日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。

第19回
 

 普通は「盆」「お盆」と言っているが、正しくは「盂蘭盆(うらぼん)」と言う。
 「盂蘭盆」は梵語「ウランバナ(逆さ吊りの意)」の音訳だという説がある。地獄では逆さ吊りにされているからだというのだが、何となく釈然としない。インド学の故岩本裕氏は、霊魂を意味するイラン語「ウルヴァン」 の音訳と見て、行事自体もイランから中国に伝えられたものとしている。
 「お盆」の時期は、本来は旧暦

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第18回
 

 陰暦8月は「葉月」と呼ばれていた。しかし、なぜそのように呼ばれていたのかは諸説あってよくわからない。代表的なものでも、「葉落月(はおちづき)」の略とする説(『奥義抄(おうぎしょう)』『和爾雅(わじが)』など)、「穂張月(ほはりづき)」で稲穂が張る月の意とする説(『語意考』『古事記伝』)、初雁の来る月であるところから「ハツキ(初来)」の意とする説(『滑稽雑談(こっけいぞうだん)』)などさまざまであ

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 みなさんは「外は雨模様だ」と言われると、どのような天気を思い描くであろうか。
 平成15(2003)年度に文化庁が行った「国語に関する世論調査」では、「雨が降りそうな様子」の意味で使う人が38.0パーセント、「小雨が降ったりやんだりしている様子」の意味で使う人が45.2パーセントという結果が報告されている。
 ところが面白いことにこの語は、少数派となった「雨が降りそうな様子」

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 『源氏物語』の有名な冒頭部分に、「いとやむごとなききはにはあらぬがすぐれて時めき給ふありけり」(桐壺)と出てくる、「やんごとない」の話である。『源氏物語』のこの「やんごとない(やむごとなき)」はもちろん高貴であるという意味である。
 「やんごとない」は元来は「止む事無し」で、それが一語になった語である。打ち捨てておくことができない、よんどころないというのが元の意味で、その打ち捨てておけ

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 幼い子どものかわいらしいさまや、そのような言動を表すとき、「いたいけ」と言ったり「いたいけない」と言ったりする。どちらも同じ意味で使われているのに、なぜ「いたいけない」には「ない」が付いているのか?
 実はこの「ない」は接尾語で、その意味を強調し、形容詞化する働きをもつ。したがって、「無い」という意味ではない。「切(せつ)ない」「はしたない」などの「ない」も同様である。「

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