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今号の気になる図書館員さん

東京文化会館
音楽資料室司書
永井靖子さん

リニューアルオープンの際、独自の図書分類を一から構築されたことは大変話題となりました。当資料室も独自分類なので参考になりました。

また公共図書館と違って貸出を行なわないことで多様な本との出合いが可能となっており、研究目的の資料の充実と合わせて、幅広いニーズに応えている図書館であると感じました。

リニューアルオープンから1年半が経ちますが、これからの展開についてお聞かせいただければ、と思います。

旅の図書館(2)東京都港区

移転時のさまざまな困難を乗り越えて、2016年南青山に場所を移し、リニューアルオープンした「旅の図書館」。そして2018年は開設から40周年にあたるアニバーサリーイヤー。移転後の利用者からの反響は? ミニ研究会「たびとしょCafe」とは? そして図書館の未来像とは? 今回も館長の福永香織さんと副館長の大隅一志さんにお話をうかがいました。


地階のメインライブラリーに続く階段。傍らには大きな書架を設置。ジャパンナレッジのコンテンツでもある『日本歴史地名大系』『東洋文庫』はここに並んでいる。

研究員だからこそ生まれるアイデア

──リニューアルオープンして1年と8か月。利用者からの反響はいかがですか?

福永:おかげさまで、見学の依頼を多くいただいたり、このような取材依頼をたくさん受けたり、大変注目をいただいております。とくに観光の研究者や実務者の方、そして学生さんからは、普通の図書館では見つけづらい観光関連資料がわかりやすく分類されているという点で高く評価していただいています。また研究部門へ来られる研究者やクライアントの方についても、建物が図書館を通ってオフィスに訪ねる構造になっているので、図書館を見学していかれる方も多くなりました。

社内で研究会が開催されたり、機関誌『観光文化』を発行した際には、それに関連する図書を展示するなど、こちらに来ていただければ、なんらかの研究の種や仕事の現場に生かすヒントを見つけてもらえるよう、つねに意識して中身づくりをしています。プラットフォームとしての図書館の役割が少しずつ果たせているかな、と思っています。

──週末は開いていないんですね。

福永:そうなんです。平日は仕事があってなかなか行けないので、土日開けてほしいという要望もたくさんいただいています。お盆の時期は開けているんですが、そのときは普段来られない方がたくさん来てくれますね。

──利用者は季節によって変わるんでしょうか?

福永:そうですね。ゴールデンウィークの前だと、ガイドブックが揃っている1階は利用者が多くなりますし、秋になると卒論、修士論文を書く学生さんなど、連日通われる方が増えたりしますね。

大隅:今回のリニューアルで、旅の下調べのための資料をかなり減らしたこともあり、ガイドブック類が前より少なくなったねとか、必ず受付で利用申請書を書いてもらわないといけないので、少し手間がかかるといったご意見をいただくこともあります。

福永:貴重な資料も多いことと、どういった方が使ってくださっているのかをきちんと把握したいということもあり、利用申請の手続きなどご面倒をおかけしています。何度も使っていただく方には、カードを提示するだけで毎回の利用手続きが簡単になる「たびとしょカード」をつくっていただくよう勧めております。図書館利用2回目から作成可能です。

──図書館の名物となっている研究交流の場、「たびとしょCafe」について教えてください。

大隅:現時点では、まだこの中の一部しか実現してないかもしれないんですが、いまでもこの方向性は間違っていないと思っています。このイメージに図書館をもっと近づけたいという思いはいつも胸にありますね。

──そして移転前に組織変更もあったそうですね。

大隅:図書館移転前の2014年から始めました。ミニ研究会というか交流する場を図書館の中につくれたら、と。定員は20名ですが、いつも30名くらいの方にお申し込みいただきます。

福永:参加者の顔ぶれはテーマによって違います。年齢層も幅広く、20代の学生さんからかつて観光の研究や業務に携わっていた80代の方まで。年に4~5回ペースで開いていて、これまで12回開催しました。

大隅:すべての回に参加されている方もいらっしゃいますね。

──どのようなテーマなんでしょうか?

福永:観光に関するあらゆるもの、という感じで、アート、旅行案内書、ICT(情報通信技術)、寺社旅とか。昨年は移転後1周年の特別企画ということで『つながる図書館』(ちくま新書)の著者、猪谷千香さんに観光と図書館の新たな連携スタイルについてお話しいただきました。


「たびとしょCafe」の様子。地下1階のホワイエで開催されている。

──今後の「たびとしょCafe」の方針についてお聞かせください。

福永:観光経済研究部の研究員がインバウンド関連の書籍を出版するので、コラボ企画を計画しています。研究員に本のことを話してもらって、本に登場する岐阜県の高山市の方に、インバウンドに関する取り組みを紹介してもらおうと思っています。

また、今年は外に出てみたいな、と思っています。いままでは全部建物の中で完結していたんですが、街歩きみたいなものをテーマにして、フィールドワーク+研究会みたいなものを企画したいな、と思っています。

周年事業は他に特別企画展示の開催や古書や社史などの充実化を図ろうと考えています。次世代に確実につなげられるような、次の世代の財産になるようなものをつくっていきたいという思いがベースにあります。

──テーマは誰が決めてらっしゃるんですか?

福永:テーマや内容、ゲストスピーカーなどは相談しながら私が決めています。チラシのデザインや軽食選びも私の担当。毎回、無理やりテーマに合わせたものを買ってきます(笑)。

──アイデアはどこからわいてくるんですか?

福永:時機に合ったテーマだったり、自分が聞きたいテーマだったり。じつは私たち、図書館司書ではなく、異動の一環として図書館を担当しています。以前は研究部で受託調査などを担当していました。

大隅:私は以前、エコツーリズムや農山漁村の観光振興などに関わる仕事をしていて、いろんな地域でオートキャンプ場や交流施設などをつくったりしていました。福永も同じようにまちづくりとかをやっていて……。地域の人とどうやって合意形成をしながら形にしていくかということに取り組んでいました。

図書館のソフトも同じ。来館者や参加者にどうやって興味を持ってもらおうかと、いろいろ発想していくと、こういうことをやったほうが面白いと、パっと思い浮かぶんです。

福永:情報発信や企画展示とかクリエティブなことはこの二人で担当しています。しかし、本の受け入れなど図書館のベースの仕事はスタッフがいてこそ成り立っています。

人と人をつなげたい

──選書は誰が担当しているのですか?

大隅:主に私が担当しています。研究員とかにも協力してもらって、専門性の高いものを選びたいんですが。忙しい研究員にはなかなか無理はお願いできないですね。

福永:今年から研究員にどんな本を買ったほうがいいか、選書リストを回覧して見てもらうことにしました。それぞれの専門分野の目線で確認してもらったほうがいいと思いますし、研究員も新刊リストを見ることができます。図書館で抱え込まずに、みんなで共有しようと。

研究員には図書館をもっと利用してもらいたいんですが、忙しくてなかなかそういう時間がない。階段を降りればこんな情報の山に囲まれていてとても幸せな環境なんです。外の人と同様、中にいる研究員に対してもスキルアップしてもらえるよう、情報を積極的に提供していきたいなと思っています。

──株式会社JTBのパンフレットを保存されているそうですが。

大隅:1990年くらいのものから保管しています。JTBは国内旅行商品はエース、海外商品はルックという名称です。パンフレットなどの小冊子は気を抜くと途中に欠番ができたりするので、きちんと定期的に送られてきているかチェックしたり、一定の期間が来たら必ず合本にしたり、そういうところは気を使ってますね。

また『るるぶ』とか『時刻表』を出している関連企業のJTBパブリッシングの昔のガイドブックも、その年代を代表するようなものはきちんと残しているんですよ。また、トラベルジャーナル社さんやナショナルトラストさんの雑誌も創刊号から保管しているので、先方も有り難がってくれています。

──面白いレファレンスなどはありますか?

大隅:クイックレファレンス以外のレファレンスについては、我々二人で対応しています。たとえばインバウンドの細かなデータをどんなふうに見たらいいのか、など手ごわいものがくるので、研究員にも協力を頼んだりもしています。

福永:ホームページの中に観光研究調査相談窓口というコーナーがあり、そこを経由していろんな質問がやってきます。最近英語版のホームページを公開するとすぐに、アメリカのオハイオ大学でデザインを研究している先生から、ジャパンツーリストビューロー時代の旅行案内書や機関誌の表紙デザインはどういう人に頼んでいるのかと質問が来ました。また自分史を書いている時刻表マニアの方からは、何年何月何日の何とかいう電車の時刻表が知りたいとか。

大隅:マスコミの方からも結構いただいています。あるテレビ局の方から集団就職の列車についての問い合わせがあって、半年後放送された番組に反映されたりしていました。

──最後にお二人が描く図書館の未来像とはいったいどんなものでしょうか?

大隅:いろんな方がここに来られてつながって、どんどん化学反応みたいなものを起こしてもらえたらいいなと思うんです。そこから新しいものが生まれ、それが次の研究のテーマになっていったりとか、まちづくりにつながっていったりとか……。我々がテーマにしている観光って、人が移動することで地域の文化が融合したり、新しいものが文化として生まれていったり、そういうものだと思うんですよね。それがこの場で体現できたら、と思っています。

実際「たびとしょCafe」に集まってくれた人たちがつながって、こんなことをしよう、というお話が出てきたりとかもしています。そういった芽をできるだけ多く育てたいと思っています。

福永:観光研究プラットフォームとしての機能の強化や利便性の向上など、やりたいことがたくさんあります。加えて、最近は全国の公共図書館や私設図書館の動きがすごく面白いことになっています。にもかかわらず、地域の観光計画を立てる際の委員会などに、図書館が入ることはほとんどありませんし、図書館が連携先に考えられたことがあまりない。地域の観光振興を考えていくために、図書館はほんとうにすごい知恵袋なので今後もいろいろな連携ができるのではないかと思っています。そういう地域と、公共図書館とか観光関連の専門図書館をつなげるような取り組みにも寄与できたらと思っています。

そして今回の移転で、「旅の図書館」の終の棲家は南青山になりました。だから地元の観光振興に寄与したいという思いがあります。まず第一歩として、昨年当館が港区のMINATOシティプロモーションクルー認定事業の認定を受けました。専用の観光パンフレットラックを置いて港区の情報を発信していく役目を担っています。区内の観光関連団体とのつながりもできてきましたので、さらにネットワークが拡大していくと新たな展開も生まれるのではないかと思っています。

(おわり)


1階の古書ギャラリー。企画展示のほか、1913~42年発行の雑誌『ツーリスト』、1924年発行の雑誌『旅』が展示されている。

旅の図書館

「テーマのある旅を応援する図書館」として、1978年、八重洲第一鉄鋼ビル1階に、財団法人日本交通公社が開設(当時の名称は「観光文化資料館」。1999年に現在の名称に改称)。日本各地、世界各国の旅行ガイドブック、地図、時刻表、旅行関連雑誌、紀行文など、旅行・観光に役立つ資料を中心に収集。2002年には専門図書館協議会へ加盟。蔵書数は3万5千冊(雑誌を除く)。来館者数は累計約87万人。

2015年9月にいったん閉館し、翌16年には研究部門、総務部とともに南青山に移転・リニューアルオープン。「観光の研究と実務に役立つ図書館」にコンセプトを変更し、観光の研究者、観光を学ぶ学生、旅行・観光産業に関わる実務者を主な利用対象者とした。旅行・観光に関する専門資料を収集。2017年には国連世界観光機関の寄託図書館に認定。

公益財団法人日本交通公社

日本を代表する旅行・観光分野の学術研究機関。英語表記はJapan Travel Bureau Foundation、略称JTBF。訪日外国人の接遇を目的として1912年(明治45)3月に設立されたジャパンツーリストビューローとして誕生。1945年(昭和20)財団法人日本交通公社となる。1963(昭和38)年に営業部門(現・株式会社JTB)を分離し、旅行・観光に関する研究調査に加えて、シンポジウム・セミナーなどの開催、出版物の刊行、旅の図書館の運営など、観光文化振興のための公益面での活動を行なっている。2012年(平成24)4月に公益財団法人に移行。組織は研究部門(観光政策研究部、観光地域研究部、観光経済研究部)、観光文化情報センター(旅の図書館、企画室、編集室)、総務部からなる。

住所 〒107-0062 東京都港区南青山2-7-29日本交通公社ビル
TEL 03-5770-8380
HP https://www.jtb.or.jp/library
E-mail tabitosho_info@jtb.or.jp
開館時間 月曜日~金曜日 10:30~17:00(休館日は土曜日・日曜日・祝日、毎月第4水曜日、年末年始、その他)
利用できるひと 誰でも利用可。利用にあたっては1階の受付カウンターにて利用手続きが必要(地下1階の利用には身分証明書の提示が必要)
蔵書数 約6万冊
閲覧席数 51席
延床面積 550㎡
開館年月 1978年10月


昨秋から刊行された機関誌『ツーリスト』の復刻版(ゆまに書房刊)は1階の古書ギャラリーに並んでいる。広く国内外に配布され、和文欄と英文欄がある。


地下1階にある古書・貴重書の書架には日本国有鉄道の『鉄道辞典』など貴重書がズラリ。


地下1階の書架。観光研究書、統計・白書など、研究者や実務者向けの専門書が並ぶ。側板前にある円形の椅子がおしゃれ。


(株)JTB関連資料。近年に発売された『るるぶ』の棚。


(株)JTB関連資料。『JTBポケットガイド』などのガイドブックをとりそろえる。


(株)JTB関連資料。1980年代の『るるぶ』の合本。


『トラベルジャーナル』の合本。


鉄道好きが喜ぶ、時刻表の棚。


観光関連企業の社史も保管されている。


国や各機関が発表したレポートや報告書類も充実。


国内は都道府県ごとに、海外は国ごとに地域の研究資料も配架。


地下1階の展示ウォール。機関誌『観光文化』の記事、財団専門委員が選ぶ「わたしの一冊」を実物とともに紹介。


地下1階パソコンコーナー。海外の電子ジャーナルなどが検索できる。また『ツーリスト』『旅』は「デジタルコレクション」として閲覧できる。


来館2回目からつくることができる「たびとしょカード」。


1階には観光パンフレットコーナーを設置。手前が港区、真ん中と奥は全国各地の観光パンフレットコーナー。

ジャパンナレッジとは

ジャパンナレッジは約1500冊以上(総額550万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。

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