~ 『数え方の辞典』収録のコラムより ~
「箸(はし)2本で1膳(ぜん)」の「膳」や、「靴下2枚で1足」の「足」のように、2つのものがペアになって初めて使うことができる助数詞が多数あります。左右そろって使うものでは、手袋は「1双」、イヤリングは「1組(ひとくみ)」、竹馬は「1対(いっつい)」で数えます。古くからある数え方では、「屏風(びょうぶ)2枚で1双」、「掛け軸2幅(ふく)で1対」、「鐙(あぶみ)2本で1掛け」、「籠手(こて)2枚で1双」、「道祖神2体で1対」などがあります。正月の松飾りは左右2本で「1門(ひとかど)」または「1揃(ひとそろ)い」、2枚の扉で開閉する門は「1対」と数えます。上下2つ以上のものがそろって完備するものは「具」で数え、例えば「裃(かみしも)1具」、「御衣(おんぞ)1具」などと言います。
一方、2つがペアであるもの(男女・雌雄・左右など)の、片方だけを数える数え方に助数詞「隻(せき)」があります。もともと漢字「隻」は「鳥1羽を片手で持つこと」を表し、鳥1羽を意味しました。鳥はいつも2羽(=1雙(そう):雙は双の旧字体)が“つがい”で見かけられるからです。そこから、片方の翼や、2枚で1組となる片方の屏風、また甲矢(はや)乙矢(おとや)で1組となる片方の矢を「一隻」というようになりました。
著者:飯田朝子(いいだあさこ)
東京都生まれ。東京女子大学、慶應義塾大学大学院を経て、1999年、東京大学人文社会系研究科言語学専門分野博士課程修了。博士(文学)取得。博士論文は『日本語主要助数詞の意味と用法』。現在は中央大学商学部教授。2004年に『数え方の辞典』(小学館)を上梓。主な著書に、『数え方もひとしお』(小学館)、『数え方でみがく日本語』(筑摩書房)など。
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