日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。

第59回
辞典にはさまざまな発見がある
~岡田武史氏と辞書引き~

 辞典編集部の企画で、サッカー日本代表の岡田武史元監督と『「辞書引き学習」のすすめ』(第49回)でご紹介した深谷圭助氏に、「言葉の力」というテーマで対談をお願いした。対談の詳しい内容は「辞書テク」(くわしくはこちら→ http://family.shogakukan.co.jp/kids/jisho/kawaraban/voice/ )というサイトで公開しているので、そちらでお読みいただきたい。
 対談の中で岡田元監督には「辞書引き」を実際に体験していただいた。ぱっと開いたページで気になることばがあったら付せんに書いてそこに貼っていくという、深谷式辞書引き学習のやり方である。
 わずかな時間であったが、元監督が付せんを貼ったことばの中に「馬耳東風」があった。その時は『例解学習国語辞典』という小学生向けの辞典を引いていただいたのだが、そこには「春を告げる東風が吹いてもウマの耳は何とも感じないことから、人の意見や注意などを気にもとめないで、聞き流すこと」と書かれている。元監督は、このことばの意味はもちろん知っていたが、「春を告げる東風が吹いても」ということは知らなかったので気になったということであった。
 確かに「東風」が「春を告げる風」、すなわち「春風」であるということを知らない人は多いのではないか。
 小学生向けの辞典だからといって侮るなかれ。辞典にはさまざまな発見があるのである。
 

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