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今号の気になる図書館員さん

立命館大学
司書
安東正玄さん

私は、公立大学法人島根県立大学松江キャンパス図書館を推薦します。

何がすごいかと言えば、2013年7月6日~7日に実施された研修(「ハードコア・ノンユーザーの心をつかむ図書館ブランディング~潜在ユーザー発掘大作戦」、講師:仁上幸治)でたまたまこちらの図書館の方と一緒のグループでいろいろアイデアを出し、グループ発表しました。しかもそれだけにとどまらず、その内容をすぐに実践し大学における図書館の存在価値を高め、サービスの高度化に成功したすばらしい大学図書館です。

通常、研修を受ける図書館員は多くいますが、図書館長を動かし実践までもっていく事例はそう多くありません。

いろんな障壁もあったかと思います。改めて苦労話を含めて、何が成功の鍵なのかを共有できればと思っています。

島根県立大学短期大学部図書館(2)島根県松江市

島根県松江市にある島根県立大学短期大学部図書館。研修から持ち帰った「あなただけ特別」作戦をすぐに実践されました。具体的にどんな内容で教員や学生の心をつかんだのか? 作戦を継続するにあたっての課題とは何か? 図書館員北井由香さんにうかがう第2回目。

“作戦”で図書館のブランディングは成功したのか?

──書架を見ますと、ジャパンナレッジの搭載コンテンツにあるものがたくさん並んでいますね。たとえば東洋文庫が開架にズラリとそろっているというのは、ほかの大学図書館ではありそうで実はそれほどない光景だったりします。

こういった図書があることを知ってもらうため、そしてできれば利用してもらうために開架で並べています。

──さて研修から帰られた後、即実践に移された「あなただけ特別」作戦では、具体的にどんなことをされたのでしょうか?

ガイダンスの内容に関して、プログラムは決めていませんでした。「ILL(図書館間で行なわれる相互貸借サービス)の申請の仕方について知りたい」「ゼミで重要視するデータベースに時間をかけてほしい」など、教員それぞれに要望があるからです。それまで図書館はきちんとした利用者ガイダンスを行なっていませんでしたから、それがかえってよかったのだと思います。先生方と話し合い、ガイダンスの内容を組み立てていきました。

        


ジャパンナレッジの搭載コンテンツでもある『東洋文庫』は開架で全冊並んでいる。

──ガイダンスを実施することによって、具体的にどのような成果が得られましたか?

データベースの利用が格段に増えたことと、文献の複写や貸借の依頼も増えました。

──ガイダンスが開催される中で、いちばん苦労されたところは何でしょう?

やはり、それぞれの先生方の二ーズに応えて資料を作成したり、ガイダンス内容を考えたりすることでしょうか。初めはとくに資料を作成するのに、すごく時間がかかりました。

あとは、スタッフの数が少ないということもあり、一度に行なえるガイダンスの数が限られるということです。

──この試みを実施されてから何か変わったことがあれば、お聞かせください。

私たち図書館側にとっては、先生方それぞれに対応することで、以前よりも先生方と関わる機会が増えました。

先生方にとっても、こんなことを図書館に頼んでもいいんだということを知ってもらえたかと思います。今までガイダンスの依頼をされるのは、新任の先生がほとんどでしたが、ガイダンスのことが口コミで伝わり、最近は先任の先生方からも依頼がくるようになりました。

学生は図書館を使いこなすとまではまだいかないようですが、図書館でどんなことができるのか知ってもらうことで、図書館の使い方が少し向上しているような気がします。

──ガイダンス資料のアップデートはされているんですか?

資料の見直しは、毎年行なっています。基本的な部分はこちらから提案するのですが、先生方の意見も大切にしています。

──今年(平成29年)度、ガイダンスはどれくらい行なわれましたか?

すでに14回行なっています。内容は主にデータベースの使い方です。おかげで学生のデータベース利用率は格段にあがりました。

──「あなただけ特別」作戦を継続すること、とくに図書館スタッフのモチベーションを持続するのは大変だと思います。普段から何か心がけていらっしゃることがあれば、教えてください。

教員の側が何をしてほしいのか、学生たちにどんなことをさせたいのか、どのくらいのことを修得させたいのかを理解するようにして、つねにガイダンスにのぞんでいます。

またニーズに対応できるよう、私たち図書館スタッフ自身のレベルアップのために、ほかの大学で開催される学生向けの検索講習会や研究会に積極的に参加したりして、普段から勉強するよう心がけています。

──「あなただけ特別」作戦による図書館のブランディング。成功の鍵はあらためて何だと思われますか?

まだ成功したとは思っていません。まだまだこれから、と思っています。

とくに平成30年度から、松江キャンパスが大きく変わります。4年制大学と短期大学部が併存し、図書館も新しくなる予定です。「あなただけ特別」作戦はもっと柔軟に展開させ、いままで以上にパワーアップしていかなければと思います。

(おわり)


小泉八雲の著作が並んだ「へるん」コーナー。小泉八雲の本名はラフカディオ・ハーン(Lafcadio Hearn)。英語教師として赴任した松江中学で「ヘルン先生」と呼ばれていたそう。ちなみに小泉凡(ぼん)総合文化学科教授は八雲の曾孫。

島根県立大学短期大学部

島根県立大学は平成12(2000)年に開学(前身は平成5年に開学した島根県立国際短期大学)。19年、島根県立島根女子短期大学、島根県立看護短期大学と統合し、島根県立大学短期大学部を設置、「公立大学法人島根県立大学」として法人化された。教育理念に島根出身の幕末から明治にかけての思想家、「西周(にし・あまね)が標榜した“『純理の学』から『実践の学』にわたる諸科学の統合”をめざし、各専門領域における研究活動を深め、それにもとづく創造的な教育活動によって、現代社会の諸課題に国際的な視野からアプローチし、また、地域社会の活性化と発展に寄与する人材を養成することを使命とすること」(大学ホームページより)と掲げている。

松江キャンパスにある短期大学部は、保育学科、総合文化学科、健康栄養学科の3学科体制だったが、平成30年度より、4年制の人間文化部(保育教育学科、地域文化学科)と保育学科、総合文化学科からなる短期大学部に改組される。

住所 〒690-0044 島根県松江市浜乃木7-24-2
TEL 0852-20-0203
URL http://matsuec.u-shimane.ac.jp/campus/library/
E-mail m-library@u-shimane.ac.jp
開館時間 授業期間(試験期間を含む)8:45~20:00、休業期間(夏季、冬季、春季)9:00~17:00
※休館日は土・日曜日、国民の祝日、年末年始、毎月第4金曜日(図書館整理日)
利用できるひと 学生、教職員、一般も一部利用可
蔵書数 約12万冊
閲覧席数 90席
面積 460㎡
開館年月 昭和28年4月


ブックトラックにはマスコットキャラクター「らぶちゃん」が。ライブラリーが名前の由来。


絵本など子ども向けの蔵書も豊富。


重厚な背表紙が並んだ『地名事典』コーナー。


ジャパンナレッジ搭載の『古事類苑』も開架で全冊揃う。


図書館ホームページの「今月の企画展示」。

ジャパンナレッジとは

ジャパンナレッジは約1500冊以上(総額550万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。

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