目からウロコ!数え方のナゾ

~ 『数え方の辞典』収録のコラムより ~

第15回 「仏の顔も三回」と言える?

ことわざに「仏の顔も三度」というものがありますが、この「三度」を「三回」に言い換えて、「仏の顔も三回」と言うことはできるでしょうか?

答えはNOです。なぜなら、「度」と「回」の間には意味の違いがあり、単純に入れ替えることができないからです。「度」は、「回」に比べると度重なる経験や繰り返されることが予測しにくい行為を数える傾向があります。例えば、「太郎には一度会ったことがある」「二度目の優勝」のように、再び太郎に会う保証がない場合、次に優勝することを予測することができない場合には「度」で数えます。一方、「回」は、「三回忌」や「第三回大会」のように、繰り返されることが予測・期待される行為や催しを数えます。

もし、「仏の顔も三回」と言ってしまうと、同じこと(仏の顔をなでる行為)を意図的に繰り返して行うことになり、ことわざとして説得力が無くなってしまいます。わざと計画的に仏を怒らせるわけではありませんので、「三度」を「三回」に置き換えることはできません。

著者:飯田朝子(いいだあさこ)

東京都生まれ。東京女子大学、慶應義塾大学大学院を経て、1999年、東京大学人文社会系研究科言語学専門分野博士課程修了。博士(文学)取得。博士論文は『日本語主要助数詞の意味と用法』。現在は中央大学商学部教授。2004年に『数え方の辞典』(小学館)を上梓。主な著書に、『数え方もひとしお』(小学館)、『数え方でみがく日本語』(筑摩書房)など。

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