日本語、どうでしょう?~知れば楽しくなることばのお話~

辞書編集者を悩ます日本語とはなにか?──『日本国語大辞典』など37年国語辞典ひとすじの辞書編集者がおくる、とっておきのことばのお話。


 まずは以下の例文を読んでいただきたい。
 「浪々の身となり、かかるすばらしき店に面をさらすは」
 江戸時代の、宝暦(1751〜64)から安永・天明(1772〜89)頃にかけて江戸を中心に流行した「談義本(だんぎぼん)」と呼ばれる通俗小説の『当世穴噺(とうせいあなばなし)』(1771年刊)に出てくる文章である。
 文中の「すばらしき(すばらしい)」だが、

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 「思い立ったが吉日」の「吉日」だが、めでたい日、縁起のよい日を意味するこの語も声に出して読もうとすると、何と読むか悩む語ではないだろうか。
 「キチニチ」「キツジツ」「キチジツ」「キツニチ」
単に組み合わせを示したわけではなく、読み方の可能性はこの4種であろう。
 字音は、「吉」の呉音はキチ、漢音はキツ、「日」の呉音はニチ、漢音はジツである。つまりキチ

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 「地元の食材にこだわった料理」
 このような文章を目にしたことはないだろうか。
 この「こだわる」は、物事に妥協せずそのことだけは譲れないという意味であるが、これは従来なかった新しい使い方である。
 「こだわる」は、本来「気にしなくてもいいようなことが心にかかる。気持ちがとらわれる。」という意味で、どちらかと言えば否定的な意味合いで使われることが多かった。たとえば「

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 みなさんは以下の文章を読んでどのように感じるだろうか。

 「思いっきり陽気で派手で華やか好みの女の子が、猛勉強のあげくハーバード・ロウ・スクールに入学、弁護士をめざす。」(中野翠『クロワッサン』2002年)

 いかがであろうか。「あげく」という語の使い方に違和感を覚えた方が大勢いらっしゃるのではないかと思う。
 「あげく」は「……したあげく(

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 「腑に落ちる」という言い方を聞いたとき、みなさんはどのように感じるだろうか。筆者はというと、少し違和感がある。「腑に落ちない」と下に否定の語を伴って使うのがふつうなのではないかと思ってしまうからである。
 だが、この語もまた辞典での扱いが揺れている語なのである。単独で「腑に落ちない」、または「腑に落ちる」を見出し語に立てている辞書は、ほとんどが大型の国語辞典なのだが、

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