第222回
「ふりの客」の「ふり」とは?
2014年08月04日
紹介や予約無しで店に来る客のことを「ふりの客」というのだが、この「ふり」を英語の「フリー(free)」だと思っている人がいるらしい。確かに音は似ているが、この「ふり」はもちろんれっきとした日本語である。動詞「ふる(振)」が名詞化して「ふり」となったものである。ただし、なぜ「振る」が名詞化してこのような意味となったのか実はよくわかっていない。
『日本国語大辞典 第2版』(『日国』)によれば、この「ふり」が使われるようになったのは近世以後のことで、料理屋、旅館、茶屋、遊女屋などでの用語だったらしい。
『日国』に引用されているこの意味での「ふり」の初出例は、『松の葉』という歌謡集である。元祿16年(1703年)に秀松軒(しゅうしょうけん)という人が編纂したこの書は、主に江戸初期から元祿までの上方の三味線歌曲の歌詞を収めたものだという。
以下のような用例である。
「どれでもどれでもふりに呼ばれし新造の」(「月見」)
「新造」とは、上方で新しくつとめに出た若い遊女をいった語である。この例を見る限り、「ふり」は近世に上方で生まれた語である可能性が高いと言えそうだ。意味の似ている語に「一見(いちげん)」があるが、これも上方の遊里で生まれた語で、もともとは遊女が初めてその客の相手をすることを言った。「一見」も後に一般の町家にまで広まり、なじみのない初めての客を言うようになるのである。「一見」は文字通り初めて会うという意味なので語源はわかりやすいと思う。
江戸時代の文献を見ると、なじみでもなく約束もせずに、客が突然遊里に来ることを、「ふりがかり(振掛)」「ふりこみ(振込)」などとも言っていたようである。しかし、これらもやはり語源は不明だし、これらの語と「ふり」とどちらが先に生まれた語なのかもわからない。「フリー(free)」でないことは確かなのだが。
『日本国語大辞典 第2版』(『日国』)によれば、この「ふり」が使われるようになったのは近世以後のことで、料理屋、旅館、茶屋、遊女屋などでの用語だったらしい。
『日国』に引用されているこの意味での「ふり」の初出例は、『松の葉』という歌謡集である。元祿16年(1703年)に秀松軒(しゅうしょうけん)という人が編纂したこの書は、主に江戸初期から元祿までの上方の三味線歌曲の歌詞を収めたものだという。
以下のような用例である。
「どれでもどれでもふりに呼ばれし新造の」(「月見」)
「新造」とは、上方で新しくつとめに出た若い遊女をいった語である。この例を見る限り、「ふり」は近世に上方で生まれた語である可能性が高いと言えそうだ。意味の似ている語に「一見(いちげん)」があるが、これも上方の遊里で生まれた語で、もともとは遊女が初めてその客の相手をすることを言った。「一見」も後に一般の町家にまで広まり、なじみのない初めての客を言うようになるのである。「一見」は文字通り初めて会うという意味なので語源はわかりやすいと思う。
江戸時代の文献を見ると、なじみでもなく約束もせずに、客が突然遊里に来ることを、「ふりがかり(振掛)」「ふりこみ(振込)」などとも言っていたようである。しかし、これらもやはり語源は不明だし、これらの語と「ふり」とどちらが先に生まれた語なのかもわからない。「フリー(free)」でないことは確かなのだが。
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