~ 『数え方の辞典』収録のコラムより ~
ふと空を見上げると、そこにも多くの数えられるものがあります。ちょっと首を上に向けてどんな数え方に出合えるか見てみましょう。
例えば、空に浮かぶ雲。その形によっていろいろな数え方があります。青い空にぽっかりと浮かぶ雲は「1つ、2つ」、ちぎれ雲などは「1片(いっぺん)、2片(にへん)」、雲のまとまりは「1塊(ひとかたまり)、2塊(ふたかたまり)」と数えます。飛行機雲や筋雲のように細長い形をしていれば「1本」「1筋」「1条」などと数えます。「条」は、中国語から入ってきた、細長いものを数える数え方です。また、空一面に広がるウロコ雲は「一面」、快晴の空にわずかに浮かぶ雲を詩的に「一抹」「一点」と表現することもあります。入道雲は山のように盛り上がった形をしているので、高い山を数える「1座」で数えます。また、花の重みなどで木の枝が垂れ下がる様子を表す「朶(だ)」を用いて雲のまとまりを「1朶(いちだ)、2朶(にだ)」と言うこともできます。そして、虹ですが、「本」や「筋」と数えるだけでなく、空に架かる橋にたとえられ、雅語的に「1橋(いっきょう)」とも数えます。
夜になると空には星が輝きます。天体としての星の数は「個」と数えますが、夜空にまとまって見える星を指して数える場合は「つ」を用います。例えば、北斗七星を「七つ星」と言ったりしますが、これを「七個星」と言うことはできません。星座は「12星座」のように「星座」で数えたり、「座」で数えたりします。多数の星が集まっている星団には「団」という数え方があります。夜空に浮かぶ月は、複数存在しないので数える機会はありませんが、水面に映った月を数える場合は「つ」を用いて「湖面に月が2つ映っている」と表現することもできます。
著者:飯田朝子(いいだあさこ)
東京都生まれ。東京女子大学、慶應義塾大学大学院を経て、1999年、東京大学人文社会系研究科言語学専門分野博士課程修了。博士(文学)取得。博士論文は『日本語主要助数詞の意味と用法』。現在は中央大学商学部教授。2004年に『数え方の辞典』(小学館)を上梓。主な著書に、『数え方もひとしお』(小学館)、『数え方でみがく日本語』(筑摩書房)など。
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