~ 『数え方の辞典』収録のコラムより ~
しばしばクイズなどで、「ウサギの数え方は?」という問題が出され、「1羽」が正解とされます。鳥でもないのに、なぜウサギは「羽」で数えるのでしょうか?
ウサギを「1羽」「2羽」と数える由来には諸説あります。獣(けもの)を口にすることができない僧侶(そうりょ)が二本足で立つウサギを鳥類だとこじつけて食べたためだという説や、ウサギの大きく長い耳が鳥の羽に見えるためだとする説などが有力です。
それだけでなく、ウサギの数え方の謎は、ウサギの名前の由来とも少なからず関係があるようです。ウサギの「う」は漢字の「兎」に当たるものですが、残りの「さぎ」はどこから来ているのかはっきりしたことが分かりません。一説では、「さぎ」は兎の意味を持つ梵語(ぼんご)「舎舎迦(ささか)」から転じたものだとか、朝鮮語から来ているとされています。さらに、「さぎ」に鳥のサギ(鷺)を当てたとする俗説まであります。仮に、ウサギが「兎鷺」と解釈され、言葉の上では鳥の仲間と捉(とら)えられていたとしたら、「羽」で数える習慣が生まれても不思議ではありません。
現代では、ウサギを「羽」で数えることは少なくなり、鳥類とウサギを「羽」でまとめて数える場合以外は、「匹」で数えます。
著者:飯田朝子(いいだあさこ)
東京都生まれ。東京女子大学、慶應義塾大学大学院を経て、1999年、東京大学人文社会系研究科言語学専門分野博士課程修了。博士(文学)取得。博士論文は『日本語主要助数詞の意味と用法』。現在は中央大学商学部教授。2004年に『数え方の辞典』(小学館)を上梓。主な著書に、『数え方もひとしお』(小学館)、『数え方でみがく日本語』(筑摩書房)など。
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