新しい意味を加えても「大丈夫」?
2012年09月03日
理髪店で髪を切り、シャンプーをしてもらっているときのことである。店員さんから「お痒いところはありませんか」と聞かれて「大丈夫です」と答えてしまったのだが、自分で使っておきながら、この「大丈夫」の意味は残念ながら今の国語辞典では説明できないんだよなと考えた。
多くの国語辞典はこの形容動詞の「大丈夫」を、たとえば『日本国語大辞典』などのように、
(1)きわめて丈夫であるさま。ひじょうにしっかりしているさま。
(2)あぶなげのないさま。まちがいないさま。
のふたつの意味に分けて解説している。
だが、筆者が理髪店で使った「大丈夫」はこのふたつの意味では説明できない。「問題ない」といった意味合いである。
この新しい「大丈夫」の扱いが辞書編集者を悩ませているのだ。そんな中で、少数派ながらこの意味に触れる辞典も出てきた。
たとえば、『大辞泉』。補注で、
近年、形容動詞の「大丈夫」を、必要または不要、可または不可、諾または否の意で相手に問いかける、あるいは答える用法が増えている。「重そうですね、持ちましょうか」「いえ、大丈夫です(不要の意)」、「試着したいのですが大丈夫ですか」「はい、大丈夫です(可能、または承諾の意)」など。
と記述している。また、『明鏡国語辞典』第2版は、やはり補注でこの使い方に触れ、「本来は不適切」としている。
自分で何気なく使っているから言うわけではないのだが、従来無かった新しい意味だからといって、筆者には不適切と決めつける勇気はない。むしろこの新しい「大丈夫」が辞書に登録される日も遠くないような気がしているのである。
多くの国語辞典はこの形容動詞の「大丈夫」を、たとえば『日本国語大辞典』などのように、
(1)きわめて丈夫であるさま。ひじょうにしっかりしているさま。
(2)あぶなげのないさま。まちがいないさま。
のふたつの意味に分けて解説している。
だが、筆者が理髪店で使った「大丈夫」はこのふたつの意味では説明できない。「問題ない」といった意味合いである。
この新しい「大丈夫」の扱いが辞書編集者を悩ませているのだ。そんな中で、少数派ながらこの意味に触れる辞典も出てきた。
たとえば、『大辞泉』。補注で、
近年、形容動詞の「大丈夫」を、必要または不要、可または不可、諾または否の意で相手に問いかける、あるいは答える用法が増えている。「重そうですね、持ちましょうか」「いえ、大丈夫です(不要の意)」、「試着したいのですが大丈夫ですか」「はい、大丈夫です(可能、または承諾の意)」など。
と記述している。また、『明鏡国語辞典』第2版は、やはり補注でこの使い方に触れ、「本来は不適切」としている。
自分で何気なく使っているから言うわけではないのだが、従来無かった新しい意味だからといって、筆者には不適切と決めつける勇気はない。むしろこの新しい「大丈夫」が辞書に登録される日も遠くないような気がしているのである。
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