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今号の気になる図書館員さん

旅の図書館
副館長
大隅一志さん

都立多摩図書館が気になります。調査研究を目的とした図書館、同時期(旅の図書館は一昨年9月、多摩図書館は昨年1月)に移転、と共通点もありますので、とても気になる存在です。

とくに「東京マガジンバンク」では鉄道雑誌の収集や、全国各地の情報誌のコレクションにも力を入れておられるとか。外国雑誌がたくさん閲覧できるのも興味深いです。新しい環境で利用者の反響はどうか、というところも気になります。

都立多摩図書館(1)東京都国分寺市

2017年1月に立川市から国分寺市に移転した都立多摩図書館を2回シリーズでピックアップ! 雑誌と児童・青少年資料が貴重な、主に調査研究を目的とする図書館です。約18,000タイトルの雑誌を擁する「東京マガジンバンク」とは? マガジンバンクが主催するイベントとは? 今回は情報サービス担当の冨樫和行さんにお話をうかがいます。

国内最大級の雑誌の宝庫

──昨年1月に立川市から国分寺市に移転されました。移転の理由は何だったのでしょうか?

建物の老朽化や、収蔵スペースの不足が主な理由です。当館は都立図書館全体の収蔵庫も兼ねています。移転して書庫も大きくなり、おかげさまで約275万冊が収容できる見込みです。

──多摩図書館の成り立ちを教えてください。

昭和62(1987)年5月、多摩地域にあった青梅、立川、八王子の都立図書館を統合するかたちで、立川市で開館しました。都立図書館は主に調査研究を目的とする図書館で、港区の中央図書館とこの多摩図書館の2館で構成されています。当館では特に雑誌と児童・青少年資料を中心にしたかたちで資料を収集しております。

──では冨樫さんが担当されている、「東京マガジンバンク」についてお聞かせください。

平成21(2009)年、公立図書館では初の雑誌図書館として、「東京マガジンバンク」が当館で創設されました。扱っている雑誌は国内公立図書館で最大級の約18,000タイトル。そのうち外国の雑誌は12言語約1,400タイトルあります。

──外国の雑誌も閲覧できるんですね。現在、開架ではどれくらい見られるのですか?

最新1年分の約1,500タイトルが開架で閲覧できます。それより古いものが閉架書庫に置いてあります。閲覧室に入りきらない約4,500タイトルの最新1年分は図書館の入口横の開架書庫で保存しています。開架書庫は資料お渡し・返却カウンターに声をかけていただければ、どなたでも自由に入ることができます。閉架書庫のものも、カウンターで申し込み手続きをすれば利用できます。

──利用者は雑誌関係者が多いのでしょうか?

雑誌関連のお仕事の方もいらっしゃいますが、一般の方の利用も多いですね。閉架資料はブックトラック一台分に載せられる範囲であれば、まとめて出納できます。たとえば、流行の変遷をたどるために複数の女性誌を数年分まとめてご覧になる方もいらっしゃいますし、建築を学ばれている学生さんなどは、論文を書くために2、3年分の「新建築」をまとめて申し込みされたりします。

──分類はNDC分類(日本十進分類法)ですか?

50の独自分類で並べています。NDC分類を基本としつつ、たとえば男性誌や女性誌といった独自の分類を設け、利用者の方にわかりやすい配置になるよう工夫しています。


図書館1階。雑誌棚がズラリとジャンルごとに配列されている。

──特長的なコレクションなどはありますか?

まず「創刊号コレクション」。あらゆるジャンルの雑誌の創刊号に力を入れて収集しており、現在約7,700タイトル所蔵しております。なかでも個人の方から寄贈された「雑華文庫」という約2,000タイトルのコレクションがあるのですが、ジャンルはマンガ誌にコンピューター専門誌、グラフ誌と実に幅広い。収集された方の雑誌に対する思いが伝わってくるコレクションです。

また女性誌と鉄道雑誌にも力を入れています。女性誌は閲覧室に108タイトル。鉄道雑誌は、主要な「鉄道ジャーナル」「鉄道ファン」「鉄道ピクトリアル」は創刊号から1号も欠かしていません。

そして全国各地の情報誌もコレクションしています。現在110タイトル以上で、東京都内のものは約30タイトルあります。

──いちばん古い雑誌はどの年代のものですか?

明治7(1874)年に創刊された「明六雑誌」です。

──雑誌の保存というと、たいへんな労力が必要だと思いますが。

たとえば脱酸性化処理(注1)を施したり、グラシン紙(注2)を表紙にかけたり、カイルラッパーに入れて保存したり(注3)、資料をなるべく傷めないよう保管方法に気を付けていますね。また、カビの侵入を防ぐために書庫出入口に塵埃粘着マット(注4)を敷いたりもしています。

当館では、雑誌は原則として製本せずに一冊ずつの元の状態で保管しています。なかには薄くて自立しないものもありますので、特注のパンフレットボックスに立てかけて保存するなど工夫をしています。

──近年、ファッション誌などでは付録をつけるのが定番になってきました。付録はすべて保管されているんですか?

原則すべて保管していますが、シャンプーや除光液といった液体物は保管していません。付録もお申し込みいただければ閲覧可能です。

──雑誌の受入は直接されているんですか?

購入しているものは、中央図書館でいったん受入をしてから当館に届きます。また当館に寄贈していただいているものはこちらで受入をします。とくに3月や4月は刊行されている雑誌が多いので、一日に何百冊と中央図書館から到着することもありますね。

利用者どうしのつながりを育てたい

──「東京マガジンバンクカレッジ」についてお聞かせください。この試みは国分寺に移られてからスタートしたんですか?

はい、そうです。東京マガジンバンクカレッジでは雑誌に関するイベントを開催し、雑誌を仲立ちとして利用者のみなさんの知的創造と交流の拠点をつくりあげることを目的としています。

雑誌総合セクション、鉄道セクション、多摩セクションと三つのセクションに分かれて、セクションごとにセミナーやワークショップ、講演会などさまざまな活動を行なっています。

──セクションごとにイベントを企画されているんですね。

たとえば今年の上半期は雑誌総合セクションで「初めての雑誌づくり」というワークショップを開催しています。雑誌の企画から誌面の作成まで4回シリーズで定員が30名。定員を超えるお申し込みをいただき、抽選になりました。また多摩セクションと鉄道セクション合同で「廃線は語る」というタイトルで、多摩地域の廃線を中心にしたお話を「Rail Magazine」の元編集長に語っていただきました。こちらも大入り満員でした。

──セミナーやワークショップは人が集まらないと成り立たない。企画はたいへんだと思います。

雑誌の利用に結びつき、かつ利用者に参加してもらえるイベントとはなにか──担当者は、雑誌の動向だけではなく、世の中で話題になっていることなどにつねにアンテナを立て、何度も何度も打ち合わせをしてテーマを決めていますね。

──講師はどうやって決めるのですか?

まずは「雑誌」ありきなので、講師は編集長や編集者、雑誌に関わるライター、ジャーナリストがやはり多いですね。

──参加者は都民のみ?

都民にはかぎっていません。講演会「廃線は語る」では、埼玉、神奈川、千葉、茨城など、東京近県から来られる方もいらっしゃいました。

──カレッジパートナーという制度もあるようですが。

カレッジ事業にご賛同いただいている方に、パートナーになっていただいています。有効期限は1年。雑誌に興味のある人は雑誌総合セクション、鉄道が大好きな人は鉄道セクション、多摩の歴史に興味のある人は多摩セクションに登録いただいています。今後はパートナーを中心に、利用者の方々で雑誌をつくってみようとか、こんなイベントを開催しようとか、自発的に何かが生まれていけばいいなと思っています。

──さて、冨樫さんが考える多摩図書館の未来像とは?

一般的に雑誌は娯楽のための読み物と思われがちですが、それぞれの時代を色濃く反映している時代性、テーマについて編集者が掘り下げて記事にする専門性など、図書にはないたくさんの魅力があると思います。そんな雑誌の特性を利用者にもっと知ってもらい、都立図書館のコンセプトでもある調査研究のために使っていただけるようにしていきたいなと考えています。しかし一方で、雑誌は気軽に読めるところが最大の魅力でもあります。あまり肩ひじ張らず、いままでどおりに気軽に利用していただけたら……。その二つが常に共存できる図書館でありたいな、と思っています。

雑誌は長期保存に値する資料なのか、利用者が買えないような高額の図書などを収集するのが図書館本来の役割じゃないのかと問われることもあります。ほかの図書館では収蔵スペースの関係上廃棄することが多いなか、雑誌を保存していくことは都立図書館の大きな役割の一つだと思っていますので、今後も雑誌の収集・活用には変わらず力を入れたいと思っています。


(注1)東京都立図書館ホームページ内「酸性紙資料の脱酸性化処置」
https://www.library.metro.tokyo.jp/guide/about_us/collection_conservation/conservation/deoxidation/

(注2)《glassine paper》化学パルプを用い、光沢をつけて透明に仕上げた薄紙。書籍のカバーなど特殊包装用。(「デジタル大辞泉」より)

(注3)東京都立図書館ホームページ内「カイルラッパー・ブックカバーなど」
https://www.library.metro.tokyo.jp/guide/about_us/collection_conservation/conservation/protector/

(注4)東京都立中央図書館ホームページ内「カビ対策」
https://www.library.metro.tokyo.jp/guide/about_us/collection_conservation/conservation/mold/index.html

(つづく)


インタビューに答えていただいた、情報サービス担当の冨樫和行さん。

都立多摩図書館

昭和22(1947)年に開館した都立立川図書館、都立青梅図書館、昭和30(1950)年に東京都に移管された八王子市立図書館の3館が統合され、昭和62(1987)年、立川市錦町に都立多摩図書館が開館。平成14(2002)年に都立多摩図書館児童・青少年資料サービスを、21(2009)年東京マガジンバンクサービスをそれぞれ開始。港区にある中央図書館と機能を分担し、二つのサービス機能を柱に、都民の調査研究及び課題解決の支援や、区市町村立図書館及び学校への支援サービスを行なっている。平成29(2017)年1月に国分寺市に移転した。

住所 〒185-8520 国分寺市泉町2-2-26
TEL 042-359-4020
HP https://www.library.metro.tokyo.jp/
開館時間 月~金曜日:10:00~21:00、土・日・祝休日:10:00~17:30
※複写の受付は、閉館時刻30分前、書庫内資料の利用申込は、閉館時刻15分前まで。
休館日 毎月第1木曜日(館内整理日)、月1回の設備等保守点検日、年間12日以内の特別整理期間、年末年始
利用できるひと 誰でも利用可。調査研究の図書館のため資料の貸出は不可。
蔵書数 「東京マガジンバンク」は約1万8000タイトル、児童・青少年向けの資料は約23万冊
閲覧席数 227席
延床面積 8972㎡
移転年月 2017年1月


女性誌の収集にも力を入れている。


海外の雑誌も多数、閲覧できる。


FIFAワールドカップにちなんで、サッカー雑誌を展示。


緑に囲まれた開放的な1階閲覧室。


1階閲覧室にある、約30種のオンラインデータベースが使えるスペース。


閲覧室に入りきらない雑誌は開架書庫に所蔵。


週刊誌は最新3か月分を開架で、続く9か月分を開架書庫で所蔵。


雑誌はオリジナル分類で並べられている。この棚のジャンルは「食」。


白い棚がスタイリッシュな閉架書庫。


閉架書庫には多摩図書館および中央図書館の、都立図書館全体の資料が保管されている。


創刊号コレクション「雑華文庫」の棚。「少年エース」に「歴史街道」なども見られる。


「少年ジャンプ」「anan」の創刊号。


ファッション誌「VOGUE」イタリア版。本国アメリカをはじめ、ロシア、スペイン、フランスなどさまざまな「VOGUE」が収集されている。


側板に多摩産材を使った2階の電動書架。


取材に訪れたときに開催されていた企画展示「アガる↑付録!」。双六に往年の映画スターのポスターにと、昔の貴重な付録が見られた。


ファッション誌の付録の定番といえばバッグ。「アガる↑付録!」で展示。

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