日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。

第9回
「土耳古」「濠太剌利」「伯剌西爾」は、なぜそう書くようになったのか? 

 以前あるテレビ番組で、番組中に出題したことばの問題について、コメントをして欲しいと頼まれたことがある。タイトルに示したものはその時の問題の一部である。おわかりだろうが、すべて国名の当て字である。順番に「トルコ」「オーストラリア」「ブラジル」となる。ただ、なぜそのように表記するようになったのか説明しろと言われると、これがけっこう難しいのだ。
 「土耳古」……なぜ「ル」が「耳」になるのかわからない。「トルコ」を英語風に読むと「タァールキー」。中国語では耳は「アール」と発音するので中国からきたのかもしれない。
 「濠太剌利」……「濠」の読みは「ゴウ」なので、なぜ「オー」を「濠」と書くのかよくわからない。明治時代初期の小学校の教科書で使われたのが最初らしいということはわかっている。中国語で「濠」は「ハオ」と発音するので、それからきたのかもしれない。
 「伯剌西爾」……「伯」は日本語では「ブ」とは読まないので、中国語に由来するようだが、中国では「伯剌西爾」とは書かないのでよくわからない。ただ、日本では江戸時代から「伯剌西爾」と書いている。
 こうしてみると中国語からきているものが多いようだが、出処が不明なものもけっこうある。ご存じの方はぜひご教示いただきたい。

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