福岡女学院大学
図書館司書
小野未来子さん
2017年4月にオープンした西南学院大学の新図書館は、周囲の建物と調和のとれた赤レンガを透かし積みにした外観で、重厚でありながら洗練された雰囲気を醸し出しています。
館内施設や内装も外観と同じように、機能とデザイン性の2つを融合し、心地よい空間を演出しているのでは? また、これまでの図書館が持つ役割だけでなく、これからの図書館に求められるサービスのヒントがここにあるのでは?と期待に胸が膨らみます。
創立100周年を機にこの4月に新しくなった西南学院大学図書館。これからの大学図書館に求められるサービスのヒントとは? 前回に引き続き、西南学院大学図書館の山下大輔さんにうかがいました。
──では具体的に新図書館の中身を見ていきたいと思います。1~3階に「聞く・見る・話す」から学びを得る場所、アクティブゾーンを設けられましたね。
旧図書館時代から本学は、図書館の利用率が高いという特長がありました。真面目に勉強する学生が多いということもありますが、キャンパスが狭いため、学生が居場所を求めて自然に集まってくるという事情もあります。
そんな事情を念頭におき、図書館の1~3階は学内のアクティブラーニングの環境を集約して、ディスカッションエリア、プレゼンテーションエリア、グループ学習室など声を出して学修してもよい環境を用意しました。
2階にはラーニングサポートエリアを設けました。夜間や土日も含めて、大学院生または学部の3~4年生にチューターとして常駐してもらい、ほかの学部生のサポートをしてもらっています。
また施設利用については、IC学生証を活用した“セルフ”サービスを意識しています。学生証を持っていれば、グループ学習室への入退室のほか、視聴ブースの機材が自由に利用できるようになりました。
──4~6階は「読む・調べる・考える・書く」のサイレントゾーン。学生が利用する閲覧席にはいろんなタイプがあるそうですね。
旧図書館では約800席だった閲覧席を、新図書館は1179席に増やしました。これで学生たちはゆったり学修できるようになったと思います。また、「入りたくなる」「学修したくなる」空間を目指し、キャレル(デスク)席、カウンター席、オープン席とタイプの異なる席も用意しました。皆さん、居心地のよい場所を探しあて、利用していただいているようです。
各席には個別照明に加えて、パソコンなどさまざまなデバイスを使うことを想定し、電源も配備しています。
4階の南西閲覧室。手前のガラスにはアートプロジェクト作品「一瞬と連続“聖句”」。歪曲したキーワードと整然と並び綴られる文章で構成されている。
──学生たちの反応はいかがですか?
4~6階のサイレントゾーンには、楽しい、入りたくなる、ずっとここで勉強していたい、といった前向きなご意見をたくさんいただいています。4月オープンの1か月間の入館者数は約66,000名で、例年の約1.5倍となりました。
一方、1~3階のアクティブゾーン、特にラーニングサポートエリアは開館当初、少し寂しい利用状況でした。しかし、新入生へのガイダンスを順次実施し、また各学部教員に授業内でのアナウンスを依頼したことで、徐々に利用が増加してきています。口コミ効果も大きく、新入生からはレポートの作成について、3年生からはエントリーシートの書き方についてなどの相談が徐々に寄せられているようです。
──アクティブラーニングを実践するために、図書館ならではの学修支援の構想はありますか?
旧図書館時代は、教育・研究推進課や教務課といった部署において、さまざまな学修支援を展開していましたが、あまり連携がとれていない状況にありました。
新図書館オープンをきっかけに、学内の状況を各部署が把握し、情報共有しようという機運が高まっています。
新図書館では従来の「読む・調べる・考える・書く」に加え、「聞く・見る・話す」というアクティブゾーンを設け、「学修したくなる設備」が整えられました。それを受け、大学院生を核とした学生によるチュータリングを展開していくとともに、そのノウハウを継承し、学内へのサービス展開や、全体をにらんで整理を進めていきたいと思っています。
西南学院大学図書館員の山下大輔さん(右)と坂本里栄さん(左)。
西南学院の創立100周年を機に、2017年4月にオープン。大学の顔として、心のシンボルのチャペルと双璧をなす知のシンボルと位置付けられている。地上7階建て。着工が2015年5月、竣工が2016年9月。1~3Fのアクティブゾーン。プレゼンテーションエリアのほか、ラーニングサポートエリアを設置。4~7Fはサイレントゾーン。書架のほかバラエティ豊かな閲覧席を配置。
西南学院は1916年、米国人宣教師C.K.ドージャーによって福岡市に創立。男子私立中学校として、104名の生徒によってスタート。1921年に高等学部を設立、その後、第二次世界大戦を経て、1947年新制中学校、1948年に高等学校、1949年に大学を開設。建学の精神である“Seinan, Be True to Christ”(西南よ、キリストに忠実なれ)は、学院創設者の遺訓であり、今もなお、学院の中に大切に引き継がれている。
住所 | 〒814-8511 福岡県福岡市早良区西新6-2-92 |
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TEL | 図書情報課092-823-3426 |
URL | https://opac.seinan-gu.ac.jp/library/ |
lib-jm@seinan-gu.ac.jp | |
開館時間 | 平日8:30~22:00、土曜日9:00~20:00、日曜日13:00~20:00(※詳細は図書館HP参照) |
利用できるひと | 学生、教職員、卒業生、退職教職員(一般の利用は不可) |
図書収容能力 | 183万冊 |
閲覧席数 | 1,179席 |
延床面積 | 11,715.21㎡ |
開館年月 | 2017年4月 |
光が差し込み、開放的な1階プレゼンテーションエリア。
1階ディスカッションエリアの天井には袴田京太朗さんによるアート作品本の精霊たち。
2階ラーニングサポートエリア。ノートPC50台、iPad35台など貸出備品が勢ぞろい。
2階ラーニングサポートデスク。学修相談員(コンシェルジュ)が図書館の活用法を伝授。
2階のグループ学習室。広さは大(30名収容)、中(15名)、小(8名)の3タイプで、写真は大。
3階の視聴ブース。ブルーレイ、DVDを視聴できる。
4階窓際カウンター席。外の風景を眺めながら、資料を閲覧できる。
集中できる一人空間、4階キャレル席。
一目でわかるディスプレイがうれしい、4階学術雑誌コーナー。
幼少期から戦後まで福岡で過ごした長谷川町子。新図書館はサザエさん通りに面している。
ジャパンナレッジは約1900冊以上(総額850万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。
(2024年5月時点)