「確信犯」、間違って使ってませんか?
2011年05月09日
「電車が遅れて会議に出られなかったと言っているけど、あれは確信犯だよね」という言い方をすることがある。だが、この場合の「確信犯」は本来の意味の使い方ではないということをご存じだろうか。
「確信犯」のもともとの意味は、政治的、思想的、宗教的な確信に基づいた義務感や使命感によってなされる犯行のことで、たとえば、思想犯・政治犯などと呼ばれるものがこれにあたる。そもそも「確信犯」とはドイツの法哲学者ラートブルフ(1878―1949)が提唱したもので、日本でも戦前から論議の対象となっている法律的な概念なのである。
ところが、最近ではその正しい意味が忘れ去られてしまい、冒頭の例文のような、犯罪というほど重大な行為とはいえない場合でも用いられるようになってしまったというわけである。平成14(2002)年度の「国語に関する世論調査」でも、50パーセント以上の人が重大な犯罪とはいえない行為についても使うと答えている。
そのため国語辞典でも、本来の意味の他に、悪いことだとわかっていながらあえて行う悪事という意味を付け加えたものも出始めている。
ことばは長い間に本来の意味とは違う意味で使われてしまうことが決してないわけではない。だが、ことばの規範という観点からすればやはり誤用といえるので、辞書をしっかり読んで正しい意味をちゃんと理解したうえで使うようにしたい。
「確信犯」のもともとの意味は、政治的、思想的、宗教的な確信に基づいた義務感や使命感によってなされる犯行のことで、たとえば、思想犯・政治犯などと呼ばれるものがこれにあたる。そもそも「確信犯」とはドイツの法哲学者ラートブルフ(1878―1949)が提唱したもので、日本でも戦前から論議の対象となっている法律的な概念なのである。
ところが、最近ではその正しい意味が忘れ去られてしまい、冒頭の例文のような、犯罪というほど重大な行為とはいえない場合でも用いられるようになってしまったというわけである。平成14(2002)年度の「国語に関する世論調査」でも、50パーセント以上の人が重大な犯罪とはいえない行為についても使うと答えている。
そのため国語辞典でも、本来の意味の他に、悪いことだとわかっていながらあえて行う悪事という意味を付け加えたものも出始めている。
ことばは長い間に本来の意味とは違う意味で使われてしまうことが決してないわけではない。だが、ことばの規範という観点からすればやはり誤用といえるので、辞書をしっかり読んで正しい意味をちゃんと理解したうえで使うようにしたい。
キーワード:



出版社に入りさえすれば、いつかは文芸編集者になれるはず……そんな想いで飛び込んだ会社は、日本屈指の辞書の専門家集団だった──興味深い辞書と日本語話が満載。希少な辞書専門の編集者によるエッセイ。




辞書編集37年の立場から、言葉が生きていることを実証的に解説した『悩ましい国語辞典』の文庫版。五十音順の辞典のつくりで蘊蓄満載のエッセイが楽しめます。
「満面の笑顔」「汚名挽回」「的を得る」……従来誤用とされてきたが、必ずしもそうとは言い切れないものもある。『日本国語大辞典』の元編集長で、辞書一筋37年のことばの達人がことばの結びつきの基本と意外な落とし穴を紹介。
