限りでは、『カラー図説日本大歳時記』(1981年 講談社)しかない。そこには、「門柱・電柱などに積もって大きく松茸状になると冠雪(かむりゆき)、または雪冠(ゆきかむり)と言う」と説明されている。「雪冠(ゆきかむり)」も季語なのだろう。ただし、どちらの語も例句は示されていない。
 勝手な想像だが、「かむり雪」は比較的最近作られた季語なのかもしれない。そして、「かむり雪」を使った句は存在するものの、歳時記に載せられるものではなかったという事情があったのかもしれない。
 「かむり雪」は俳句の素養のない私でもいいことばだと思うので、できれば『日国』にも載せたいと思う。ただ、例句がないうえに、今のところ一般にも使われていないようなので、現時点では載せにくい。
 もっとも、たとえ例句があったとしても、すぐに載せるわけにはいかないかもしれない。というのも、俳句の例をどこまで辞書の用例として採用するか、実ははっきりとした決まりがないため、著名な俳人の作以外は載せにくいということがあるからである。このことは、辞書の用例をどこまで広げるかということにもかかわる問題で、たとえば、ブログやSNSなどの書き込みは、用例には採用していないのと同じである。
 「かむり雪」を使った、著名な俳人の句をご存じなら、ぜひご教示いただきたい。

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