~ 『数え方の辞典』収録のコラムより ~
ラーメン屋に入って「ラーメン1つ」と注文すると、厨房(ちゅうぼう)から威勢良く「へい、ラーメン1丁!」という声が聞こえます。注文したのはラーメン1杯。なぜ「1丁」という数え方をするのでしょうか。
助数詞「丁」は、豆腐や拳銃を数えるのとは別に、景気付けのために数詞に添えられることがあります。ですから、これは客よりも店を盛り立てようとする店員の側が使います。
漢字の「丁」には、最も良い時期の盛んな様子を表す意味もあり、大衆的な飲食店で店の雰囲気を活気付けるために、注文を数える際に用いられるようになったようです。
「丁」の景気付けの意味は、「一丁、挑戦してみるか」といったような、話し手の意志に基づいて思い切って起こす行動を景気付けて言ったり、「ふんどし一丁」のように唯一(ゆいいつ)身に付けているものを強調して威勢の良さを表現したりするのにも使われます。
著者:飯田朝子(いいだあさこ)
東京都生まれ。東京女子大学、慶應義塾大学大学院を経て、1999年、東京大学人文社会系研究科言語学専門分野博士課程修了。博士(文学)取得。博士論文は『日本語主要助数詞の意味と用法』。現在は中央大学商学部教授。2004年に『数え方の辞典』(小学館)を上梓。主な著書に、『数え方もひとしお』(小学館)、『数え方でみがく日本語』(筑摩書房)など。
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