第165回
「断トツ」は1位ではないのか?
2013年06月24日
「断トツの最下位から、つながりやすさNo.1へ。」
少し前の話だが、ある携帯電話会社のこんな広告が話題になった。携帯電話が「つながりにくい」ということを認めた自虐的なコピーが評判になったようだが、今回話題にしたいのはそのことではない。「断トツの最下位」という言い方の方である。
「断トツ」は「ダントツ」と書くことも多いのだが、この語の語源をご存じだろうか。お手元の国語辞典を引いていただくと、ほとんどが「断然トップ」の略と書かれていると思う。「トツ」は英語の「top」の略なのである。意味は2位以下を大きく引き離して先頭にあることをいう。
この語がいつ頃使われるようになったのか、はっきりしたことはわからないのだが、『日本国語大辞典 第2版』の用例は、石原慎太郎『死のヨットレース脱出記』の「スタートからダントツ(断然トップ)で出たが」というものである。この文章が発表されたのは1963年で、わざわざ「断然トップ」という注釈を加えているところをみると、ほぼその時代に生まれた語なのかもしれない。新語を積極的に掲載している『三省堂国語辞典』も「断トツ」を登録したのは1974年発行の第2版からである。
多くの辞書の解説からもわかるように、「断トツ」とは2位を大きく引き離して、首位、先頭、トップの座にあることである。『死のヨットレース脱出記』もヨットはその位置にいる。
ところが、この語は「断然トップ」という本来の意味が次第に失われつつあるようなのだ。そのため、「断トツの首位」などという言い方まで生まれている。これは首位であることを2度言っているわけだから、明らかに同じ意味を重ねた重言である。
また、くだんの携帯電話会社の広告は、首位の座ではなく最下位の座をそう言っていて、本来の意味に即してみると、断然首位の最下位という変な意味になってしまう。
どうやら「断トツ」は、語源がわからなくなったことによって正しい意味まで忘れさられ、「大差を付けて」という意味で使われるようになったと言えそうである。
この新しい意味を認めるかどうか悩むところで、今のところほとんどの国語辞典はこの意味に触れていない。
少し前の話だが、ある携帯電話会社のこんな広告が話題になった。携帯電話が「つながりにくい」ということを認めた自虐的なコピーが評判になったようだが、今回話題にしたいのはそのことではない。「断トツの最下位」という言い方の方である。
「断トツ」は「ダントツ」と書くことも多いのだが、この語の語源をご存じだろうか。お手元の国語辞典を引いていただくと、ほとんどが「断然トップ」の略と書かれていると思う。「トツ」は英語の「top」の略なのである。意味は2位以下を大きく引き離して先頭にあることをいう。
この語がいつ頃使われるようになったのか、はっきりしたことはわからないのだが、『日本国語大辞典 第2版』の用例は、石原慎太郎『死のヨットレース脱出記』の「スタートからダントツ(断然トップ)で出たが」というものである。この文章が発表されたのは1963年で、わざわざ「断然トップ」という注釈を加えているところをみると、ほぼその時代に生まれた語なのかもしれない。新語を積極的に掲載している『三省堂国語辞典』も「断トツ」を登録したのは1974年発行の第2版からである。
多くの辞書の解説からもわかるように、「断トツ」とは2位を大きく引き離して、首位、先頭、トップの座にあることである。『死のヨットレース脱出記』もヨットはその位置にいる。
ところが、この語は「断然トップ」という本来の意味が次第に失われつつあるようなのだ。そのため、「断トツの首位」などという言い方まで生まれている。これは首位であることを2度言っているわけだから、明らかに同じ意味を重ねた重言である。
また、くだんの携帯電話会社の広告は、首位の座ではなく最下位の座をそう言っていて、本来の意味に即してみると、断然首位の最下位という変な意味になってしまう。
どうやら「断トツ」は、語源がわからなくなったことによって正しい意味まで忘れさられ、「大差を付けて」という意味で使われるようになったと言えそうである。
この新しい意味を認めるかどうか悩むところで、今のところほとんどの国語辞典はこの意味に触れていない。
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