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今号の気になる図書館員さん

立命館大学
司書
安東正玄さん

私は、公立大学法人島根県立大学松江キャンパス図書館を推薦します。

何がすごいかと言えば、2013年7月6日~7日に実施された研修(「ハードコア・ノンユーザーの心をつかむ図書館ブランディング~潜在ユーザー発掘大作戦」、講師:仁上幸治)でたまたまこちらの図書館の方と一緒のグループでいろいろアイデアを出し、グループ発表しました。しかもそれだけにとどまらず、その内容をすぐに実践し大学における図書館の存在価値を高め、サービスの高度化に成功したすばらしい大学図書館です。

通常、研修を受ける図書館員は多くいますが、図書館長を動かし実践までもっていく事例はそう多くありません。

いろんな障壁もあったかと思います。改めて苦労話を含めて、何が成功の鍵なのかを共有できればと思っています。

島根県立大学短期大学部図書館(1)島根県松江市

島根県松江市に位置する島根県立短期大学部は、県内で唯一司書課程のある大学です。蔵書12万冊、延床面積460㎡という小さな規模ですが、その活動は大学図書館関係者に注目されています。学生図書委員会の活動はどういうものか、ラーニングコモンズ室などの整備はどうやってされたのか、研修で得たものをすぐに実践できたのはなぜか、図書館職員の北井由香さんにお話をうかがいました。

研修で得たものをすぐに実践できた理由

──図書館の特長を教えてください。

島根県立大学短期大学部はもともと、1946(昭和21)年に島根県立松江女子専門学校として開学しました。61年に島根女子短期大学となり、88年にはいまの総合文化学科につながる文学部ができました。そして2007年、島根県立大学の短期大学部として改組され、現在に至ります。

島根には私立大学がありません。それで、広島や岡山などほかのエリアに行かず、県内で文学や歴史に関して学修できる環境は、国立の島根大学か総合文化学科があるこの松江キャンパスしかありません。また松江キャンパスには司書の資格が取れる総合文化学科があるため、島根県内で唯一、司書課程のある大学図書館となっています。

そして、図書館では、学生が学生図書委員として活発に活動してくれています。おかげで図書館ではさまざまな企画をすることができ、結果的に学生と図書館スタッフとの距離が近い図書館になっているのではないかと感じます。ちなみに図書館には司書3名、職員1名、アルバイト5名がいます。

──学生図書委員会にはどうすれば入れるんですか?

申込用紙を提出してもらえれば、誰でも参加できます。学生図書委員会には現在、2年生が10名、1年生が9名います。

委員会は2011年5月に発足しました。図書館で行なう企画を運営してもらったり、図書館に置く本の選書作業も経験してもらったりしています。そして、その活動を学生協働交流シンポジウムや図書館総合展で発表し、報告しています。


学生図書委員会による推薦図書。小説、社会問題から絵本、マンガ、写真集、料理本など幅広いジャンルから選ばれている。

──貸出パソコンも充実していますね。独自でラーニングコモンズをつくられたともうかがいました。

貸出パソコンは2011年に整備しました。現在、21台のパソコンがあります。また、ラーニングコモンズは2013年の後期につくりました。どちらも図書館の利用者数を増やすため、まずは環境を整えることが大切だとの思いから、整備しました。

──ちょうどそのころ、2013年7月の大学図書館問題研究会の研修が開催されていますね。福岡までわざわざ足を運ばれたんですね。

学生たちにどうすれば図書館を利用してもらえるのかと悩んでいる最中でしたので、すぐに参加しようと決めました。図書館に興味がないとか、図書館に来たことのない学生をどうすれば“利用者”に変えることができるのか、というテーマにひかれました。

研修は、仁上幸治先生(当時、帝京大学准教授)をお招きし、図書館側の工夫努力にもかかわらず、どうしても来館や利用に結びつかない利用者層、つまり“ハードコア・ノンユーザー”をどうすればいいのか、という問題を真正面から取り上げるものでした。サブタイトルを「潜在ユーザー発掘大作戦!」とし、図書館のブランディングについて、座学(講義)とグループワークを持ち、考えました。グループワークは実践できそうな企画をグループで考え、最後に発表するといった内容でした。

私たちのグループでは「あなただけ特別」という作戦を考えました。下記のように考えていったと思います。

利用者を増やすには?

先生? 職員? でも、数が多いのは学生。

では学生を取り込むには?

学生は先生の言うことは聞くだろう。

では先生を取り込むにはどうすればいいか。

既存の先生にアピールするよりも、新しく入ってきた先生は孤立しているかもしれない!

それなら新任の先生を取り込まないと、もったいない!

図書館長に「図書館をよろしくお願いします」と手紙を書いてもらい、図書館員はその教員の研究分野を事前に調査し、図書館から何を得たいかニーズを知る──具体的に「あなただけ特別」と図書館側からコミュニケーションのきっかけをつくることによって、新任の先生は振り向いてくれるのでは、と。そこから教員全体にアピールするのではなく、図書館員が教員それぞれに働きかけるのがよいのではないかという発想が生まれたんですね。

──教務サイドとの連携や、教員とのコラボレーションというのは、今でこそ当たり前になってきていますが、そういったものの先駆け的な発想、といった感じがしますね。さて、その研修での成果を、持ち帰ってすぐに実践されたそうですが、何か障壁はなかったのですか?

あまりありませんでした。研修で考えた作戦をそのまま実践したわけではないのですが、まず、うちの図書館は規模が小さく、職員が少ないため、それぞれが考えたことや提案したことが形になりやすい、ということが大きいのではないかと思います。

──ラーニングコモンズの設置など、予算獲得に関して「そこには苦労があったのでは」とどうしても思ってしまいますが。

まず、大きな組織とは違い、広いスペースでなくても十分だと考えたため、倉庫を片付けたり、以前使っていた部屋をラーニングコモンズとして、少し整えただけです。いまは、多くの学生や先生方に利用してもらっています。

(つづく)


左からインタビュ―に答えていただいた北井由香さん、馬庭佳緒里さん、古德ひとみさん。

島根県立大学短期大学部

島根県立大学は平成12(2000)年に開学(前身は平成5年に開学した島根県立国際短期大学)。19年、島根県立島根女子短期大学、島根県立看護短期大学と統合し、島根県立大学短期大学部を設置、「公立大学法人島根県立大学」として法人化された。教育理念に島根出身の幕末から明治にかけての思想家、「西周(にし・あまね)が標榜した“『純理の学』から『実践の学』にわたる諸科学の統合”をめざし、各専門領域における研究活動を深め、それにもとづく創造的な教育活動によって、現代社会の諸課題に国際的な視野からアプローチし、また、地域社会の活性化と発展に寄与する人材を養成することを使命とすること」(大学ホームページより)と掲げている。

松江キャンパスにある短期大学部は、保育学科、総合文化学科、健康栄養学科の3学科体制だったが、平成30年度より、4年制の人間文化部(保育教育学科、地域文化学科)と保育学科、総合文化学科からなる短期大学部に改組される。

住所 〒690-0044 島根県松江市浜乃木7-24-2
TEL 0852-20-0203
URL http://matsuec.u-shimane.ac.jp/campus/library/
E-mail m-library@u-shimane.ac.jp
開館時間 授業期間(試験期間を含む)8:45~20:00、休業期間(夏季、冬季、春季)9:00~17:00
※休館日は土・日曜日、国民の祝日、年末年始、毎月第4金曜日(図書館整理日)
利用できるひと 学生、教職員、一般も一部利用可
蔵書数 約12万冊
閲覧席数 90席
面積 460㎡
開館年月 昭和28年4月


学生図書委員会昨年11月の展示。読書の秋にちなみ、旅、SFなどジャンルで選ぶ本の福袋を用意。


ラーニングコモンズ室。以前は倉庫だったそう。


ソファにゆったり座りながら見られる、DVD鑑賞室。


下3段の棚に貸出用のパソコンがズラリ。ほかにタブレット、ヘッドフォンもある。

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