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今号の気になる図書館員さん

聖徳大学
文学部図書館
片山ふみさん

国内でも珍しいクラシック音楽中心の音楽専門図書館、東京文化会館音楽資料室。

都内でも音楽にかかわる図書館をいくつか見かけますが、広く一般に無料で公開しているところは珍しいように思います。

いまだに現役で活躍するカード目録、約4万枚もあるLPや東京文化会館で行なわれた全公演のプログラムといった貴重資料など、気になるポイントが多い図書館です。

音楽のありようが多様化するなかで、伝統的な音楽を扱う図書館にも何か変化があるのでしょうか。ぜひ東京文化会館音楽資料室の紹介をお願いいたします!

東京文化会館音楽資料室(1)東京都台東区

JR上野駅の公園口からすぐのところに、長年本格的な音楽ホールとして愛されている東京文化会館があります。その4階にあるのが、文化会館のライブラリー、音楽資料室。図書だけではなく、レコードやDVDを視聴できるのが特長です。今回は司書の遠藤淑恵さん、篠原智子さん、高関瑶さんに案内していただきました。

レコードを聴ける図書館

──文化会館は何度かコンサートに来たことがあるんですが、こんな素敵な図書館が階上にあったとは知りませんでした。レコードも聴けるし、DVDも見られるし……そしてあの膨大なカード目録! いまだ現役なんですね。

遠藤:そうなんです。資料を探す際、LPレコードに関してはOPACにデータが入っていないので、ここからあたるんですよ。LPレコードの所蔵数が4万枚で、それぞれに対応したカードが何枚もありますから、本当に膨大な数です。

──どういう分類がなされているんですか?

遠藤:作曲者や演奏者などの人名ごとの分類のほか、曲名や、楽曲のジャンル別の分類があります。

──では、音楽資料室の成り立ちを教えてください。

遠藤:東京文化会館が開館したのは1961年4月。「東京に本格的な音楽ホールを」という声に応えて、東京都が開都500年事業として建設したものです。当初から施設内にライブラリーを設置することが計画されていたようで、音楽資料室は同じ年の10月にオープンしました。

──最初からレコードを聴くことができたのですか?

篠原:はい。レコードプレーヤーを備えている家庭も少なかった時代ですから、画期的な施設だったのではないかと思います。

──さて、現在の音楽資料室の主な利用者は?

遠藤:演奏家や研究者、音大の学生さんなどももちろんいらっしゃいますが、一般の音楽ファン、クラシックファンがメインですね。そして図書の閲覧よりもやはりレコードやDVDを視聴される方が多いですね。

──私も先ほどバッハの『カンタータ』をレコードで聴かせていただいたんですが、ほんと素晴らしい音でした。とっても暖かくて気持ちが癒されました。

篠原:LPレコードは、貴重盤やCDで復刻されていないものもあります。そして、音もいいので本当におススメなんですよ。


視聴室のLPレコード席は7席。楽譜を見ながら、音楽をゆっくり聴くことができる。

──レコード針の交換などはどうされているんですか?

篠原:月に一度、視聴機器のメンテナンスに入ってもらっています。その際、レコード針の点検もしてもらい、必要な場合は交換していただいています。

──映像資料も充実していますね。DVDのほかに、LD(Laser Disc, レーザーディスク)(注1)、そしてVHD(Video High Density Disc)(注2)。VHDって私、知らなかったんです。あんな形をしているだなんて、初めて知りました。

遠藤:VHDはLDと同時期に発売されていたものだそうです。いま、VHDの利用に関しては年に一回、請求を受けるか受けないかくらいの頻度ですね。

──LDもVHDももう生産はストップしていますよね。機器のメンテナンスなどはどうされているんですか?

篠原:どちらもプレイヤーの製造は終わってしまい、メーカーへの修理依頼もできない状態です。こわれたものなど修理できないものに関しては予備の機器と交換しています。

遠藤:ソフトも人気のあるものはDVD化されていたりするんですが、DVD化されていないものもあります。予備の機器も台数に限りがあるので、とにかくソフトもハードも大事に使うことを心がけていますね。

──オーディオ機器の対応もたいへんですよね。

篠原:それぞれの特色をきちんとわかっていないといけないこともあります。機器によって字幕の出し方が違ったり、ソフトとの相性があったりしますしね。また近年はブルーレイが出てきたりするなどソフトの変化も激しいので、気を配っています。

高関:基本的に視聴室の席については、利用者は指定できないのですが、操作の仕方や使いやすさで、ヘビーユーザーの方はそれぞれお気に入りがあるようです。この機器がいいからここがいいなとか、たまに言われることがあります。

強みは誰もが利用できること

──楽譜もたくさん所蔵されていますよね。オーケストラのパート譜を一般に貸し出されているとうかがいました。

遠藤:都内で活動するアマチュアの演奏団体に、オーケストラ・吹奏楽用のパート譜の貸出をしています。期間は3か月です。

──なぜ3か月なんですか?

高関:演奏会の練習から本番までの期間を想定しています。

──貸出はいつからされているんですか?

篠原:サービスは開館当初からあったようです。

遠藤:高校生や大学生など、将来の音楽文化を支える若い人たちへの支援という意味があると思います。

──結構、貸出はありますか?

遠藤:昨年度だと年間220件くらい。人気のある曲などは何セットかあっても足りなかったりします。

篠原:コンスタントに利用されている団体がありますね。ただ中高生や大学生だと毎年代替わりしたりするので、知らない人もいるんじゃないかと思って、少しずつですが利用案内のチラシを送付しています。

──レコードなどの視聴も楽譜を借りるのも無料っていうのが、本当に有り難いですね。

遠藤:資料室は中学生以上ならどなたでも利用できます。どこかの大学に所属してなきゃいけないとか、都民じゃなきゃいけないという縛りは一切ありません。ここは専門図書館であり、公共図書館でもあります。土日も利用できますし。誰でも利用できるというのが、いちばんの特長だと思っています。


(注1)レーザー光線をディスク面の微小な凸部に当て、その反射光を電気信号に変換して、音声・画像を再生するビデオディスク。平成12年(2000)ごろからDVDや通信カラオケの普及に伴い、ソフト・再生装置ともに衰退した。商標名。LD。
[補説]レーザーディスクを国内で初めて製品化し、メーカーとして最後まで生産を続けたパイオニアも、平成21年(2009)に撤退。(ジャパンナレッジ「デジタル大辞泉」)

(注2)《video high-density disk》日本ビクターが開発したビデオディスク方式。溝のない静電容量方式を採用。(ジャパンナレッジ「デジタル大辞泉」)

(つづく)


インタビューに答えていただいた司書の方々。写真左から篠原智子さん、遠藤淑恵さん、高関瑶さん。

東京文化会館音楽資料室

1961(昭和36年)年に開館した東京文化会館内に、音楽専門の図書館として開設。クラシック音楽を中心に民族音楽、日本の伝統音楽、舞踊に関する資料などを無料で閲覧・視聴できる。楽譜を見ながらレコードやCD、DVDなどを視聴することもできる。東京文化会館で行なわれた公演プログラムも全点所蔵されている。

東京文化会館

音楽文化を中心とする総合施設で東京都台東区の上野恩賜公園にある。東京都の開都500年記念事業として1959年(昭和34)起工、61年に開館。建物の設計は前川國男氏。内外のオーケストラ、オペラ、バレエをはじめとする数々の公演が開催されている。大ホール、小ホールのほか、リハーサル室や会議室、音楽資料室をもつ。

住所 〒110-8716 東京都台東区上野公園5-45
TEL 03-3828-2111
HP http://www.t-bunka.jp/library/index.html
開館時間 火~金:11:30~18:30、土・日・祝:11:30~17:00
※資料複写受付は閉室の1時間前まで
休室日 月曜日、保守日等(不定期)
利用できるひと 中学生以上は誰でも利用可、ただしパート譜の団体貸出を除き、資料は館内閲覧のみ(小学生は保護者同伴で利用可)
蔵書数 音源資料 73,707枚(LP 39,117枚、CD 34,590枚)、映像資料 4,299枚(LD・VHD 1,832枚、DVD 2,467枚)、楽譜 34,249冊、
図書 20,955冊
閲覧席数 閲覧室25席、視聴室30席
延床面積 閲覧室68㎡ 視聴室68㎡
開館年月 1961年10月


受付カウンター。レコードやDVD、楽譜を請求するときは利用票に記入して、申し込み手続きをする。


図書コーナー。音楽総記から小・中学校の音楽の指導本や民俗芸能、浄瑠璃まで、クラシックにかぎらず音楽全般をコレクションしている。


団体や機関の図書が並ぶコーナー。ほとんどが寄贈されたもの。


日射しがたっぷり入って、居心地のよい図書閲覧席。


一人でじっくり図書や雑誌などを閲覧するための席もある。


作曲者目録カードボックスの、バッハに関するカードを収めた引き出し。中には手書きやタイプしたカードが詰まっている。


パソコンコーナー。資料室のホームページからは資料室所蔵の資料はもちろん、他機関のものや、国会図書館、グーグルブックス、アマゾン、国内論文も検索できる。


今は珍しくなったVHDの視聴機が設置された席もある。

ジャパンナレッジとは

ジャパンナレッジは約1500冊以上(総額550万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。

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