目からウロコ!数え方のナゾ

~ 『数え方の辞典』収録のコラムより ~

特別編14 携帯の普及で分化、メールの数え方

電子メールは「1通、2通」と数えます。元来「通」は、手形や目録などの記録・通達する書状を数えました。そこから郵便物を数えるようになり、転じて“電子的にやりとりされる郵便物”である電子メールも数えるようになりました。ところが、近年、電子メールは「通」よりも「件」で数えるのが主流となりつつあります。特に携帯では「新着メール○件」と、もっぱら「件」で表示されています。

電子メールが、より手軽で迅速な通信手段として普及するにつれ、私達はこれを郵便物の仲間として数えることに抵抗を覚えるようになってきました。総務省の調査によると(※1)、04年末現在60歳以下の人の約9割(※2)もがインターネットと電子メールを利用しているということです。加えて、1998年に登場した携帯メールの対人口普及率は、04年で76.2%に達していて、もはや郵便物とは一線を画す通信手段へと発展を遂げています。「件」は、相手からの働きかけの数や、送りつけられた用件の数を数える数え方です。留守電やポケベルのメッセージも「件」で数える理由はそこにあります。

とはいえ、メールの数え方「通」が消えてしまうというわけではありません。最近はメールの種類や手段に応じて「件」と使い分けられるようになっています。携帯で、ポケベル同様の短いメッセージをやりとりする場合は「件」を用いますが、例えばパソコンで「長いメールを1通送信した」という表現を「1件送信した」に置き換えるのにはやや抵抗感が残ります。ましてや「大切な人からのメールを2件受信した」とすると、寂しささえ感じますよね。「通」は、その字が示す通り、相手へメッセージを“通じさせる”という意味も含むからです。これからも「通」と「件」はメールの数え方として共存し、使い方の分化が進むと考えられます。

※1 総務省 (2005)「通信利用動向調査」
※2 ※1の調査では、家庭と職場での普及率の割合は、300人以上の企業で98.3%、5人以上の事業所で81.8%、世帯で86.8%である。

著者:飯田朝子(いいだあさこ)

東京都生まれ。東京女子大学、慶應義塾大学大学院を経て、1999年、東京大学人文社会系研究科言語学専門分野博士課程修了。博士(文学)取得。博士論文は『日本語主要助数詞の意味と用法』。現在は中央大学商学部教授。2004年に『数え方の辞典』(小学館)を上梓。主な著書に、『数え方もひとしお』(小学館)、『数え方でみがく日本語』(筑摩書房)など。

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